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種と蕾の先へ 49

桃伽奈



つくしside


 倉庫のような場所で、椅子に縛られたなのはな施設の中川職員。
 首から「warning」と書かれたプレートを下げている。

『警告』

 不吉な言葉に心臓が早鐘を鳴らす。
 そして顔がアップになった時、別の人の黒い背広の袖が画面の端に映った。
 手の先に握ってあるのは拳銃。

 ……え?
 まさか……。
 と思う間もなく、拳銃の先は職員の蟀谷に当てられ、そこでDVDが終わる。

 発砲されたのかどうなのか……。
 それはこのDVDでは分からなかった。


『……罠だな』
『ああ』
 ヒロとヤスの言葉に、あたしと進は「……え?」っと聞き返した。
『DVDを送った人物は、中川職員が誰と繋がっているのか……。それを確かめるためにヤスと美作の諜報員を、中川職員の名前を使って公園の噴水に呼び出した』
「それってどういう意味? 中川職員はヤスに助けを求めているんだよね?」
 まだ分からない事だらけで新たに質問をすると、ヒロが焦ったように名前を呼んだ。
『ヤス!』
『もう探してるっ』
 ドローンからの映像を見ると、ヤスは噴水から移動して公園内をウロウロし出した。
 そしてヒロは、状況が把握しきれていないあたし達に説明をしてくれる。
『今の段階で分かっているのは、なのはな施設の映像が人手に渡って困る人物が、中川職員を縛り上げ今回のDVDを僕たちに渡したって事だね』
『考えられる可能性としては、中川職員が俺達と接触する前に見つけ出し縛り上げたのか、中川職員は元々DVDを送った奴らの仲間で俺達は最初から騙されていたか……だが……。後者の方は可能性が低いと思う』
 ヤスの考えに『僕もそう思う』とヒロも同意した。
『富山でヤスと会ったのが本当に偶然だと考えると、映像を美作に送った後に雲隠れをしたが、見つかってしまったと考える方が自然だ』
「……ね。ならこの職員の人って……どうなるの?」
『このまま監禁か……悪くすれば殺される』
『もう殺されたって可能性もある。これがいつ録画されたものか分からないからな』
『とにかく敵は、噴水に来たヤス達の正体を確かめるために近くまで来ていた可能性がある。ヤスはそのまま不審人物を探して。進はドローンで空から。それとつくしはすぐその場から撤退。職員が住んでいたマンションへ向かって』
「……え? マンション?」
『映像を送った後は身を隠していたからずっと家に帰っていないみたいだけど、何か手がかりが残っているかも知れない』

「わかった」

 返事をした後、あたしは急いでヒロから送られてきたメールに書かれている職員の住所へ向かった。





 到着したマンションは、15階建ての普通の分譲マンション。
 部屋の間取りは一種類ではなく、一人暮らしからファミリー層まで様々な年代の人達が住んでいそうな作りだった。
 そんなマンションの一室に、一人暮らしをしていた中川職員。
『施設の職員には当直をする職員と、通勤のみの職員の2種類いたんだが、中川職員はよく施設へ泊っていたようだな』
 ヤスの説明にあたしは「なるほど」と頷いた。
 施設で働く人は外に家や家族がいるから帰るけど、施設へ預けられた子供達は家には帰らない。
 なら大人の職員の人が交代で一緒に住まないといけないんだ。

『施設へ潜入捜査をしていた時のハルも泊まりはしていなかったんだぜ。ちゃんと夜には家に帰っていただろ』
 夜になり、預けられていた保育園に迎えに来てくれたパパの事は覚えている。
 けど、あたしより小さかった進は覚えていないのか『へぇ……』とだけ返事をしていた。
 無理ないかもしれない。
 迎えに来てくれた時間にはもう進は寝ていたし、いつもパパにおぶって貰い家まで帰っていたんだから。


