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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 80

桃伽奈



 横井 沙織side

 今日もクタクタ……。
 生活の為に働く毎日。
 本当はというと貯金もあるし、こんなに必死こいて働く必要はないのかも知れない。
 お母さんみたいに、働き過ぎで体を壊したら意味がない。
 でも今の私は働いている時が一番安らぐ。

 ……変な例えかな?
 クタクタだって思うのに、それが安らぐ時間だなんて……。

 でも理由はコレ。



「またやられた……」
 仕事を終え、1人暮らしをしている2Dkの賃貸マンションに帰ってきたら目にする光景。
 これで3回目だ。
 私が留守をしている間に、誰かが部屋の中に侵入して家探しをする。
 家の中をすべてひっくり返したような荒れ模様。
 今回はご丁寧に枕やベッドのマットレスまでナイフで切り刻み、目的の物を探していたみたいだ……。
 家の鍵を変えてもこうして犯人は勝手に人の部屋へ入って、探し物をする。

「……全く……。せめて片付けていけっていうのっ!」
 毎回、散らかった部屋を誰が掃除すると思っているのかしら。
 犯人が誰かは分かっている。
 広田だ。
 あんな大企業の人だから、多分手下? 子分? みたいな人がやっているんだろうけど……。
 警察に相談しても、取り合ってもらえないのは実証済みだ。


 どんなに探したって、あんたが欲しがっている物を無防備にこの部屋の中に置いとくわけないじゃん。
 私は無駄だと分かっていながら、帰ったばっかりの部屋に鍵をかけてマンションを出て行った。



 私には父親がいない。
 祖父母も。
 小さい頃、何度か父親や祖父母について質問した事もあったが、お母さんは絶対に口を割らなかった。
 だから私も自分には家族はお母さんしかいないんだと思う事にした。

 5年前、私は高卒で働く事を決め、就職先も内定した。
 お母さんと2人喜び合ったが、年末に末期がんが見つかり、あたしが卒業をする前お母さんは死んでしまった。ずっと痛みはあっただろうに、無理して働き過ぎたからだ。
 死ぬ間際、もう一生話す気はないんだと思っていたお父さんについて、初めて話してくれた。
 ただ、絶対会いに行ったらダメだとキツく言われた。
 何でだろうって思っていると、相手にはもうすでに奥さんが存在していて、私には半分血がつながった兄がいるんだと教えてもらった。
 お母さんは私を妊娠したとわかったら、父親の前から姿を消し、1人で産み私を育てた。
 自分の実家とも連絡を取らず、本当に1人で。

 つまり、私は不義の子だったのだ。
 それはお母さんも会いに行くなって言うだろうな……って、納得した。
 お母さんの死を一緒に悲しむことが出来る家族がいるのは心強いだろうが、いきなり存在を知った父親や兄とその時間を共有できるとは思えなかった。
 私は1人で現実を受け止め、お母さんが18年間守った秘密を受け継ごうと決意した。



 悪い事は続くもので、入社した会社が2ヵ月で倒産。
 これがまだ卒業前だったら、学校の先生も必死になって次の就職先はないかって一緒に探してくれたと思う。
 だがもう私には頼れる人がいない。
 何度かハローワークにも通ったが、なかなか採用通知は貰えなかった。
 失業手当も出ない状態で、ずっと職探しを続けるわけにはいかない。
 お母さんの入院ですでに貯金はなかったし、アルバイトにも限界がある。
 私は当面の生活費のため、夜の仕事を始めることにした。




 夜の仕事はやっぱりキツく、辛かった。
 そんな生活を4年程続けた時、常連客の1人にヘッドハンティングされた。
「私の店で働いてみないかい?」
「……え?」
「人と会うのは好きなんだろう」
「……はい」
 人見知りはしないタイプだし、人の話を聞くのは意外と上手だと思う。
 立ち回りだって悪くない。
 私がこの仕事を辛いと感じるのは、お酒が好きになれなかったからだ。
 20歳を過ぎ飲酒解禁になると、飲まされるアルコール。
「私の店もお酒は飲むけどね。でもここ程ノルマはキツくないと思うよ」

 甘い誘惑のような言葉に騙されているんじゃないのか……って言葉が頭に浮かぶ。
 でも正直この仕事は限界かも……って感じ始めていた時の囁き。
 私はなるようになれ……って気持ちで、彼の店で働く事にした。


 彼の店は、会員制の高級デートクラブだった。
 今までのお店は歓楽街にあったのに対し、ここはオフィスビルが立ち並ぶ繁華街。
 店構えもネオンなど一切なく、見た目は普通のビル。
 ただ一歩建物の中に入れば、一階の受付はちょっとお高めホテルのロビーのみたい作りになっていてお洒落である。

 高級……とつくからには、客筋はしっかりしており、大企業の社長など名の知れた人が楽しむ場所だった。
 体の関係を求められることもあるみたいだけど、私は最初の契約でそれは無しという事になった。

 その会員メンバーに父親の名前があるのを知ったのは、働き始めて2週間が過ぎてからだった。
 私が……父親の広田昭之助に会ったのは本当に偶然だと思った。






※これ誰? と思われているかと思います^^;
類君登場はもう少しお待ちください><


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