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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 69

桃伽奈



 類side

 牧野のマンションへ行った次の日、俺は午前の授業をサボって母さんの墓参りにやってきた。
 手を合わせると、白檀の香りがもうここにいない人を思い出させると同時に、ここ数日の事が走馬灯のように頭の中でリフレインする。
 初めて父さんと言い合いみたいな事をして喧嘩してしまった事や、牧野の父親が不倫相手だと勘違いした事。
 ヒロに言われた「信じる」って言葉を思い出すと、自分が情けなく感じた。


 ……。
 ……ごめん。信じなくて……。
 周りが何て言おうが、息子の俺だけは母さんの味方をしなきゃいけなかったのに……。
 母さんはそんな人じゃないって、言わなくてごめん。
 また夢に出て来ていいよ。怒っていいから。

 ……約束する。

 俺、強くなるから。




 花沢家の墓地があるすぐ隣の場所には、周りが緑に囲まれた大きな公園がある。
 まだ幼稚舎に通っていた頃、父さんや母さんと一緒に遊びに来た事があった。
 その一角に視線を移すと、あの時の事が思い出される。

 たしかあの辺りだ……。
 先祖への墓参りが終わり、シートを広げて3人でお弁当を食べた。
 陽だまりが温かく、他にもピクニックを楽しんでいる家族がいたから、季節は春とか秋だと思う。
 過ごしやすい季節だったんだろう。
 仕事の忙しい父さん。
 母さんも忙しくて、よく家を留守にしていた。
 けど休みの日などはいつも一緒に居てくれた。

 あの日も、母さんが握ったお握りを沢山食べていた記憶がある。
『類、まだ食べるの?』
 驚いた母さんの声に、俺は『うん』と頷いて手にした新しいお握りを頬張った。
『お前、妊娠している腹みたいになってるぞ』
『妊娠って何?』
『類のお腹の中に赤ちゃんがいるって事よ』
 父さんと母さんが俺のお腹を見て、笑顔で話すから希望を持った。
『俺、妹が欲しい。産まれる!?』
 真剣に言った俺に、父さん達は我慢が出来ないって風に大声で笑った。

 ……。
 ……。
 ……妊娠って。
 俺から妹が産まれるはずないのに……。
 子供の発想ってスゴイな。
 自分の失言を思い出すと恥ずかしくて、視線を思い出のある一角から足元に戻した。


 公園を横切り道路に出ると、近くで水が流れる音が聞こえる。
 ……川が近くにあるのか。
 川の音を背景に公園と墓地の方を振り返ると、いつかここに牧野を連れてきたいと思った。
 母さんならきっと歓迎してくれるような気がする。






 牧野との約束の放課後。
 母さんと牧野の父親が何であんな死に方をしたのかを父さんに聞くため、校門前で待っていた牧野を花沢邸の車に乗せて一緒に帰った。
 俺ん家を見た牧野は、「これが家?」なんて呟いている。
 玄関に入り、出迎えてくれる使用人に父さんが帰ってきたら知らせてくれと言づけた。

「俺の部屋にいく?」
「うん」
 久しぶりに入る自室だが、留守の間も掃除はしていてくれたようで、埃1つ落ちていない。
 が、愛用のパソコンはすべて時計塔へ入れてしまい、この部屋にはベッドと冷蔵庫と姿見の鏡だけだ。
 床に座るのは痛いだろうから、牧野にベッドへ座る事を進め、2人並んで腰を下ろした。
 牧野の実家で進が持っていたような暇つぶしのゲームなんてものもないから、自然と話をして過ごした。


「仕事でさ、前に他人の家に入った話してたじゃん。この家に忍び込むならどうやる? また塀を飛び越える?」
 って冗談半分に聞くと、牧野は狼狽えた。
「な、なんで考えている事が分かったの?」
「……忍び込む事考えてたんだ」
 いわゆる職業病ってやつか?
「か、考えただけだって。これは道明寺さんの家に行った時も自然と考えちゃったもん」
「司の家? 確かに司の家なら、俺ん家よりも良いもの置いてるよな」
 道明寺財閥は世界長者番付に載るような金持ちだ。
 けど、どこか面白くなくて、俺は拗ねた様子を隠さず話した。
「だ、だから一瞬考えちゃっただけだって。やってないってば」
「んじゃ、司ん家ならどうやるの?」
 俺が重ねて聞くと、牧野は暫く考える様子を見せた。

