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種と蕾の先へ 42

桃伽奈



つくしside


「あれ、違うの? 出来たんでしょ? どんな人?」
 ヒロはそう言うと、回転式の椅子をクルッと回してこっちを向いた。
 少し伸びた髪の毛を後ろで一括りにして、毎日パソコンに向かって過ごす超がつく出不精のヒロは、よほどの事がない限り外にはでない。
 だから年中日焼けをしない白い肌をしている。
 運動もそんなに好きじゃないのか、筋トレなどもしないからヒョロっとした痩せ型だ。
 逆にヤスは体を動かすのが大好きなアウトドア派。
 あたしと同じような個人でやる筋トレ以外にも、ジムに通ったりしてガッチリした体をしている。
 腕の太さなんて、同じ男なのに比べたら倍くらい違うんじゃないかと思う。

「な、なんで恋人が出来たなんて報告、ワザワザしなきゃいけないのっ。それに出来てないっつーの!」
 2人が男親としてあたしの事を育ててくれたのは間違ってないけど、普通女子高生は恋人が出来たら父親には黙っていると思う……。
「なんだ……。違ったの?」
 ガッカリ……なんて言いながらヒロは落ち込んだ。
「違うわよっ。今日来たのは確認」
「……確認?」
「この前ヤスがあたしのマンションに来て、今後はヒロもヤスの仕事を中心にするから、他の仕事は引き受けないって聞いたの」
「うん、そうだね」
 頷くヒロを見て、あたしは話を続けた。

「あたしもその仕事手伝うからっ」
「……え?」
 どういう事って顔をして、ヒロはヤスを見た。
 ……。
 ……やっぱり……。

 マンションでヤスと2人で話した時は、最後は「わかった」なんて理解のある言葉を言っていたけど、ただの方便だったんだと分かりあたしはヤスを睨んだ。
 ヒロにはあたしの気持ちを伝えていなかったんだ。
 あれは体育祭が終わってすぐの話だから、あれから10日以上も前の話だ。
「そうだと思った。あれから何の連絡もないんだもん。ヤスってばヒロにあたしが手伝う事伝えてなかったんだね」
「……ヤスそうなの? つくしは恋人が出来たから、これからは学生生活を満喫するためにもう仕事はしない……じゃなかったの?」
 あたし達は責めるような視線をそれぞれヤスに送り、そんなヤスは気まずそうに視線を反らした。
「その方がつくしのためだって思ったからだろ」
「あたしは自分でちゃんと考えて答えを出したのっ。勝手に決めつけないでっ」
「お前は何もわかってないんだ。どれだけ危険かっ。ハルも千恵子さんも生きていたら、そんな事に首を突っ込むのを止めるはずだ」
「パパもママも分かってくれるよ。あたしの気持ち」
「んなわけねえだろっ。勝手な事言うなっ」
「どっちが勝手よっ!」

 パンっ!!

「2人ともちょっとストップ」
「「……」」
 段々ヒートアップして止まらなくなったあたしとヤスに、ヒロは手を叩きウンザリした様子で割って入ってきた。
「いい? 話しをまとめるよ」
 片手を顔のところまで上げたヒロに、あたしは頷くと目だけ頷き返して話を続けた。
「ヤスが個別で追っていた仕事が動き出しそうだから、僕もそっちを手伝う事になった」
 言いながら上げた手の親指を1つ折り「二人ともここまではいい?」って確認しながら続きを言う。
「ヤスはその仕事につくしを関わらせたくないと思っている……それでいい?」
 今度は人差し指を折りながら、ヤスに確認する。
「ああ」
「つくしは僕達と一緒に仕事がしたいと思っている?」
「うん」
「……なるほどね……」
 話がまとまったらヒロは暫く考え込み、真面目な顔をしてあたしの方を見た。

「……?」
「つくし。僕の正直な気持ちもヤスと一緒だ。この件は過去に調べていた事だけど……正直死人がでているのも確かだし……」
「……え?」
 ……死人?
「ヒロっ!」
 あたしが驚いていると、ヤスが制するように名前を呼んだ。
「あ、これは言ってなかったの?」
 マズい事言ったなぁ……ってヒロは困った顔をした。

 ……。
 ……何……。死人……って。
 それって過去にこの件に関わった人が死んじゃったって事だよね……。
 それにこの言い方って……殺された……?


「……それって……パパの事? パパは殺されたの!?」


「「……っ!」」

 あたしの言葉に、2人は息をのんだ。


 美作商事の諜報員だったパパ。
 あたしが5歳の時に車の事故で死んでしまった。

 パパが死んだ後、孤児になるあたしと進を引き取ると同時に美作の諜報員を辞めたヤスとヒロ。
 2人が会社を辞めてまで何かをずっと調べているのは……パパの死に関係があるんじゃないか……。
 何も話して貰ってないけど、あたしはずっとそう思っていた。

 ……。
 ……あたしは……。
 知りたい……。
 最初は育ててもらった恩返しがしたいって気持ちで手伝うって言ったけど……。パパが死んだ原因と関係があるなら知りたい。

「あたし……パパは美作商事の諜報員で、車の事故で死んだとしか聞いてなかったけど……本当は任務に関係があったの? 仕事中に殺されたんだよね?」
「任務に関係あるかどうかはわからない。あの日ハルは1人単独行動をしていて、その死が偶然なのか仕組まれた事なのか……。死んだ場所は任務とは関係ない場所だったし。証拠はないからな」
「……?」
「僕達は勝手にそう疑ってるだけだよ」
 ヒロはそう言って椅子をクルッと回転させ、パソコンに向かってしまう。
 続きをもっと知りたくてヤスの方を見ると、ヤスもあたしから目を反らした。

「ねぇ。教えて。本当の事が知りたい」
「……」
「……ヤス、この前あたしのマンションに来た時に言ってたよね」
「……?」
「あたしにこの仕事を教えたのは、いつか何かを成し遂げたいと思った時……その力があった方がいいかと思ったからだって。つまりパパが死んだ原因を知りたいって思ったら、ちゃんと行動できるようにって事だよね」
 ヤスは目を反らしたまま気まずそうにして、ヒロは首だけヤスのほうに向け「そんな事言ったの?」って目をしていた。

 あたしは目力って言葉の通り、目に自分の気持ちをグッと込めてヤスを見つめる。
「……」
「……」
「……ああ。くそっ。わかったよっ」

 音を上げたヤスの声が聞こえた。






※牧野パパのあのポッコリお腹で、この仕事が務まるのかどうか……。私は勝手に脳内変換してもうちょっとカッコイイパパの姿をイメージしております。
 よかったら皆様も変換の方、よろしくお願い致します^^;



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Posted by桃伽奈

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