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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 61

桃伽奈



類side

 面識なんてないのに、牧野の保護者が俺の名前をズバリ言い当てた事に、俺はもちろん牧野も驚いた。

「なんで花沢類の事知ってるの?」
 聞きたい質問を牧野がしてくれたから、俺は答えをジッと待つ。
 俺達2人の視線を受け、特に隠す必要もないのか、前に立つ牧野の保護者は苦笑いをしながら答えた。
「……つくしがあの学園に通いたいって言ったからね。ちょっと調べただけ。あそこには美作社長達の子供が通っているって知ってたし」
「子供……?」
 美作社長の子供ってあきらの事だよな。
 けど「達」って……。他は誰の事だ?
 更に質問を重ねようと牧野が口を開きかけると、声が被さった。

「まぁ立ち話もあれだし、上がってお茶でも飲もう」
「うん、わかった」
 後からやって来た男性の言葉に従い、俺達はリビングに場所を移した。
 玄関で俺を威嚇した相手を牧野はヤスと言っていたから、こっちの痩せ型でおっとりした感じの人がヒロなんだろうって思っていると、リビングのソファに座った時、牧野にそう紹介された。
 人数分の日本茶を配り終えると、一番初めにヒロが牧野に謝罪した。
「さっきはごめんね。寝てたから電話に気付かなくて」
「そうだと思った」
「気付いて掛け直そうとしたけど、GPSを見たらこっちに向かってるし。ならつくしが来るのを待った方がいいかなって思って」
「GPS?」
 俺の質問に牧野は「これ」と言いながら、耳に付いたピアスを指差した。
「発信機付きだから。ヒロにはすぐ居場所が分かるようになってるの」
「……ふーん。……いいな、俺も欲しい」
「えっ!? このピアスっ??」
 無意識に出た心の声を聞いた牧野は驚いた声をあげ、横に座る俺の顔を見た。

 ってか違うし。
 欲しいのはピアスじゃない。
「くっ……くくっ。……つくし、類君が言っているのはGPSの追跡番号だよ」
「……え?」
 俺の心情を理解しているヒロが肩を揺らしながら牧野に補足する。
「そうなの? 花沢類」
 確認されるので俺は正直に頷いた。
「なんでそんなものを欲しがんだ?」
 ヤスは相変わらず凄みをつけた様に俺に話しかけてくる。
「知りたいって思ったから」
 俺が臆することなく話すと、正面に座るヤスは牧野に確認してきた。
「類がお前のGPSの事を聞いても驚いていない様子を見ると、全部話したのか?」
「……うん。話しちゃった」
「じゃないと家まで連れてこないよね?」
 お見通しだというようにヒロが話す。
「うん……。でも花沢類は人に言いふらしたりするような人じゃないからっ!」
 俺の事を信用して話してくれた牧野の気持ちに心が温かくなるが、ヤスの考えは違ったみたいだ。

「それはお前の勝手な判断であって信用ならない」
「そんな事ないもんっ!」
「けっ。何を根拠に言ってんだが……。惚れた男の事を信じたいって気持ちは分かるが、そんな理屈じゃ俺らには通用しないぜ」
「……なっ。……惚れっ!」
 ヤスの言葉に牧野は真っ赤になって、あたふたしだした。
 牧野から感じる俺への気持ち。
 直接言葉にはしてもらってないけど、好意的な態度に俺の心が浮き立ちそうになるのを保護者2人の手前、必死に抑えた。

 パンっ!
 いきなりヒロが手を叩き、みんなの視線が彼へと移動する。
「2人とも今更言ったってもう類君も来ちゃったし……そこはしょうがないでしょ」
「「……っ」」
 彼の一言にピタっと2人が口を噤んだ。
 さっきの玄関でもそうだったし、この3人はいつもこんな感じでバランスが取れているのかも知れないと思う。

「類君、つくしから聞いたなら分かっていると思うけど……。俺達の仕事は大っぴらには言えない内容だし、他言無用でもいいかな?」
 伺いを立てるようなヒロのセリフだが、目が笑っていない。
 YES以外は聞かない、上から抑えるような言い方に、ヤスも俺の方を見て睨みをきかせてきた。
 別にそんな怖い顔をしなくても、口外するつもりは最初からない。
 話を聞く前に牧野と約束してるんだし。

「牧野の名に誓って言いふらしたりしない」
 俺がそう答えると、ヤスは「けっ」と言いながら横を向き、ヒロは目を細めて笑った。
「よかった。つくしのGPSの番号はあとで教えてあげるよ。……ただし興味本位で俺達の仕事には首を突っ込まない事。それは約束して」
「ん」
 元諜報員が行う便利屋の仕事。
 ヤバイ雰囲気が漂っているし、もとより首を突っ込むつもりはない。
 ただ牧野の事が気になるだけだ。
 俺が返事をすると、牧野は「あたしの意志は?」とヒロに抗議し、ヤスは「けっ!」と吐き捨てた。
 そんな態度を見たヒロは、取り繕うように俺に話してくれる。
「……ヤスの態度は気にしないで。拗ねてるだけだから」
「拗ねてねぇよっ!」
「玄関前にある監視カメラに、つくしが男の子を連れてくるのを見てからこうだから」
 クスっと笑うヒロに、牧野が追い打ちをかけた。
「え? それってもしかして、娘が男を連れてきた世の中の父親みたいな態度を取ってるって事? だからさっきからそんなに態度が悪いの?」
「……っ!」
 牧野……。それを言っちゃ……。
 実際、この2人は父親みたいなものでしょ? 
 5歳で両親を亡くした牧野を今まで育ててくれたんなら。
 俺が掛ける言葉を見つけられず黙って見ていると、ヒロは苦笑いをしながらこっちを見ていた。
「それで? 2人は何の用で家まで来たの? 彼氏の紹介だけ?」
「ち、違うっ! パパが亡くなった時の事をもっと詳しく聞こうと思って」

「「……っ」」

 牧野の言葉に2人が息をのんだ瞬間を俺は見逃さなかった。
 やはりこの保護者は牧野に嘘をついている。
「詳しくって? この前説明したよね?」
 ヒロはどういう事か確認するように訪ねた。
「どんな事故だったとか。あたしそういうの全く聞いてなかったから。事故現場を見たわけでもないし」
「あたり前だろうがっ。5歳の子供に現場なんて見せられるかっ!」
「……それは……そうかもだけど……」
 ヤスに言われ、牧野は不承不承に納得をしている。
 ……いや、牧野。そこで納得して口を閉ざしたらダメだろう。
 その先を聞かないと……。
「牧野……」
 本題を聞いて欲しくて俺は促すように名前を呼ぶと、「あっ」と顔を上げた。
「だからどんな事故だったの?」
 同じ質問をした牧野を2人が見た後、空気が重くなったのを感じた。
 お互いにする目配せに、力が込められている。
 そしてソファの肘置きに片肘をついて手で顔を支えたヤスは、睨むような目つきのまま俺達2人を見つめて口を開いた。


「つまりつくしが……お前ら2人が知りたいのは、ハルが死んだとき一人だったかどうかってことか?」
「う、うん。そう」
「……」
「……」
「それは今、お前らが疑っている通り一人じゃないぜ。そこにいる類の母親と一緒に発見された」

「「……っ!」」


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