Welcome to my blog

種と蕾の先へ 64

桃伽奈



 つくしside

 さっきから驚く事ばかりだ。
 お互いの事がもっと知りたいと言って、沢山話してきたつもりだけど……まだまだ知らないことばっかり出てくる。
 花沢類はイクイップメント広田の広田社長と面識があるみたいだし。
 それにヤスの本名を知っている事や、ヒロが作った暗号ソフトを解読した事とか……。
 あれが出来るって事は、花沢類はかなりそっち方面が得意なんだ。
 ヒロが「頼もしい後継者」って、珍しく褒めていたもん。
 料理とか組手とか……そういう分野ではヒロはよく褒めてくれる。「美味しいよ」「体が反応するようになったね」とか言って。
 でもそれは自分が一番とする得意分野じゃないからだ。
 一番と自称するプログラム関係では、絶対他人を褒めたりしない。そんなところを今まで見た事がなかった。
 あたしがヒロよりすごいと思う人に出会った事がないせいもあるんだろうけど……。
 ヒロに花沢類が認められたんだって思うと嬉しくて顔が綻ぶ。


「類君、僕達が11年前になのはな施設に関わっていたのは、美作社長の個人的な依頼だった」
「……」
「「不審な所があったら報告して欲しい」と頼まれた。だから作戦内容としては、ただの「観察」。何か目的があって探っていたわけじゃないよ」
「それで何を見つけたんですか?」
「……何も」
「何も?」
「ああ。でもハルは何かを見つけたのかも知れない。ハルが死んだと同時に打ち切りになったのには、きっと訳があるに違いないと俺達は思った。だから美作商事を退職し、ずっと水面下で調べていたが、先日派手に動き過ぎた事もあって広田も俺達の事は警戒しているだろうな」

「……え? それってこの前の国立公園の事?」
「その前にな」
「ん、向こうもバカじゃないだろうから、そろそろヤスの事に気付いている頃だよ」
 その前……? っていつ……?
 あたしが手伝うって決意をした頃の事?
「派手にって何をしたの?」
 そんな話は聞いていない。初耳だ。
「んな怖い目で睨むな」
「この件にはあたしも関わるって言ったよね。なのに話してないことがあるって聞いて怒らないわけないでしょっ」
「……言い損ねただけだ」
「うそだ。絶対ワザと言わなかったんだ」
 あたしがこの件に関わるのを良く思っていなかったヤスだ。
 もう諦めてくれたと思っていたのに、往生際が悪くまだ関わって欲しくないって思っているわけ?

「……谷本薬品だ」
「谷本薬品?」
 ってどっかで聞いた名前だ。
「類、お前もあの映像を見たならピンときているだろ」
 ヤスに問われた花沢類は小さく頷いた。
 ……あれ?
 わかってないのはあたしだけ?
 映像って事は、なのはな施設と関係があるんだよね……。

 ……。
 ……えっと……。
「あっ。思い出した。映像に写っていた、なのはな施設の黒子の副所長と話していたのが谷本薬品の人だ」
「ああ。水島常務。谷本薬品で研究を行っていた人だ」
 研究……。
 薬品会社で研究って事は薬を作っていたって事だよね……。なんて思っていると、隣に座る花沢類が補足した。
「谷本薬品は……元々は久我系列の会社だった。けど母さんが亡くなった年に、イクイップメント広田に買収されている」
「久我って?」
「母さんの実家だよ」
 ああ、そっか。理事長の名前は久我杏子さんだった。

 あたしが納得すると、ヤスが続きを話してくれる。
「広田に繋がる事かもしれないと思って、俺は1年間あの会社で偽名を使って働いていた」
「富山にいたって聞いてたけど……」
 あたしが先日聞いた話をすると、ヒロが頷いた。
「谷本薬品が富山にあるんだ」
「そうなんだ」
「じゃ、あの内部告発者っていうのは、あんたが?」
 花沢類の言葉にヤスはニヤっと笑った。
「何かやましいものでも警察が見つけてくれないかなっと思って、引っ掻き回してみたんだよ。記述の件は本当だったし」
「理由はコストを抑えるためだって発表されていたけど」
「ああ」
「……え? ちょっと2人で会話してないで、あたしにも分かるように説明してよっ!」

 なんで2人だけでそんなにスイスイ話が進むわけ?
 さっぱりついていけず焦ると、あたしの方を見た花沢類がまた説明してくれた。
「数か月前、谷本薬品の薬に明記されていない原材料が入っていると内部告発者が現れた。理由はコスト削減で、書いてある原料を似たような安物にすり替えて売っていたんだ。その事で警察の立入調査が入り、ニュースにもなっていた。その告発者が偽名を使って谷本薬品で働いていたヤスだよ」

「そんな目立つような事を……」
 いつも足音を消し、影を見せない……。目立たず動くのを仕事にしているヤスにしては珍しい行動だ。
「警察が立ち入る前に谷本薬品を退職して暫く様子を見ていたが、これといった結果は出なさそうだったんでこっちに戻って来たんだよ」
「へぇ……」

「んで、ここからは俺の推測だが……富山で偶然、中川職員に会った。あの時俺は自分の近況を話したりはしなかったが、谷本薬品のニュースを見て俺の仕業だって思ったのかもな。イクイップメント広田繋がりで、美作商事が谷本薬品について何か調べていると……。だからそのあとすぐに、録画した映像を俺宛に送ったんだと思う」
 ああ、どっちも広田が関係している会社だ。中川職員も自分が働いているグループだから当然その事は知っていたんだろう。
「だから中川職員はまだヤスが美作商事で働いていると勘違いして、美作商事の方に映像を送ったんだ。それを花沢類が解読したって事なんだね」
「ああ……」
 なんか色々新しい事を聞けたけど……、でもまだ肝心のなのはな施設と谷本薬品の繋がりが見えてこない。
「……やっぱり中川職員を見つけなきゃいけないよね」

「……残念だけど中川職員は亡くなっていたよ」

「「……え?」」

 ヒロが声のトーンを落として話すのに、あたしと花沢類は同時に声を出した。


関連記事

にほんブログ村 ランキング参加中♪
Posted by桃伽奈

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply