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種と蕾の先へ 93

桃伽奈


=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨




花沢開side

 放課後の部室でまだ全員が揃う前……(俺と里佳子と裕二郎の3人しかいない時に)里佳子は頬を叩いた事を謝罪してくれたが、なぜ怒ったのかって理由は教えてくれなかった。
 どうしても話したくないらしく、俺がしつこくすると里佳子は困った顔をした。
 そこに、裕二郎が間に入ってくる。
「はい、そんな前らにプレゼント!」
「「……!?」」
「何が「そんな」だ?」
「仲直りに一緒に食事でもして来いよ。ここ、先週オープンしたばかりのレストランなんだぜ」
 話しながら裕二郎が手渡そうとするのは、とあるレストランの招待券だった。
「これ、お前が今日のデートで使うための物じゃないのか?」
 裕二郎が女の子と出かけるために用意した物に違いないと思い、俺は聞いてみた。
「そうだけどな。向こうから用事ができたってキャンセルになったしさ。2人で楽しんで来いよ」

 別に俺らに譲らなくても、他にも誘える女子は大勢いるだろうに……。
 裕二郎の真意が分からず受け取るか悩んでいると、隣にいる里佳子が不安そうな顔をして聞いてきた。
「開先輩、今日のご予定空いていますか?」
 予定……?
 特に何もない。
 部活が終われば家に帰るだけだ。
 ……。
 ……。
 だったら、たまには裕二郎の好意に甘えてもいいのか?
「……ん、わかった。行こうか」
 俺が返事をすれば里佳子は安心したように笑い、裕二郎に「よかったな。美味しいもんでも食べてこい」と言われ肩を叩かれていた。




『blessings.1000』

 放課後、里佳子と一緒に裕二郎に貰った招待券のレストランへやって来た。
 ドレスコードが必要な場所ではないので制服のまま入れたが、他の客は正装している人達ばかりだった。
 入ってすぐ、少し薄暗い店内の壁一面に水槽がある。
「クラゲか?」
「すごい……。キレイ!」
 里佳子は目を輝かせ呟いた。
 水槽の中にはブラックライトに照らされたクラゲが優雅に泳いでいる。
 その水槽が出入り口以外の全て、部屋の壁4面にあり水族館の中で食事をするような感じになっていた。

 ブラックライトを映えさせるため、部屋の照明を落としているから、テーブル毎にテーブルランプが置かれている。
 その明かりを借りてメニューを開いたが、初めての店ということで俺達はシェフのおすすめコースをお願いした。
 客層がカップル中心のせいか、店内の雰囲気もロマンティックなムードになっており、如何にも裕二郎がデートに使いそうな店だなと思った。
 料理が運ばれ、テーブルマナーなど完璧な里佳子は優雅に食べ進めるが、キラキラ輝く瞳は水槽に釘付けだ。
「夢中だな」
 俺が呆れ半分に声をかければ、ハッと気づいた里佳子は慌てて謝罪した。
「あ、すみません。お行儀悪くて」
「いや、構わない」
 別に嫌な気分ではない。
 むしろ里佳子の気持ちが移ったのか、俺も心が浮かれている感じがする。
「素敵なレストランですね」
「……まぁ、味はまあまあだな」
 俺の答えに「先輩ったら……」と小さく笑った。
 そんな会話もテーブル同士が離れているので、周りの人には聞こえない。

「そうやって笑っている方がいいな」
「……!!」
 俺の言葉が意外だったのか、里佳子は驚いた目をしてこっちを見た。
 可笑しなこと言ったか……っと思い、自分で反芻するとかなり恥ずかしいセリフを口にした事に気付いた。
「……き、昨日、泣きそうな顔してただろ」
 慌てて付け加えるが、これだってかなり恥ずかしいセリフか……?
 やばい……。
 顔が赤くなるのを感じて、見られないように顔を下に向けた。
 それでも正面に座る里佳子の様子が気になりこっそり見ると、照れ笑いをして同じように俯いた。
 その姿が1人の女の子として俺の目に移り、心臓が大きく鳴る。
 昨日から色々な里佳子の表情を見ている。

 ……昨日も今日も、裕二郎じゃなく俺がさせている。

 思い起こせば、里佳子の事はずっと「理事長の娘」という枠に入れて見たいた気がする。
 俺だけじゃなく、生徒みんながそうだ。
 里佳子自身、ずっとそういう態度を取ってきた。
 才色兼備。生徒を導く、指導者のような存在。

 だが目の前にいるのはただの1人の女の子。
 泣いて笑って……。
 時には自分の感情をもてはやすこともある、ただの……。

 ……女の子。

 そんな里佳子が広田と見合い……。
 親の決めた婚約。

「里佳子……」
 俺が真剣な声音で呼びかければ、里佳子も姿勢を正した。
「はい」
「見合いの事をどう思っている?」
「……どうって……」
「嫌か?」
 ストレートに聞く俺に、里佳子の顔がくしゃっと歪んだ。
 必死に我慢し、取り繕うとしている様子を見せるが、我慢できず涙が頬を伝い「……はい」と小さい声で返事をした。


 それで俺の気持ちは固まった。

 この見合いは潰す。

 何としてでも……。


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Posted by桃伽奈

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