「……あそこは……犬がネックだから……」
 ああ、椿姉ちゃんにしか懐かない犬が庭にいた。
 普段はリードに繋がれているから襲われたりすることはないが、主人以外の気配を察したら間違いなく吠える。
 番犬としては優秀な奴だ。そんな犬の鳴き声を聞いて、屋敷の使用人が様子を窺いに来るだろう。
「攻略のポイントは犬?」
「……うん。でも一番確実なのは、あそこで働く事かな」
「働く?」
「あたしはやったことないけど、ヤスがよくやる手なの。探りたい企業なんかがあると、そこに就職して堂々と中に入る」
「そんな簡単に就職ってできるもんなの?」
「そういう場合は、別に社員じゃなくていいし。派遣とかバイトとか。外部の委託会社でいいの。中に入るための通行書が手に入ればいいだけだから」
「……ふーん」
 ……そうやるのか。
 そんな話を聞くと、花沢物産にも何人かどっかの企業のスパイが紛れ込んでいるような気がしてくるな……。

「花沢類の家は……見た感じ犬とかはいないよね」
「ん、動物は飼ってない。防犯カメラも司の家みたいにはないよ」
 全くないってわけじゃないが、来客が分かるようにせいぜい出入り口にあるくらいだ。
 庭全部に設置したりはしていない。
「なら、夜に庭から入って屋根の上で様子を見るところからかな……」
「屋根の上?」
「屋根の上って防犯カメラとかなくて住人からは以外と死角になる場所だし。ここは敷地が広いから周りからも見えにくい」
「よく登るの?」
「ん……よくって言うほどは……。って、別にあたしの本業は泥棒ってわけじゃないからっ!」
 この前はたまたまそういう依頼の仕事をしただけだから勘違いしないでって怒られた。
 別に泥棒だなんて思ってないけど……。
 ただ感心して、牧野の話を聞くのは面白いなって思っただけだ。

「屋根に上るとか……。そういう発想なかったからさ」
「……そっか……。でも昔の下町とかを歩く時は便利だよ。道は意外と入り組んでいたり狭かったりで通りにくいし、家が密集してるから屋根伝いに歩く方が早いの」
 迂回しなきゃいけない場所も、屋根の上なら真っすぐ行けるって感覚なのか?
 なんか昔テレビで見た、ねずみ小僧とかくノ一を思い出させるな。
 提灯持った侍が、忍者服の人を走って追いかけるやつ。

「花沢類もやってみる? 運動神経よさそうだから出来ると思うよ」
「……っ!」
 屋根の上を歩くのをか?
「あれって、中で住んでいる人には足音とかバレないわけ? 古い家だと「ミシミシ」とか家が軋む音がしそうだけど」
「んー。今のトコ苦情が来た事はない」
 ……。
 ……そらないだろ……。
 誰だって屋根の上を人が歩いているだなんて想像しない。

 俺は自分が屋根の上を歩く姿を想像してみた。
 ……決して歩きやすくはないだろう。瓦だとゴツゴツしていそうだし。斜めだし。
 バランス崩して足でも滑らせたら、落ちて怪我する可能性もある。
 でも……。
「……地面を歩くのとはまた目線の高さが違いそうだな」
「うん、全然違うよ。上った瞬間は視界が開ける感じ」
 牧野はその時の事を思い出しているのか、少し頬を高揚させ楽しそうに説明している。
 ……そうだろうな。
 周りを遮っていた壁がなくなるんだから。
 牧野の楽しそうな顔を見ると、彼女と一緒ならそんな散歩も悪くない気がしてくる。
「今度やってみる? 屋根の上デート」

「デ、デ、デート!?」

 俺が提案すると、少し頬の高揚って感じだった牧野が瞬時に真っ赤に変わった。
 可愛い……。
 そんな反応するだろうと思ってワザと「デート」って言葉を使ってみた。
「違う?」
「……っ!!」
「……」
「……」
「……だって変じゃない? 屋根の上でデートって」
「牧野が誘ったんじゃん」
「さ、誘ったって……。そうだけど……」
 牧野は真っ赤になったまま、俺の一言一言に反応する。
 ああ、何だろう。
 大事にしたいって思うけど、たまにこうやってイジメたくもなる。
 困った顔をする牧野を見るのが楽しい。
 俺ってSっけがあるのかな……。

 そんな風に思っていると部屋のドアがノックされ、父さんが帰ってきたと使用人から知らせが入った。


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