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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 45

桃伽奈



類side

 ああ、今日も授業をサボってしまったな……っと思いながら、時計塔の天辺から校舎を眺めた。
 秋晴れの空に少しだけ肌寒く感じる風が気持ちいい。
 先日、母さんの事で父さんと言い合いをしてから、元々物事に無気力だったのが更に拍車がかかった気がする。
 けど授業はともかく、非常階段には行ってみようかな……。
 もしかしたら牧野が来るかも知れない。
 俺はそう思って視線を校舎から非常階段へ向けた。
 すると黒い頭が動いているのが分かる。

 ……牧野?

 ここからは遠すぎて顔の確認は出来ないが、女子の制服を着た肩より長い髪が揺れていた。
 けど勢いよく上の階から、下の階へ階段を駆け下りる姿に、牧野のわけがないと即座に否定する。
 体が弱くて体育を見学するよう学園へ診断書を提出しているんだ。
 そんなはずない……って思っていたら、その女子生徒はそのまま一階まで駆け下りたら校舎とは反対側へ走って行き、学園の塀を勢いよくよじ登り飛び越えた。

 ……え?
 あの高さを……?

 学園の外に出た生徒はそのまま駅がある方に走って行き、やがて見えなくなった。
 俺は時計塔から外に出て、女子生徒が飛び越えた塀の前まで来た。
 近くで見ると高さは2メートル近くある。
 ……俺でも飛び越えられるか……?
 ……。
 勢いをつければ出来るかもしれないが、飛び越えたのは女子生徒だ。
 なら俺より10㎝は低いだろう。それをあんな軽々と……。
 ……牧野なら20㎝くらいありそうだ。

 だからなんで牧野なんだ……。
 あり得ないだろ……。


 俺が1人塀の前で自問自答していると、スマホが震えた。
「あきら?」
『おう、類。今日も時計塔か?』
「違うけど……何?」
『じゃ非常階段か? いいもの手に入れたから今から行くな』
 と言って電話は一方的に切れた。

 ……?

 俺は頭にクエスチョンマークを浮かべながら、非常階段を登りいつもいる辺りの階まで登ると、ちょうど校舎側のドアが開きあきらが姿を見せた。
 そしてあきらの後ろには名前も知らない男子生徒が1人いる。

「今夜これに行こうぜ」
「……何?」
 楽しそうに言いながら見せてくれるのは一枚の封書。
 そしてあきらは一緒に来た男子生徒の肩を叩きながら説明した。
「この神木君のバースデーパーティー」
「ぜ、ぜひいらして下さいっ」
 肩を叩かれたその神木とかいう奴は、俺達を前に緊張した面持ちで「お願いします」と言っている。
「……?」
 なんで?
 俺は訝しげにあきらを睨むと、ちょっと焦った顔をしたあきらが今度は俺の肩に腕を回して、神木とやらから少し距離を取った。
 そして相手には聞こえないように小声になる。
「いいから一緒に来いよ。今夜のパーティー」
「興味ない」
 そういう人が集まる場所なんて苦手なのに、なんでよく知りもしない人のバースデーパーティーなんか……。
「類がそういうの嫌いなのは知ってるけどな。だけど、このパーティーにはイクイップメント広田の新社長が顔を出すって噂だぜ」
「……え?」
 イクイップメント広田の新社長……。広田裕介。

 あの『なのはな施設』の親会社。

「広田新社長は、先代社長が亡くなって喪に服していたが先日四十九日も終わったし、ビジネスの関係上では神木の親への義理もあるから広田は恐らく顔を出す。どんな奴か会えるチャンスだぜ」
 ……確かに興味がある。
 あの映像の意味が少しは分かるかも……。
「あ、でも俺服がない」
「服? 正装の事か?」
「うん。この前父さんと喧嘩してから家に帰ってない」
「……っ。……お前な……」
 あきらは何か言いたそうに額に手をあて俺の方を見たが、暫く考えた素振りをみせた後「じゃ、俺の貸してやるから家に来いよ」と提案してくる。
 俺は好意を素直に受け止め、神木に「必ず行く」と言うと、頬を赤らめ「はいっ。お待ちしてます」と言って校舎の中へ入って行った。


 俺とあきらは校舎の中には戻らず、非常階段を下りていった。
 地上に足がついた所でもう一度塀の方を見る。
 ……なんでこんなに気になるんだろう。
 不審者がこの学園内に侵入してこないかという防犯上の心配か……?
 けど防犯カメラだってあるし、俺でギリギリなら飛び越えられない人の方が圧倒的に多いだろう。
 ……。
 ああ、そうか……。
 カメラがあった。

 俺は確認のために時計塔の中へ戻った。
 珍しくあきらもついてくるので黙って一緒に中へ入れた。
「本当にここに住んでるんだな……」
 ベッドメイキングされていない俺のベッドを見て呆れたように言うが、俺は無視をして電源が入れっぱなしになっていたパソコンを動かした。
 英徳学園の管理システムに侵入し、さっきの時間の防犯カメラの録画を確認する。
「おい、類。何を調べてるんだ?」
 俺が黙ってパソコンを触っているので、あきらが話しかけてきた。
「ちょっと気になる事があって……」
 そう言って高等部に設置されているカメラを全て確認するが、何も映っていない。
 校舎内はプライベートの事もあり、元々カメラの設置はされていないから、非常階段を駆け下りている映像もない。
 あくまで外部からの不法侵入者対策のためなのだから仕方ないのだが……。
 唯一、校舎の外を映している一台のカメラに、肩よりも長い髪の毛をなびかせた女子生徒が走っている後ろ姿が映っていた。
 けど2秒も映っておらず、これが誰かはわからない。

「……」
「……どうした類?」
「ね、あきら。これ誰か分かる?」
 写っている映像を一時停止させて、俺とは違い社交性が高いあきらに聞いてみる。
「……さぁ。こんな映像じゃわかんねぇよ。せめて横顔くらい写ってないと」

 ……だよね……。
 これを解析ファイルでスキャンしても頭だけならきっと顔は分からない。

 俺がカメラから相手を見つけるのを一旦諦めると、あきらは「そういえばさ」と言って話をふってきた。
「……?」
「この前の夜、どうなったんだ?」
「夜?」
「司の家に牧野と一緒に夜を明かした日の事だよ」
 ……夜を明かしたって……。何か嫌な言い回しだな。
「俺らが起きた時はもうお前も牧野も帰った後だったしよ」
「……別に何もないよ」
「嘘つけ。何かあるだろ……。密室に一晩、女と2人っきりなんだぜ」

 ……。
 ……何かあったといえばあったけど……。
 酒の勢いもあってか、母さんの事を牧野に話した。
 今まで誰にも話した事がない、俺の心の中の事……。
 牧野の話も聞いた。
 赤くなったり青くなったりして、忙しい牧野を見ていると楽しい。

 ……可愛い……って、他人に対して初めて感じた感情。

 もっと近づいてみたくてキスをした。
 薄く柔らかい唇に、もっと……って気持ちが芽生えた。


 俺があの日のことを思い出している間に、何も喋る気はないんだな……と諦めたあきらは「そろそろ行くぞ」と言って着替えるため一緒に美作邸へ向かった。



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