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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 44

桃伽奈



つくしside

 また言い合いを始めたあたしとヤスは、ヒロの仲裁でストップした。
 そしてヒロは美作商事から届いたっていう映像をあたしに見せてくれる。


 事務所のような所で、隠し撮りされたその映像は10分くらいの短いものだった。


 音声はなく、最初は10代の子供達が運動場のような場所で、サッカーをして走り回っている。
 プレー参加者も応援する人もみんな楽しそうに笑っており、中には端にあるベンチに座って本を読む人や、友達と談笑している子供達の姿も映っている。
 そんな子供達を映していたカメラの映像は、運動場に隣接している建物へ移動すると、一階部分の窓に2人の影が見えた。
 今まで風景を録画していたようなカメラが、そこで初めてズームを開始する。
 撮影者の意図は子供達ではなく、建物の中の2人を見てくれと言っているように感じた。
 背広姿の恰幅のいい50代くらいのおじさんが1人と、その人より一回り小さい左目の横に大きな黒子(ほくろ)が特徴のおじさん。
 ふたりが何か話し合っている。
 黒子の男は、恰幅のいい男にA4サイズの資料のような紙を渡した。
 カメラはそれが何なのか最大ズームにしてみるが、小さすぎて何かは分からない。
 その少し後、恰幅のいい男が黒子の男に大声を出しているような場面になり、ペコペコと頭を下げる黒子の男。
 そこで映像は終わった。





「ここは、なのはな施設の所長の部屋だな。撮影場所は子供達がいる運動場」
 最後まで見終えたら、11年前潜入捜査のため施設で働いていたヤスが説明をしてくれる。
「あの右側に写っているのが、谷本薬品の水島常務。黒子の男は施設の大城戸副所長だな」
 ……?
 ……あれ?
「あたしその黒子の人知ってる。最近見たよ……どこだっけ……」
 あたしが思い出そうとすると、ヒロが教えてくれた。
「ブローチを取り返しに広田の屋敷へ忍び込んだ時に見たんだろ」
「あっ。あの時のっ!」

 先日受けた依頼……イクイップメント広田の社長の愛人女性である娘からの依頼。
 広田社長が亡くなった事により、大事にしていたブローチを広田の家族に取り上げられてしまった。
 それを取り返して欲しいという仕事だったけど、その広田邸に潜入した時だ。
 亡くなった社長の書斎でパソコンをスマホに同期している時に部屋へやってきたのがこの黒子の男だ。
 ヒロはあたしのカメラ付き眼鏡からその時の映像をパソコンで見ていたから、すぐに気付いたんだ。

 思い出せてスッキリしたが新たな疑問が浮かんでくる。
「でもなんで? 施設の副所長が亡くなったイクイップメント広田元社長のパソコンを触るの?」
「あの時、何かを探してただろ」
 言われてその時の状況を思い出す。

 パソコンの中身を吸い出して慌てて本棚と窓の隙間に隠れた。
 そして部屋の中へ入ってきたのが、黒子が特徴の大城戸副所長。
 随分イラついた様子でパソコンを起動していたけど、結局パスワードが解除できなかった。

『くそっ。なんで開かないんだ。この中なんだ。あのデータが入っているのはっ』
 そんな喚き声をあげた後、部屋から出て行った。

 ……そうだ。あの時「データ」って言ってたんだ……。
「何のデータが欲しいんだろう」
「この映像には音声が入ってないだろ」
「うん」
 ヒロはパソコンを触って、さっきの映像のA4サイズくらいの紙が映っている場所で一時停止をしたあと、手元をアップにして何が書いてあるのか分かるようにしてくれた。
「……名簿?」
 人の名前みたいなのがずらっと並んでいる。
「ああ。映像だけならイマイチ意味が分からない。だから映像を受け取った美作の諜報員が、気を利かせて読唇術で会話を訳してくれた。それによると、水島常務は手渡されたこの名簿よりももっと細かいデータが欲しかったみたいだな。元々なのはな施設はイクイップメント広田が作ったもので、最高責任者は施設の所長でもあるイクイップメント広田の広田社長。……これは仮説だが、じつは大城戸副所長も知らない何かのデータが存在し、広田社長が所持していた。それを水島が欲しがっている。って考えるのが自然な流れだな」

