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種と蕾の先へ 48

桃伽奈



つくしside

 ヤスが映像の送り主である、なのはな施設の中川職員と待ち合わせをしていた場所は国立公園。
 あたしは公園の中には入らず、ヒロに指示された傍にあるビルの屋上へ向かった。
 けれどここからだと公園の中にある沢山の木に邪魔されて、ヤスや中川職員の様子が見えない。

「進!」
 屋上には先に、あたしと同じような黒い服を着ている弟の進が待機していた。
「あ、姉ちゃん」
 パパが死んでから、あたし達はヤスとヒロに引き取られ一緒に育ててもらった。
 あたしは高校進学と同時に家を出たけど、進はまだ中学生。今でも2人と一緒に暮らしている。

「何してるの?」
 進は地べたに座り持ってきていたリュックから何かを取り出し、スマホと合体をさせている。
「ヒロお手製小型ドローンのリモコンを俺のスマホにつけてるの」
「ドローン? って空からの映像を見れるやつ?」
「そう。約束の時間になってもその中川職員って人が現れないから、空から周りを確認してくれって」
 準備完了って言って、リモコンを動かすとドローンが上空にゆっくり飛んでいく。
 小型というだけあって手のひらサイズのドローンは、距離が離れると本体を肉眼で確認するのは難しくなりそうだ。
「なんか見失いそうなサイズだね」
「ミリ波レーダーみたいなのも搭載されているから、障害物とぶつかりそうになったら自動で止まるし平気」
「へぇ……さすがヒロ……」
「まぁ、鳥が向かってきたらアウトだろうけど……。望遠カメラもすごいから、かなり上空から撮影ができる。だから地上にいる人に気付かれないんだ」
 リモコンと繋がっている進のスマホには、ドローンから映る地上の映像が映っている。
 スマホの方に職員の顔認証データがすでに入っているのか、識別できる角度に人の顔が映ると顔認証ソフトが動き出した。

「あ、ヤスがいる」
 公園内の噴水の近くに、ヤスが立っているのがスマホに映った。
「ホントだ。この周りにいる2人の人が、美作の諜報員かな」
「そうなの?」
「うん。美作の人は中川職員とヤスが会ったら、ヤスから紹介してもらう予定だったみたい。もし職員の人が危険な状態にあり匿ったりしなきゃいけないような事態なら、俺達よりも美作に任せた方が安全だし」
「匿うって……。そんなに危険な状態なの?」
「さぁ? けど映像を送ってからその職員はどこかに雲隠れしているって話だし。それってなのはな施設関係から逃げているって事でしょ?」
「なるほど……」

 途端に昨日の会話の『死人が出ている』って言葉を思い出した。
 ……パパが事故ではなく、殺されたのかも知れない……。
 もしかしたら、この職員って人もパパみたいに死んじゃうような危険な事態かも知れないって事……?
 あたしは震えそうになるの手を、力を入れる事で我慢した。


 公園の中や周りをグルリと一周したところで進は、
「ねぇ、ヒロ。該当人物いないよ」
 と司令塔として家のパソコンの前で待機しているヒロへ無線を使い報告している。
『ああ、公園内にある監視カメラにも映らないな』
 すると一台のバイクが公園の外に止まり、バイクジャケットを着た人が公園の中に入って来た。
 真っ直ぐヤス達がいる噴水の方へ歩いて行くが、ヘルメットを被ったままだから顔認証ソフトが働かない。

『ヤス、ヘルメットを被った人物がそっちに向かっている。気をつけろ』
『ああ』
 ヒロとヤスのやり取りが耳に付けているイヤホンから流れてくる。
『進、ドローンでバイクのナンバー確認できるか? こっちの監視カメラに写ってない』
「わかった」
 返事をした進はドローンを公園入口に停まっているバイクの方へ移動させた。
 ナンバーがスマホ画面に映し出されると、家にいるヒロのパソコン画面にも同じ映像が流れているのか「OK」と聞こえたイヤホンからパソコンのキーボードを叩く音が聞こえてくる。
 バイクの持ち主を調べているみたいだった。
 そんな作業をしている間に、進が操作するドローンは再び噴水が映る場所へ移動する。するとヘルメットの人物はどんどんヤスに近づいていくのが見えた。
 2人の距離が肉眼で確認できる距離になると、ヤスと美作の諜報員は身構え、ヘルメット人物は噴水へ向かって小走りになる。

 そしてヤス達の少し手前で止まってから、ポケットから何かを取り出し手渡した。
「「……?」」
 ナイフでも出るんじゃないかと一瞬冷っとしたが、どうやら違うらしい。
 すぐに無線からヤスの声が聞こえる。
『俺宛のバイク便だと。中身は……』
 って言いながら、封筒を開けている。
『バイクのナンバーを確認した。確かにバイク便会社に登録されているバイクだよ』
 ヒロの言葉に、危険人物じゃなくて良かったとあたしと進は安堵する。

 ……でもどうしてバイク便?
 中川職員が来なくて、荷物だけ届けられた……?
 ……なんで?
『DVDだな』
『DVD!? 今それ見れるのか?』
『ああ、一緒にいる美作の諜報員にノーパス借りて見てみる』
 ヤスを中心にして、美作の諜報員の人達がノートパソコンの周りに集まる。
 進もドローンを上手く操作して、パソコンの画面が見える位置に移動してくれた。

 そこには倉庫のような場所に、椅子に縛られた男性が座っていた。
 少しずつアップになっていき、憔悴しきった表情が分かるようになってくる。
 進は「あっ!」と声を出した後、
「この人、なのはな施設の職員だ。今日会う予定だった」
 と説明してくれた。
「そうなの?」
「うん、スマホに顔認証のデータを入力する時に、俺写真見たし」
 映像を美作の会社に送った後、ずっと行方を眩ませていた中川職員が縛られていた……。




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Posted by桃伽奈

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