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種と蕾の先へ 84

桃伽奈



つくしside

 深い眠りに入っていたが、携帯のバイブのような音が耳に届くと、段々現実に引き戻されていく。
「……ん」
 意識が戻りつつあるあたしは、布団の中でモゾモゾと動いた。
 するとすぐそばで何か温もりがある。
 縫いぐるみではない固さのもの……。
 ……。
 何だろう……って暫く考えて、すぐ目が覚めた。

「あっ……」
 あたしが目を開けると、そこには上半身裸の花沢類がスマホを操作していた。
「起きた? おはよ」
 昨夜の出来事などまるで何もなかったかのように挨拶をされる。
「……お、おはよう……」
 挨拶は何とか返せたが、あたしの頭の中はパニック状態だ。
 昨日あたし達……。
「あきらからメール」
「……え?」
 さっきのバイブみたいな音っていうのは、まさしく布団の上にあった花沢類のスマホのバイブの音だったらしい。
 操作したスマホの文面をあたしに見えるように傾けながら、内容を教えてくれた。
「話があるから、今からここに来るみたい」

「……え? えええぇぇ!!」

 あたしが叫ぶと「うるさい、牧野」と、隣で寝ている花沢類は文句を言った。
 いや……。だってすぐって……?
 あたし裸なのに……。
 っていうか、花沢類も!!

「き、着替えなきゃ……」
 あたしは言いながら、手を伸ばしてベッドの下にある脱ぎ捨てた服を手繰り寄せる。
「花沢類も早くっ!!」
 裸を見られてもいいわけ?
 って、男同士だからそういうのは気にならないのか?
 で、でも下はマズいでしょ。
 上半身はいいとしても……。
 慌てるあたしの姿を見ている花沢類は、あくまでマイペースを保ち落ち着きを払っている。
「そんな慌てなくてもすぐには来ないよ」
「……すぐには?」
「門は俺が開錠しないと開かないし」
 言われて今日は日曜日で学園は休みなんだと気が付いた。
 でも来ることに違いはないんだし、いつまでもこの格好ってわけにはいかない。
 手繰り寄せた服を布団の中で何とか着こむと「器用だね」なんて感心される。
「いいから花沢類も服着て」
「ん」
 あたしが渡した服を手に取り、花沢類は起き上がって服を着た。
「ところでさ……」
「何?」
「体、平気?」
 ……体?
 言わんとする意味が分かり、途端に顔が真っ赤になる。
 いや、じつはさっきからずっと赤かったんだけど……その、さらに……だ。
「う……うん。平気」
 本当は腰に違和感があって、だるいような感覚なんだけど……。
 あそこも花沢類のものを受け入れるために思いっ切り広がった事を覚えているっていうか……。
 でもそんな事話せるわけないじゃんっ!!


 着替え終わった花沢類は、冷蔵庫からペットボトルを取り出し渡してくれる。
 キャップを開けて飲むと、体が欲していたのか、染みわたるように美味しかった。
 花沢類も同じように飲みながら、ポケコンを手にする。
 昨日、お母さんの遺言を2人で読んだ。
 知りたかったなのはな施設については何も書かれていなかったけど、お母さんが花沢類の事をとても大事に思っていたのが伝わってきた。
「ね……牧野。あきらが来るまでまだ時間あるし、部室棟に行ってみる?」
「部室棟?」
「ほら、夢子さんが言ってたじゃん。部室棟が当時のままなら、コネクターとかあるかもって……。だから取りに行こう」
「コネクター?」
 聞き返すと、ポケコンの側面を見せてくれる。
「ほら、ここに差すケーブル線のこと。上手くすれば、線でつないでパソコンと接続できるし」
「なるほど。じゃ、取りに行こう」

