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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 38

桃伽奈



類side

『花沢物産社長夫人。不倫相手と無理心中』

 俺は読んでいいよって感じに、GPDを牧野に手渡す。
 受け取った牧野は、スクロールしながら記事を読んでいった。


 内容は母さんが不倫をしていたというゴシップ記事。
 相手は年上の一般男性としてしか紹介されていないが、この記事で母さんの名は実名入りだ。
 当時、花沢物産を継いだばかりの父さん。母さんは会社を社長夫人として夫を支える傍ら、ボランティア活動などを精力的に行っていた。
 メディアに出ていたわけではないが、英徳学園理事長の娘として教育関係で講演会などを何度も開き、その世界では結構な有名人であった。
 清く正しい、見本になるような人柄だと噂されていた母さんの不倫発覚と、車中での相手と一緒の練炭自殺。
 母さんは男性の肩にもたれた状態で発見されたと記事には書かれている。
 結ばれぬ恋ゆえの心中だったのか……。
 しかし道徳から外れた行為だと、亡くなった直後はワイドショーで騒がれ、叩かれたりもしていた。



 読み終えた牧野は、泣きそうに顔を歪め俺を見た。
 俺はそんな牧野を真っすぐに見て、思っていた事を口にする。

「信じられないって思ったんだよ。父さんと母さんは恋愛結婚して……子供まで作ったのにさ。他の男となんて……。」

 こんな気持ち誰にも話した事がない……。
 椿姉ちゃんも、司や総二郎。それにいつも何か言いたそうにするあきら。
 あいつらにも話した事はなかった。
 ただ母さんが死んだ時、6歳だった俺はすでにみんなと友達になっていた事もあり、何も言わなくても気づいていたと思う。
 俺より5つ年上の姉ちゃんなんかは特に気遣ってくれたし、今回の牧野の件では勘違いだとはいっても、わざわざロスから飛行機に乗って飛んできた……。
 恋や愛といったものに目を向けたように見えた俺の姿は、姉ちゃんには本当に嬉しかったんだろうって感じる。


 牧野は揺れる瞳を俺に向け、暫く逡巡していたが小さく震えた声で話し出した。
「でも……お母さんはお母さんで、花沢類は花沢類でしょ?」
 お母さんがどういう人であっても、花沢類は自分を信じればいいだけじゃないの? っと、牧野は口にする。
「ん、分かってるけど……。でもダメなんだ……。そういう意味で人を信じることが出来ない」

 司は案外、そういう相手が現れるのを待っているような気がする。
 見合いだろうがなんだろうが、キチンとお互いを信じられる相手を選び出す。
 それとは逆にどんなに沢山の女性が周りにいても、誰にも心を許さない……ただ1人の相手に特別な感情をワザと持とうとしないのが総二郎。
 俺はそっちに近いタイプなんだと思っている。

 ……でも正直に言うと、どこか戸惑った気持ちもある。
 牧野の事は知りたいって思ってしまった。
 こんな一人の人を特別に思うのは本当に初めてだ。
 誰にも話す気がなかったことまで、聞かれればこうして話してしまっている。
 

「今、こうして牧野と話しているのは……結構楽しい」 
「……花沢類」
「でも俺は、恋だ愛だって感情は信じない」
 そうだ……。
 牧野がどんな人物であっても……。そういった感情は持っていない。

 俺の話を聞いた牧野は、彼から顔を隠すように下に向けた。
 さっきの目に溜まった涙と、歪みそうになる顔を思い出すと胸がチクりと痛んだ。
「……」
「……」
「あたしも楽しいよ。……こんな気持ち初めて」
 暫く俯いていた牧野は顔を上げ、あきらの様に何か言いたそうにしていたが別の事を口にした。
 その顔は泣いてはおらず、少し照れているような笑顔が可愛く思う。


 そう思ったら自然と口が近づき、気が付いたら口づけをしていた。

「……っ!」
 牧野は慌てて口を手で押さえ、俺から離れた。
 ……もしかしてダメだった?
 もっと近づきたいって気持ちが沸き起こり、思ったまま行動してみたのだが……。
「牧野?」
「……い、今っ……」
「ん、したいって思ったからしたんだけど」
 真っ赤になった牧野が焦った様子で俺を見る。
「……あ、あたし……」
「……?」
 その後は中々言葉が出ないようで、口をパクパクさせながら頭の中で色々考えているように見える。
 その動きはまるで餌を貰う時の鯉みたいだ……。
「……あたし、その……」
「……? もしかして初めて?」
 俺が聞くと首を縦に振り肯定した。
 可愛い……。
 なんか牧野が何やっても可愛いって思えてしまう……。
 それに初めてって言葉が嬉しい。
 なんかヤバいな……。

「もっとしたい。……やっていい?」
「……へ?」
「キス」
「……え、だって……」
 すんなり「うん」と言ってくれない事に、ムカっとする感情が芽生えた。
「なんで? 俺の事嫌い?」
 嫌いな相手とだったら触れたりするのは嫌なんだろうけど、牧野からはそんな態度は感じられない。
「き、嫌いじゃないよっ。そうじゃなくて……むしろ……」
「むしろ?」
「ち、違うっ」

 ……?
 何が言いたいんだろう……。
「支離滅裂になってない?」
「誰のせいだと思ってるのよっ」
 真っ赤な顔をして動揺していたのに、今度は少し怒ったみたいだ。
 誰のせい……って……。
 ここには俺と牧野しかいないんだし……。
「……俺?」
「そう」
「何かした?」
「何か……って……。キ、キスしたでしょっ!」
「うん」
「キスは好きな人とするものなのっ」
 牧野は「何でこんな小学生に言うような事をあたしが言わなきゃいけないんだ」って言いながら叫んだ。

 ……そっか……。
 好きな人とか……。
 さっき誰も好きにならない理由を言ったばかりなのに、それでキスしたから怒ってるのか……。
「けど外国じゃ挨拶だよ」
「ここは日本っ」
「……俺、牧野としたいって思った」
「……!?」
「牧野は? もう俺とキスしたくない?」
「……うっ。……その聞き方ズルい……」


 俺が顔を傾けて近づけると、牧野がギュっと目を瞑って少し顔を上に上げた。

 そんな力まなくても……。
 微笑んで口角が上がった唇をもう一度牧野の唇に合わせた。


 触れるだけのキスを何度か繰り返すと体温が上がったのを感じたが、アルコールの残った頭は眠気を誘い、気が付いたらお互いそのまま眠っていた。


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Comments - 2

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2018/01/26 (Fri) 20:22 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  

な様
 訪問&コメントありがとうございます。

 いつもありがとうございます♪
 ですよね……。私もそれはちょっとどうなん? なんて思いながら……;;
 普段は鋭い方だと思うのですが、恋愛方面では自分から蓋をしているせいか鈍いですw
 類が気づくのは、もう少し先になりそうです^^;

 いつものお話と違い、ちょっとややこしい感じの「種と蕾~」なのですが、来週もバラまいた伏線回収をゆっくりしていきたいと思います。皆様、ついて来れているかな……と不安なのですが、な様からコメントを頂き安心しました^^;
 お話を読んで下さりありがとうございました。
 桃伽奈

2018/01/27 (Sat) 07:07 | EDIT | REPLY |   

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