 オートロックのマンションだが、タイミングよく住人がマンションに帰ってきたので、便乗して中まで入った。
 エレベーターは使わず、階段で5階の部屋まで駆け上がった。
 ピッキングして部屋の鍵を開けようとドアノブを触るとすでに鍵が開いている。

「……!?」

 なんで……? って思いながら部屋の中を覗くと、強盗でも入った後の様に荒らされた後だった。
「ヒロ、もう先客が来た後みたい」
『先を越されたか』
「もう何もないかもしれないけど、一応見てみる。ヤス、大事な物はここに隠しているとかって情報は本人から聞いてないの?」
『んなもん聞いてねぇよ』
 パソコンでもあれば起動してみようとリビングへ行くと、ディスクトップのパソコンが解体されていた。
 ……うわぁ。
 こんな状態のパソコンを見たら、ヒロが泣きそう……。
 今日は急だったから、カメラ付きの眼鏡を持ってきていなくて正解だったわ。

「ああ……、もうマザーボードもハードディスクも抜き取られてる」
『残念……。他にも施設関係の動画が入っていればみたかったんだけどな』
「あ、引き出しの中に通帳を発見。一緒にある印鑑は銀行印かな」
『じゃぁやっぱりただの物取りではなく、犯人はDVDを送り付けたやつだな。施設関係の物を持ち去ったって事だろ』
 ファイルされている書類を見たりして、今回の事に関係がありそうなものが残ってないか探してみるが、なのはな施設関係の物は何も出てこない。
『ああ、つくし。ついでにあれも探して来てくれる?』
「……?」




 ヒロの頼まれ事を聞き、次は他の部屋を見ようと廊下に出たところで、玄関の方から男の人の声が聞こえた。

「……本当に私はそんな通報してないんですよ」
「けれどここの管理人だって名乗る人物から、505号室に泥棒が入ったって連絡が警察へ来たんですから。こちらとしては一応確認だけはしないと……」
「……ええ、それは……協力はしますけど……。ただ中川さんは1人暮らしだしこんな昼間にいるかどうか……勝手に入るわけには行かないので」
「例え悪戯だったとしても、家主にもこういう通報がありましたって話をしないといけませんしね」
「はぁ……」


 ……!?
 警察……!?

「……ヒロ……。玄関に警察が来た」
『はぁ!?』 
声の数では管理人さんに警察が2人ってとこかな。
「会話から察するに、第三者が警察へここの管理人の振りをして「泥棒が入った」と、通報したみたい」
『……ちっ。その第三者ってのは間違いなく、DVDを送り付けた犯人だね。僕達が公園からここまで来る時間をキチンと計算して警察へ連絡している』
「今警察に見つかったら、あたしがその「泥棒」……だよね」
 足の踏み場もないほど部屋をグチャグチャにしたのはあたしじゃないのに……。
 他の部屋に行くのを諦め、廊下からさっきまでいたリビングへ一旦戻った。

ピンポーン♪

 インターホンの音に体がビクって反応するが、息を殺して居留守を決め込んだ。
 暫くすると「やっぱり留守ですよ」という管理人の声が聞こえてくる。
 手を組んで顔のところで神に祈るようなポーズを取り、……よし。このまま帰れ……と願うが、そのすぐ後にドアノブを動かす音が聞こえる。
「あれ? 鍵が掛かってない。……中川さん開けますよ」
 
 ……や、やばいっ。
 入ってくる……。
 そうしたら、本当にあたしが犯人に……。


「「「……っ!!」」」

 ドアを開け、部屋の惨状を見た管理人と警察の人が息をのむ気配が伝わってくる。
「……こ、これは……」
 驚いた様子の管理人の声に、警察はいち早く落ち着きを取り戻した。
「中川さんっ。いませんか?」
「取り敢えず現場保存だ! 管理人さんは中に入らないで」
「……は、はい」
「お前は応援と鑑識を呼んでくれ。俺は中に人がいないか確認する」
「わかりました」


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Posted by桃伽奈

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