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種と蕾の先へ 40

桃伽奈



類side

=花沢邸=

 杏子さんから進学祝いに貰った時計塔の『秘密基地』

 最初は授業が終わったら時計塔で時間を潰して、夜になると帰りたくない家へ渋々帰って行った。
 それがいつの間にかベッドや冷蔵庫も入れ、花沢邸の自分の部屋の様に仕上げていった。
 自作パソコンも数台用意して、今では俺にとって家とは時計塔の事だというように入り浸るようになった。



「まぁいい……」
 俺が杏子さんに貰った時計塔の事を思い出していたら、父さんからため息と共に声が聞こえ現実に戻された。
「……」
「来週は里佳子の命日だろう。ちゃんと予定を開けておけ」
「……」
 ……母さんの命日。
「お前の事だ。忘れている可能性もあるからな。前日はこの家に帰ってきて過ごしなさい。日曜だから学園は休みだろ。午前中に出かけるぞ」
 仕事から帰ってきたばっかりの父さんはネクタイを緩めながら、予定を告げていく。
 俺はその言葉を聞いて沸々と怒りのようなものが、腹の中に沸いてきた。

 これまで何度も思い……疑問に感じたが、決して口には出さなかった。
 けど今回は何故か耐えられそうにない。

 俺の何かが変わった……?

 心境の変化?

 理由は分からないが、ストップをかけられず気が付いたら俺は意見していた。


「父さんはどんなに忙しくても、毎年必ず命日は墓参りするよね」
「……あたり前だ。何が言いたい?」
「いつも何を母さんに報告してるの?」
「……っ!」
 俺の言葉を聞いた父さんは驚いた顔を一瞬した後、睨みつけてきた。
 その顔を見てこれ以上は言っちゃダメだって警告が鳴るのに俺は止められなかった。

「あの不倫記事……何で止めなかったの? 父さんなら出来たよね? ……けどしなかった。母さんを世間のさらし者にして……それでよく命日がどうとか……偽善者ぶるのもやめろよな」
 声を荒げた俺に、父さんは被さる勢いの声を上げ叫んだ。
「お前は何もわかっていないっ」

「……!?」
 何をわかってないって言うんだ……。
 話の続きを待っていると、父さんは気まずそうな顔になり目を反らした。
「……」
「……?」
 暫くの沈黙の後、視線を外したまま静かな声で話し出した。
「……生前、里佳子と話した。……大切なのはお互いの気持ちだと。……俺が再婚もせず毎年里佳子の墓参りをするのはそういう事だ」
「それは母さんに裏切られても、母さんが好きって事?」
「……っ!」
「……」
 俺の言葉に父さんは目に力を入れ、睨みつけてくる。
「お前は……そういう風にしか考えられないのか……」
「……?」
 どういう意味?

「もういい……。そんな気持ちでいるなら、お前は来るな。1人で行く」
「……っ!」

 父さんは投げ捨てるように言い放った後、俺に背を向け本格的に着替え始めた。
 俺も黙って書斎から出て行き、玄関に向かって歩く。


「類様、もう少しでお食事ができますが、どちらへ行かれるんですか?」
 俺が外へ出て行こうとしたのに気づいた使用人が話しかけてきた。
「……」
 けれど声を出せば何故か泣きそうで、黙ったまま家を出て英徳学園へ向かった。



 この時間はもう門に鍵がかかっているが、ポケットに入れていたGPDを使い門の電子ロックを外す。
 敷地内に入ると解除させたセキュリティーロックを復活させ、通いなれた時計塔への道を最短で歩いて行った。
 時計塔にはセキュリティは通ってないので、そのまま自分の瞳をカメラに向け虹彩認証で鍵を開けると塔の中に入った。
 階段を登りパソコンを置いている部屋を過ぎて、さらに上まで登って行く。
 展望台まで上がると、夜景が目に入ってきた。


 ……あの光の数だけ家族があるんだ……。

 壁を背にして地べたに座り風を感じると、無性に牧野に会いたくなった。
 あのクルクル変わる表情。
 耳に心地よい声音。

 『でも……お母さんはお母さんで、花沢類は花沢類でしょ?』


 分かってるよ。
 牧野の言いたい事は……。
 でもダメなんだ。分からないんだよ……。
 裏切った母さんの気持ちも。
 母さんを守らなかったくせに、毎年義務の様に墓参りをする父さんの気持ちも。

 知りたいと思ったけど失敗した。
 上手く話せず、父さんを怒らせただけだ。


 牧野……。今、あんたは何してる?

 1人暮らしだったよな……。
 時間的にはご飯とかお風呂かな……。

 母さんも俺にご飯を作ってくれた。
 いつも優しく笑ってくれていた。
 記憶にある母さんは温かかった。


 牧野の作るご飯も母さんのように、何故か温かいような感じがする。
 ……食べてみたいな。

 誰も見ていないからと、目に溜まった涙をそのまま零した。


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Posted by桃伽奈

Comments 2

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2018/01/30 (Tue) 20:13 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  

ノ様
 訪問&コメントありがとうございます。

 「dear]ありがとうございます♪
 褒められると調子に乗る、単純ちゃんな私です^^;

 そうですよね。言葉足らずのパパには、実は言えない理由が……(って、蓋を開けてみれば大した理由ではないかもしれませんが^^;)
 私のパパはいつもこんな感じになっちゃいます……。違うタイプも書いてみたいなぁと思っているのですが、なぜか初期設定のように、こうなっちゃいます><
 いつかチャレンジしてみたいですw

 そして類君……。そこでつくしちゃんを思い出すってことは、もうあんた絶対好きだよね? そうだよね? いつ気づく? いつなわけ? なんて語りかけながらお話を書いておりましたw
 ラブラブになるのはもう少し先になりますので、もう暫くお待ちください<(_ _)>
 お話を読んで下さりありがとうございました。
 桃伽奈

2018/01/31 (Wed) 09:16 | EDIT | REPLY |   

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