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種と蕾の先へ 55

桃伽奈



つくしside

 何だったんだろう……。
 非常階段で見たあの光景は。

 絵になる2人が向かい合って顔に手をあて、見つめ合っていた。

 女の人は年上だけど……キレイな人だったな。
 先生とか?
 立ち上がってあたしに何か言おうとしていた。
 驚いて逃げてきてしまったけど、何を言おうとしてたんだろう……。


 まさか「邪魔しないで」とか?
 ……やだな。
 さっきから胸が苦しい。

 花沢類は恋愛とか、そういう意味では誰も好きにはならないって言ってた。
 だからあたしとしたキスだって、酔った勢いだったんだもん。


 けどあの女性は?

 ……あの人は別なの?



 考えなきゃいけない事は沢山ある。
 先日の国立公園に現れなかった、なのはな施設の中川職員の行方。
 DVDを送って来た犯人を突き止めるため、あの後ヒロは公園の防犯カメラの録画を確認してくれた。
 そこに1人だけ噴水前にいるヤスや美作の諜報員を見ていた人が映っていたみたいだけど、帽子を被りサングラスとマスクで顔が隠されていて人物判定できなかった。
 モヤモヤした気持ちをすっきりさせたくて、非常階段に行ったら……。
 さっきのあの2人……。

 ……ああ、だから思い出しちゃダメだってば。
 余計モヤモヤするし、胸はキリキリ痛むし……。


 一日中悶々と過ごしながら放課後を迎え、帰り支度をしていると「牧野」と名前を呼ばれた。
「……美作さん?」
 ようって感じに片手をあげ廊下で立っている姿に、あたしの周りは「きゃぁ!」とか言いながら騒がしくなった。
 わ、悪目立ち過ぎる……。
 この前の椿さんといい……この人達は……。


 体育祭後、あたしの周りでは人が距離を取るようになった。
 それは花沢類が、あたしの不興を買えば赤札の対象になる……みたいな事を全校生徒に宣言し、みんな怖がって気軽に声を掛けてもらえなくなってしまったからだ。
 中にはあたしと親しくなればF4との繋がりができる……みたいな下心付きで声をかけてくるブランド品大好き3人組娘みたいなのもいたけど、あたしが一度嫌な顔をしたら青い顔をして口を閉じた。
 椿さんが教室に現れた日からはそれに拍車が掛かったみたいで、最近では挨拶すらしてもらえない。
 あたしが「おはよう」と言えば、「お、おはよう」と引きつった笑顔で恐々返してくれるだけだ。
 ……。
 ……。
 元々親しい友達はいなかったし、いなくても平気……なんて思っているけど、だからって傷つかないわけじゃない。
 もうちょっと考えてよね……って言葉は口には出さずに美作さんが待つ廊下へ向かった。
「もう帰りだろ? ちょっと話があるんだけど」
「……?」
 ……話?
 なんだろう?


 黙ってついて行き「入って」と言って促された場所は、この学園で一般生徒は踏み込むことが許されないF4専用ラウンジ。
「こ、ここって……」
 入って言いわけ? って不安になり足踏みをしていると、
「もう他のメンバーは帰ったから遠慮するな。ああ、類は学園のどこかにいるかも知れないけど、ここには来ねえよ」
 早く入らないと目立つぞって言われ、その通りだし思い切って部屋の中に入った。
「喫茶店とかでもいいんだけどな。他の人の目があるから、お前にはこっちの方が落ち着けるだろ」
 ……そこを気遣ってくれるなら、教室の前で呼ぶのもやめて欲しい。
 美作さんはあたしの顔を見て考えている事が分かったのか「はははっ」と苦笑いした。

 今まで勝手に、美作さんは神経質そうな人だなって思っていたけど、話しにくいって訳ではなさそうだ。
 あたしは向かい側のソファに座り、小さく深呼吸をした。
 そうだ。美作さんなら昼間の花沢類の相手が誰なのか知っているかも。
「あの……美作さん」
「なんだ?」
「……えっと、昼間……」
 花沢類と一緒にいた女の人って誰? って聞きたいけど、なんか恥ずかしくて言葉に詰まる。
「……?」
「……」
「……」
「あ、やっぱいいです」
 聞かなかった事にして……と言って、話を切り上げたのに美作さんはそれじゃ納得いかないみたいだった。
「言いかけて途中でやめるな。何か気になる事があるんだろ?」
「……う」
 そうだけど……。
「何? そんなに言いにくい事? 内緒にして欲しいなら俺は口が堅いぜ」
「……」
 真剣な眼差しに、あたしは勇気を振り絞って聞いてみた。

「今日、花沢類が女の人と一緒にいて……すごく親しそうで……気になって……」
 口にしたはいいけど、どんどん声が小さくなっていって、最後は聞こえていたかどうか怪しいくらいだ。
「類が女の人とっ!?」
 だけど大事なトコはちゃんと聞こえていたようで、美作さんは驚いた顔をして聞き返してきた。
「……年上で……すごく美人で……」
 並ぶと絵になるっていうような2人だった。
「類が年上の人と? て、相手はいくつくらいの人?」
「30……歳くらい? ……もう少し上かな?」
 年は離れていたけど、それだけ大人の魅力みたいなのがあった。
 でも決して下品な感じじゃない。
「……30歳って事は人妻か? ……類が人妻と? 俺じゃなく、あの類が!?」
 美作さんはあたしの言ったことを何度も復唱し、その場面を一生懸命想像しているみたいだった。
 最後には「……マダムキラーの称号は渡さないぞ」なんて意味分からない事を呟いている。
 なんだ、それは……。


「けど、美人で年上ってだけじゃ、誰か分かんねえな……。類に直接聞いてみればいいじゃねぇか」
 ……き、聞けないからここで聞いてるのにっ!
 結局美作さんからは有力な情報は得られなかった。
「……」
「……」
「俺もさ、牧野に聞きたい事があったんだよな」
「……?」
 あ、そうだ。
 美作さんは何か用事があったからあたしをここに誘ったんだった。


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Posted by桃伽奈

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