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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 92

桃伽奈


=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨




花沢開side

「女って分かんないな……」
 ボソッと呟いた俺の言葉を耳ざとく聞いていた友人2人の美作大河と西門裕二郎は身を乗り出した。
「おっ。何かあったのか?」
「開から女の話が聞ける日が来るなんて」
 昼休み、カフェテリアで昼食を食べ終えた俺達は、今は誰もいない部室へやって来た。
 俺と裕二郎は作りかけのゲームのプログラムを入力し、大河は新一年生……主に夢子の為……の分かりやすい説明書付きの教材みたいなのを手作りしていたのだが、俺の呟きに2人は作業していた手を止め、俺の周りに集まってくる。

 早く口を割れっという目線を向けてくる友人2人に、俺はなんて説明したらいいのか悩んだ。
 昨日、里佳子から見合いの話を聞いた。
 相手が広田だっていうことに、里佳子の結婚生活を思うと同情したのだが……。
 俺がそうであるように、里佳子も広田にはいいイメージを持っていないだろう。
 それくらいは俺にも分かる。
 分からないのは、叩かれた事だ。

「里佳子が困っていたから、裕二郎に相談しろって言ったら叩かれた」
「叩いた!? 里佳ちゃんが?」
「……だからお前の話は、はしょり過ぎだ。もう少し順を追って話せ」
 はぁ……とため息を隠さない大河に、裕二郎も呆れた声音で話した。
「何を俺に相談しろって言ったのさ」
「ん……」
 俺は言ってもいいのか悩んだが、この2人になら話しても里佳子は怒らない気がする。
 どのみち親が乗り気なら、見合いの席が設けられる事が周りにバレるのも時間の問題だろう。
 理事長の娘と生徒会長。2人ともこの学園では有名人だ。
「里佳子が今度広田と見合いするんだって。それで落ち込んでいたから、裕二郎に話せって言っただけ」
「広田って……まさか広田裕介?」
 聞き返す大河に俺は「ああ」と返事を返したが、裕二郎は「それで里佳ちゃんが怒ったわけね」と納得していた。

「何? 里佳子が怒った理由が分かるわけ? 理由は何だ?」
 っというか、怒ったから俺は叩かれたのか……。
「開はどうなの?」
 俺が裕二郎に質問しているのに、逆に聞き返される。
「どうって?」
「里佳子の事どう思ってる?」
「後輩」
 俺の答えに裕二郎はガッカリな顔をしつつ、更に質問を重ねてきた。
「今回見合いするって聞いて、何か心に響く事とかなかったのか? って聞いてんだよ!」
「心に響く……? ん……。……俺らが見合いするのはしょうがないことだとしても、相手が広田だってのは可哀想だと思ったな」
 だけど心に響くと聞いて思い出すのは、昨日走り去った里佳子を見て、胸が締め付けられるような感じになった事だな。これは何か恥ずかしいから黙っておくが。
「まぁそうだな……。広田か」
「見合いだから親同士って事だよな。英徳学園とイクイップメント広田……」
「医療関係か?」
「パッと思い付く繋がりはそれだよな」
 イクイップメント広田は医療機器や器具をメインに製造販売をしている会社だ。
 取引先相手としては、英徳大学病院も関係あるんだろう。
 最新の医療設備を常に取り入れていくのが大学病院だ。

「まぁ、親が決めた見合いを俺らがどうこう出来るってわけじゃないしな」
「そうだな」
 俺達はそんな答えしか出せなかった。







久我里佳子side

「よ、里佳ちゃん」
「裕次郎先輩!」
 昼休みがそろそろ終わるので、教室に戻ろうと廊下を歩いていたら声をかけられた。
 先輩は私に何か用事があるらしく、他の人の邪魔にならないよう廊下の端に移動する。
「さっきさ、開から聞いた。里佳ちゃんの事」
 それだけで、私の見合い話なんだと分かった。
「大丈夫か?」
 私を心配して会いに来てくれたんだと思うと、昨日から落ち込んだ気持ちが少し浮上した。
「はい。昨日は、急な話で気が動転していて……。今日の部活でちゃんと開先輩には謝ります」
「それは別にいいんじゃね? 鈍感すぎるアイツが悪いんだしさ」
「そういうわけにはいきません。ただの八つ当たりですもの」
「そうか……? ……全く、あの部活は鈍感なヤツが多いよな」
 先輩は大きなため息を吐いて前髪をかきあげると、私は「ふふ」って笑った。

 確かに色恋に興味がない、気づきにくいって人達が多い様な気がする。
 私が開先輩を……って事に気付いているのは、裕二郎先輩だけだ。
 ……先日の楓先輩も。
 楓先輩は大河先輩を特別に想ってらっしゃる。本人は気づいていないのかも知れないけど……。
 だから大河先輩が、夢ちゃんの肩を持つのを快く思っていらっしゃらない。
 でも楓先輩が自分のその気持ちに気付いていないなら、そのままの方がきっといいですわ。
 だって、大河先輩にはもう婚約者がいてどうにもならないんですもの。
 時間が経ち気持ちが風化されれば、楓先輩は素敵な人だし次はきっと上手くいくと思うわ。
 お互い支え合いながら夫婦になれる相手と結婚するような気がする。

「あの……里佳子……」
「「……?」」
 後ろから遠慮がちに声をかけられ、あたし達は振り返った。
 同じ部活、情報処理部2年の九重美鈴が私とは目を合わさない様、俯きながら声をかけてきた。
「……あ」
「私、今週は家の用事で部活に参加出来ないの。楓先輩に伝えてくれる?」
「う、うん」
「……それじゃ……。裕二郎先輩、失礼します」
「ああ」
 終始俯いた状態で用件を口にした美鈴は、私と裕二郎先輩の横を通って自分の教室に向かった。
 瞬間、ふわりと髪の毛が揺れ、香りを感じる。
 シャンプーじゃない……。
 その原因に気付き、少し浮上した気持ちがまた落ち込んだ。
「……この匂い、白檀(びゃくだん)か?」
 同じように香りに気付いた裕二郎先輩が眉をしかめた。
「美鈴は……お香を焚くのが好きなんです。心が落ち着くんですって」
「……ああ」
 敏い裕二郎先輩はそれだけでなぜ美鈴がお香を焚いたのか気づいた。

 美鈴も私の見合い話はすでに知っているのね。
 恐らく広田先輩から……。
 2人が付き合っていると気付いたのは、もう半年以上前だった。
 広田先輩は美鈴に別れ話でもしたのかな……。
 ううん。してなくても、好きな人が他の女とお見合いするなんて聞いたら、心穏やかじゃいられないよね。

 美鈴は髪にあんなに匂いが移るほど、お香を何度も焚いたのね。
 ……こんなお見合い、誰も幸せにならない……。
 広田先輩からお見合いを断って下さればいいのに……。








※ 英徳学園には医者の息子とかもいそうなので、医学部に大学病院と勝手に想像したのですが、院長と理事長の関係とか……医療関係とか詳しくありませんので、おかしなところはいつも通り囲気だけ感じて、スルーして頂きたいなと思います<(_ _)>
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