 花沢類の服を借りたまま、あたし達が初めて会った部室棟に向かった。
 何故か持っている部室棟の鍵……もう聞かなくても分かってしまった。花沢類はこの学園内なら、どこでも自由に出入りができるんだってことが……。
 と、とにかくその鍵で入り口を開け、すぐ横の事務室から部室の鍵を取ってくる。
 それを使ってママ達が所属していた情報処理部の部室の中に入った。
 閉鎖されているんだから当然かも知れないけど、中の様子は前回来た時と同じ印象だ。
 以前と同じようにパソコンを起動し、立ち上がるまでの間に教室に一つだけある事務用ロッカーの前にやってきた。
 横幅1m、高さ180㎝くらいのロッカーは、上半分が観音開きのガラス張りになっている。
 下半分は引き出しが4段。
 先ずは上の扉を開けると、パソコンやポケコン関係の本がズラリと並んでいる。
 花沢類はそれらの本には手を振れず、A4ファイルを開いた。
 背表紙には『ポケコンロボット大会96』と書かれていて、中には手書きの資料が挟まれている。
 それをパラパラと確認した後、他のファイルも見ていった。
 ファイルをすべて見終わると、次は下の引き出しを開けてみる。
 引き出しの中には当時の記録媒体であるフロッピーディスク、今でいうメモリーカードがケースに入れられ数十枚保管されている。

「あ、日報もこれに保管されているな」
 確認すると先日パソコンで見た日報が、一年単位でまとめられていた。
 他にもゲーム○○。ゲーム○×。って名前と共に、ゲームの製作者なのか人の名前が一緒に書かれて保管されている。
 ママのはあまりなかったけど、花沢類のお父さんの名前が書いてあるフロッピーは沢山見つけた。


 次の引き出しを開けると、ケーブルの線が数本出てくる。
「「あった!」」
 あたし達は同時に声を出した。
 ポケコンとパソコンを繋ぐ線。
「……あ、でもパソコンとは無理だな」
 折角見つけたのに、パソコンに繋げないと最初に気付いたのは花沢類だった。
「なんで?」
「ほら、よく見て。右も左も同じコネクターでしょ。これはポケコン同士を繋ぐもので、ポケコンとパソコンを繋ぐことは出来ない。パソコンにはこの形の差込口はついてないから」
「そうなんだ。でも一応もらって行こうよ」
 もしかしたら、USB変換アダプターが電気屋とかに売っているかも知れないし。あたしがそう話した時、パリンと遠くの方で窓ガラスの割れる音がした。

「何?」
 驚くあたしに、花沢類は「多分一階部分の窓ガラスが割れたんだ」と答える。
 な、何でそんなところの窓が割れるの?
 部室棟に来る時は、風は吹いていなかった。
 顔を見合わせると、遠くの方から足音が響いてくる。
 ……革靴?
「誰かが窓を割って侵入してきたの……?」
 日曜日に窓を割って入ってくる侵入者に、先生でない事は一目瞭然。
 まさか美作さん……?
 ってそんなわけないよね……。
 花沢類は立ち上がったばかりのパソコンの電源を、中を見ることなく落とした。
「牧野、何人か分かる?」
「……足音的には2人だと思うけど」
 2人って事に、昨日追いかけれた事を思い出した。
「まさか、昨日の人達?」
「……分かんない」

 段々近づく足音に、あたし達の緊張がピークに達した。


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Posted by桃伽奈

Comments 2

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2018/04/06 (Fri) 20:44 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  

な様
 訪問&コメントありがとうございます。

 こんにちは。いつもありがとうございます♪
 今回は、一線を越えた朝を迎えた2人をお届けしました。
 79.5話は……。毎度のことながら恥ずかしくてもう読み返せないので、無言のままでokです^^;
 80話からのはオリキャラが目立ち、類君が登場しない話が続くのが気になってって事で、本当におまけのつもりでしたw

 なんと明日からなんですねφ(..)メモメモ
 楽しみが1つ増えましたw
 公開をお待ちしております^^w
 お話を読んで下さりありがとうございました。
 桃伽奈
 

2018/04/07 (Sat) 14:53 | EDIT | REPLY |   

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