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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 41

桃伽奈



つくしside

 住んでいるワンルームマンションの屋上で、いつもの日課の筋トレを開始する。
 だけど先日の出来事を思い出してしまい、なかなか集中出来ない。

 ……あたしのファーストキス。

 優しく触れるだけのキスを何回もやってしまった。


 思い出すだけで恥ずかしくて、暴れ出しそうになる。
 あたしは筋トレを止めて熱を持った頬っぺたを両手で触った。
 夜風に当たり、コンクリートを触っていた手はひんやりして気持ちイイ。

 花沢類が何で誰も好きにならないかの理由も聞けた。
 まさかお母さんが不倫していたからだなんてビックリしたけど、それがトラウマになってしまった気持ちも何となく分かる……。
 身近な人がそうだと、自分も同じ事を繰り返してしまうんじゃないか……って不安が生まれてしまうんだろう。
 よく虐待をされて育った人が、同じような悩みを抱えているとテレビで見た事があった。
 自分も子供を虐待しまうんじゃないか……って。
 ……。
 ……そうじゃない。
 同じにならなければいいんだ……って、きっと花沢類も分かってる。
 自分はお母さんと一緒にはならない……。
 ……。
 そう分かっていても、囚われた心は簡単にはそこから抜け出せないのかも知れない。
 人を……自分を信じられない。



 あたしは英徳学園がある方を眺めた。
 大きな敷地の学園は、そこだけぽっかり暗かった。
 こんな時間にいるわけないけど、花沢類の家を知らないから学園に向かって願いを込めた。

 どうか……花沢類がお母さんからの呪縛から解けますように。

 胸の前で組んだ手は、寒さとは違う意味で震えた。

 花沢類が好き……。

 道明寺さんの家で、改めて恋愛対象として見れないと言われた時、あたしの気持ちがバレない様に必死に隠して平気な顔を見せようと努めた。
 もしバレたら……絶対嫌な顔されるだろうなって不安になった。
 辛く苦しんでいる花沢類を見て、もうお母さんの事に触れるのは正直怖かった。


 あたしに何かしてあげる事があるのかな……。
 お母さんの話をしてくれた花沢類は、あたしよりもずっと大きい身体をしているのに、あの時だけは小さい子供みたいで思わず抱きしめそうになった。

 ……あんなに優しい人なのに……。まぁ、ちょっと意地悪な所もあるけど……。

 でも笑っていて欲しい。




 あたしは全然集中できなかった筋トレを止めて屋上を後にした。
 自分の部屋へは戻らず、上下黒のトレーニング衣装のまま駅へ行き電車に乗った。



 目的の駅へ着くと通いなれた道を歩き、中学校まで一緒に住んでいた『杉浦』の表札を掲げたヤスとヒロがいる一軒家へたどり着く。
 玄関前にある防犯カメラに手を振ってから、スマホのアプリを起動して鍵を開け家の中に入った。
 築30年は経っている家だが、玄関はリホームされて電子ロックのドアに変わっている。
 これはいつも家の中にいるヒロが自由に鍵の開閉をパソコンから出来るようにするためだ。
 鍵を忘れた家族の為にわざわざ玄関まで足を運ぶのが億劫らしい。

 あたしは真っすぐヒロのパソコンルームへ向かうと、ドアを開ける前に中から開いた。
「……っ!」
「よっ」
 ヤスが中へ促してくれるのであたしは部屋の中に入り、ソファーに座った。
 パソコンに向かっていたヒロがこっちを見ずに、
「何か飲む?」
 と聞いてくるので「いらない」とだけ答えると、ヤスもあたしの横に腰を下ろした。


 ……相変わらず薄暗い部屋。
 あたしは久しぶりに入ったパソコンルームを見回した。
 8畳ほどのフローリングに一つしかない窓は常に雨戸が降りている。
 部屋の照明も普通の部屋より少し落としており、この部屋にいたら昼も夜も関係ない。
 そこにパソコン関係が得意なヒロ手作りのパソコン本体が6台、モニター9台が常にフル稼働していた。
 ヒロはいつもこのパソコンを使って、仕事中イヤホンを通じてあたしに指示を出す。
 いざって時は、街に設置された監視カメラをハッキングしたりして、安全な逃げ道を確保してくれる。
 キーボート早打ち選手権……みたいなのがあったら優勝してしまうんじゃないかと思うほど、ヒロの腕前は凄い。
 チラッと見えたパソコン画面には、さっきあたしが手を振った玄関の監視カメラ映像が映っていて、やっぱりあたしが来た事をこの部屋から見ていたか……って思った。


「珍しいね。つくしがここに来るなんて。何かあった?」
 何か調べ物でもしているのか、パソコン画面から目を離さずキーボードを打ちながらヒロが話しかけてきた。
「うん……この前ヤスにも話したけど……」
 そう言って横に座るヤスの顔を見ると、眉間に皺を寄せ「はぁ……」って盛大なため息を吐いた。
「な、何よヤス。そのため息はっ」
「くくくっ。ヤスは寂しいんだよ」
 パソコンに向かったままヒロは、楽しそうに話す。
「は……? 寂しいって何が?」
「つくし、恋人が出来たんだろ? つくしの男親としては何とも言えない寂しさがあるよな。ヤス」
「こ、恋人? 何それっ……!?」

 いったいヤスはヒロに何を話したのっ!
 好きな人が出来たっていうのは不覚ながらバレたけど、付き合ってもいなければ告白すらしていない。
 告白しても断られることが分かっているような相手だ。

 まぁ……キ……キスはしたけど……。
 落ち着いて考えると、お互いお酒も飲んでいたし……。
 その場の雰囲気とか勢いとか……そういうものがあったかも知れない……。

 深い意味はないに決まっている。
 あたしはあのキスの事を、自分の中でそう結論付けた。


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