 イクイップメント広田……。ああ、そう言えば更生施設とかリハビリ施設とかも運営してたっけ……。
 でもそれが何で谷本薬品の人と関係があるんだろう……。
 ……。
 ……っ!
「ねっ。あたしが広田邸に潜入した時、パソコンの中身を吸い出したけど何かなかったの?」
 あれから数日たっているし、もう調べは終わってるよね……って思い聞いてみた。
「いろいろあったけどね……。だけど、どれもこの大城戸副所長が欲しがるようなものには思えなかった」
「そう」
 良い返事は聞けなかったが、続いた言葉は初耳だった。
「実は何年か前に一度、広田の家のパソコンをハッキングした事あるんだ」
「……え?」
「けど今回と同じで欲しい情報は入ってなかった。ただハッキングした事がバレて屋敷のセキュリティが厳しくなっただけ。ま、防犯カメラの位置は変わってなかったし、それは助かったけど。……大城戸副所長が欲しがっている物は、外付けHDDに保存しているとかなんだろうね」
 ……。
 だからヒロにしては珍しくあの屋敷に侵入した時、外部からのサポートがなかったんだ。
 大体いつもパソコンからハッキングして、防犯カメラとかをイジってくれるのに……。

「会社のパソコンは?」
 そもそも仕事は会社でするものでしょ? 家のパソコンを見ても入っていない可能性があるんじゃない?
「広田は家のやつと同期して使っていたからね」
「そっか……。この名簿が何なのかも分かんないの?」
「ああ、だから明日映像を送った中川職員に会ったら詳しく聞く」
 あたしの疑問に、すべては会ってからだ……ってヤスは話を打ち切った。
「うん」
 あたしもそうだよねって思ったから素直に返事をして、もう夜遅いから泊っていけっていう保護者2人をふり切って自分のマンションへ帰って行った。






=非常階段=

 次の日、あたしはいつも通り学校へ行き、昼休みに外の風に当たりに非常階段にやってきた。
 踊り場にも階段にも花沢類はおらず、あたし一人なんだと思って昨日のヤスとヒロの話を思い出した。


 なのはな施設に潜入捜査をしていたパパとヤス。
 美作社長は何か怪しいって思ったから、調べて欲しいって事だったんだよね……。
 何を疑ってたんだろう。

 そしてパパが死んだタイミングで、潜入捜査がバレてしまい任務は失敗……。
 ……。
 パパの死と潜入捜査がバレるタイミングが同時。
 そんな偶然あるわけない……。
 だからヤスとヒロは納得がいかず、美作商事を辞めて独自で調べ続けていたって事なんだよね。

 パパが死んだ理由。
 ……パパが何かを掴んだ?

 施設の秘密……。
 だから殺された……。

 そう想像するのは間違ってるのかな……。


 スマホの時間を確認すると、もう少しでヤスが映像を送ってきたなのはな施設の職員と再会する時間になっていた。

 今頃ヤスは……って思っていると、スマホが震え出す。
 ……?
 ヒロからの着信?
 あたしはもう一度周りに人がいないか確認してから、通話をタップした。

「もしもし?」
『つくし。今大丈夫か?』
「うん。どうしたの?」
『ヤスの方でちょっとアクシデントが起きたかも知れない。お前出てこれるか?』
「わかった」

 珍しく少し焦ったような電話越しのヒロの声に、何があったんだと思いながら通話を切って非常階段を駆け下りた。
 校門まで回る時間が惜しくて、監視カメラのない死角になっている塀を勢いよくよじ登り学園の敷地外へ飛び降りた。
 そのまま走って駅まで向かい、いつものコインロッカー965番を解除した。
 中に入れていた目立たない黒い服とツバ付き帽子を取り出しトイレで着替え、耳に通信用のイヤホンを装着したら、ヒロに指定された場所まであたしは急いだ。


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