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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 87

桃伽奈



=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨



花沢開side

「なぁ、開。夢子来るかな?」
 腐れ縁というに相応しい、幼稚舎からずっと一緒の美作大河は自信なさげに俺に聞いてきた。
 英徳学園高等部3年の4月。
 恐らくこんな風にみんなと遊ぶのも、この一年が最後かも知れないと予感がしている。
 来年、大学部に進学したらそれぞれ家の稼業や学業に追われる日々になるだろう……。

「夢子って、お前の許嫁のか?」
「そうだ、他に誰がいる。前に言ったろ? この春、高等部に入ったって。……んで、俺が情報処理部に所属してるから、よかったら一緒にやってみないか? って誘ったんだよ」
 部活動中、俺は昨日思い付いたアイデアを再現するべく、パソコンに向かってプログラムを打ち込んでいるのに、横に座る大河はどこか集中していない……って思っていたら、許嫁の事を考えていたのか……。
 俺と大河が所属する情報処理部は、部室棟の2階のつきあたりにある教室だ。
 普通の教室より少し狭い部屋に、横に長い机が4列並んでいて、その上にパソコンが2台ずつ置かれている。
「来いって誘ったなら来るんじゃないか?」
「でもパソコンとか興味なさそうだしなぁ~」
 はぁ……って部室全体に聞こえる大きなため息を吐きながら、大河はウジウジ悩んでいる。

「ああ、もう。辛気臭いっ」
「あ、楓っ。そんな言い方するなよ」
 大河の愚痴の矛先が同じ学年……この英徳では「才女」と噂されている楓に移動して、俺は人知れず喜んだ。
「鬱陶しいって言ってるんです。大体部活を何だと思っているんですか。これも授業の一環として考えられないの? 部室を逢引の場に使おうだなんて……」
 前の席に座ってパソコンを触っていた楓は、後ろを振り向いて意見する。
 この2人は以前からこうだ。
 大河のどこかのんびりしたペースと楓のテキパキした性格は水に合わない。
「逢引……って、んな嫌な言い方するなよ」
 大河はたじろぎながら言い返した。
「その通りでしょ。部活に興味がない子が入部するんなら」
「新入部員だろ。教えてやればいいだろうがっ」
「その子に覚える気があるならね」
 「ふんっ」と鼻で笑った楓がそこまで口にすると大河は机を「バンッ」と叩き、部室に音が響き渡る。
 我関せず……で、ずっと黙っていた他の部員達も手を止め、不安そうな顔をして楓と大河の方を見た。

「お前、それは言い過ぎだろ。……夢子の事を馬鹿にするなら許さねぇぞ」
 地を這うような大河の低音の声には、さすがの楓も言い過ぎたのかとバツの悪い顔をする。
 かと言って、素直に謝れるタイプでもない。
 仕方ない……。
 面倒くさいが仲裁に入るか……って思ったら、俺の後ろに座っていた2年の女子が間に入った。

「まだ入部するかどうかも分からない人の事で揉めていても仕方ないんじゃありませんか? まずは入部してからかと思います」
 そう言うのは久我里佳子。
 この英徳学園に在籍していて彼女の事を知らない人はいない。
 成績は常にトップ。スポーツや芸事も卒なくこなし、自分に厳しく他人に優しい才色兼備を兼ね備えた女性。
 そして英徳学園理事長の娘。
 楓も才色兼備と言えるが、自分に厳しく他人にも厳しい。
 そこに人気を集める支持層の違いが出ている。

「俺も久我さんの言う通りだと思います」
「私も」
 同じ2年生は里佳子の意見に賛成した。そんな2人に後押しされ里佳子は更に話を続ける。
「でも楓先輩の仰ることも一理あるかと思います。どなたでも入部は歓迎しますが、大河先輩の許嫁の方に限らず部活動を真面目にされない方は、退部して頂く規定を作られてもいいかと思います」
「だけどそれだと、部員定数が満たなければ廃部じゃない?」
 里佳子のその意見に異議を唱えるのは、さっきは賛成していた2年の女子、九重美鈴。
 今年は俺達3年が4人いるからいいが、自分達が3年になった時の部員数に不安があるようだ。
「……というよりすでに一名、該当する人物がいますわね」
 楓の言葉に俺と大河は「あっ」っと気付いた。
 3年の西門裕二郎。
 茶道の家元の次男坊。
「アイツは仕方ないだろ。年が明けてから家の仕事を手伝ってるって聞いてるぜ。こっちに顔出す時間もないんだろ」
 大河はフォローに回るが、俺は知っている。
 仕事が忙しい……って言うのも正しいが、その半分は女遊びに精を出しているって事を。
 大河も知っているはずだが、楓達はどうだ……?
 このまま嘘を押し通せるか?

「それは本人に部活動を続ける意思があるかどうか、確認してからでもいいんではありませんか?」
 里佳子の案に一同納得をした。
「そうだな。本人がいない所で話さなくてもいいだろ」
 大河の締めの言葉でこの会話は中断となり、それぞれ今までしていた作業を開始しだした。



 そんな俺達のやり取りも知らず、部活説明会を聞き終えた新1年生達は各々興味のある部活へ顔を出し始める。
 そして俺達情報処理部にも、大河の許嫁である西条夢子とその友達、鍋島千恵子。もう一人藤田という男子学生が入部した。

「大河さんっ」
「夢ちゃん、よく来たね」

 ……夢ちゃん!?

 新一年生を笑顔で出迎える大河に、「夢子」じゃなかったのか……ってツッコミは、俺達2年と3年は心の中に留めた。

 そしていざ部活動が始まり、当初の夢子はパソコンに興味なさそうだったが、大河が熱心に教え彼女も覚えようと必死に勉強していた。
 男子の藤田は元々好きだから入部した口で、今2年生が中心に取り組んでいるポケコンを使ってロボットを動かすプログラム作成メンバーに加わった。
 そして夢子が大河と2人の世界に入り、1人退屈そうにする鍋島千恵子には、
「鍋島さん、これやってみる?」
 と、里佳子が声を掛けながら、近くの使っていないパソコンの電源を入れた。
「……え?」
「ここに座って?」
「はい」
 パソコンの前に座った千恵子に、里佳子はフロッピーを入れて、
「簡単なゲームよ。……んん。ゲームって言っていいのかな……。簡単な性格判断をするやつなの。やってみて」
 笑顔で話す里佳子に、頬を染めながら千恵子は「はい」と返事をしてパソコンの触り方を教わり問題を解いていく。
 出される問題10問をYES、NOで答えていき、最後にあなたはこんなタイプです。って判定が出るやつだ。


「うわぁ……」
「ふふ、当たってる?」
 どうやら結果が出たようだ。
「はい……。当たっているような……ちょっと違うような……。負けん気は強い方だと思うけど、流されやすいし……」
 まぁ、性格判断なんてそんなもんだろうと俺は思った。
 その結果を聞いた里佳子は嬉しそうに種明かしを開始する。
「これね。去年1年生の時に、私がこの部に入って初めて作ったものなの」
「ええ!?」
 そうそう……俺をはじめ、当時所属していた部員全員がやらされたゲームだ。
 新入部員が初めて作ったプログラムっていう事で……。
「作るのはすごく簡単なのよ。これはフローチャートって言ってね……」
 と、里佳子はプログラムを作る時に使用する流れ図のようなものを千恵子に見せながら、このゲームがどのように作られているのか詳しく説明していく。
 そんな風に1人あぶれていた千恵子は2年の里佳子が自然とお世話をするようになった。



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