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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 94

桃伽奈



=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨


花沢開side

「ぶっ潰すってな……開」
「どうやって?」
 昼休みにカフェテリアで食事をした後、また誰もいない部室へ移動し、西門裕二郎と美作大河に昨日決めた決断を報告した。
 里佳子と広田の見合いを潰す。
 そのために、力を貸して欲しいと。
「それはまだ考え中だが……」
「親が乗り気なんだろ? いくら里佳子が嫌だって言っても聞いてくれないだろうし、それを他人の俺達で覆すなんて出来るのか?」
 自分も親が決めた結婚相手の夢子がいる大河は、「相手が広田だっていうのは可哀想だけどな」と言いながらも無理だろうと否定する。
 裕二郎は「出来る」「出来ない」ではなく、別の事が気になったようだ。
「どういう心境の変化なわけ?」
「……変化?」
「見合いの話を聞いた一昨日は、俺に相談しろって里佳子を突き放したのに、今日は自分でやるから手を貸せだなんてさ」
 突き放した!?
 そんなつもりはなかったが……そうか。そう取られたから里佳子は怒ったのか……。
 どこか腑に落ちた俺は、今裕二郎に言われた変化について考えてみる。
 ……。
 ……そうだな。
「正直よく分からない。色んな感情が混ざっている感じだから。……でも強いて言うなら、里佳子が泣いたから。それを見て、俺が広田の物にさせるのが嫌だと思った」
 上手く説明は出来ないが、分かっている事を紡ぎ出すと裕二郎は「ふーん……」と納得した。

 なんだ?
 その物知り顔は……。
 俺には分からないことが、まるで裕二郎には分かっているみたいに見える。
 釈然としない顔を見せると、部室のドアがガラっと音を出して開いた。

「「「楓っ!!」」」

 部屋の中に入って来た楓は、後ろ手でしっかりドアを閉め、軽く俺達を睨みつける。
「全く……、何の話をしているんだと思ったら……」
「お前、聞いてたのか?」
「聞きたくて聞いたわけじゃありません。ドアが少し開いてたのよ」
 どうやら楓は俺達の話が聞こえ、入るに入れない雰囲気だったらしい。
「内緒話をするなら、もっと気を付ける事ね」
 言いながら楓は、この部屋に忘れ物でもあったらしく、机の上にあるノートを手にした。
「悪りぃ」
「この事、誰かに言うのか? 黙っててくれねぇか」
 裕二郎が謝り、大河が楓の気持ちを聞いている。
 楓は俺達3人の顔を順番に見て、大きなため息を吐いた。

「その事ですけど……「BAIRI」の力を使えばよろしいのでなくて?」
 楓の助言に俺達は「あっ!」と気付いた顔をする。
「そうか、「BAIRI」か」
「ああ、それは俺ららしいな」
「つまりイクイップメント広田の弱みを見つけるって事だな。里佳子の父親が見合いを断りたくなるような酷いやつ」

「って、楓?」
 お前も一緒にするのか? と思い聞くと、
「私も手伝います。あなた達だけじゃ心配ですもの」
 普段の楓からは想像できない言葉に俺達は全員驚いた。
「そりゃ助かるが……どうしたんだ?」
 いつもなら「私達の結婚は親が決めるもの。この家に生まれ、育ててもらった宿命……」とでも言って、反対しそうなものなのに……。
「そうね。普段の私なら絶対に取らない行動ね。私は自分の結婚相手が誰であっても受け入れる覚悟はあります」
「ならどうしてだ?」
 裕二郎が何か理由があるんだろ? っと訪ねると、楓はただ一言だけ返した。

「私が一番……あの人、広田裕介を嫌いだからですわ」

「「「……」」」
 般若の様に怒った楓の顔は、俺達に向けられたものではないはずなのに、3人揃ってゾクっと悪寒が走った。
 折り合いの悪い2人だったが、そこまで嫌っていたのか……。




 その日から俺達3年は1年2年には内緒で、この縁談が破断になるようなイクイップメント広田の秘密がないか調べ始めた。
 他の部員がいる手前、普段の部活動中には出来ず、みんなが帰った後に完全下校まで粘ったり、授業をサボって部室のパソコンに齧りついた。
 だが相手の会社が大きすぎるのと、何か弱点はないか……なんていう、漠然とした探し方になかなか作業は進まず、何も収穫がないまま里佳子の見合いの日がやって来た。


 日曜日。
 本来部活動が休みなのだが、後輩がいない今日は一日中パソコンが触れるとして、俺達は事務員に鍵を開けてもらいこっそり登校している。
「まだ見合いだ。気にするな」
「そうだ。婚約なら破談にすればいいだけだ」
 裕二郎と大河はそう俺を励ました。
 そんな中、楓がふと疑問に思ったことを口にする。
「……なぜ、里佳子の家とあの人の家だったのかしら」
「医療関係で繋がっているからだろ?」
「それは分かっていますわ。イクイップメント広田は日本でトップシェアを誇る医療メーカー。大学はその取引先。ですがどちらも資金援助を申し立てるような業績不振ではないし、大河さんのように親が特別仲良しというわけでもない」
「逃がしたくない取引先っていうなら、正解だがな」
 裕二郎の言葉に、大河が反論した。
「それだと、英徳側の久我家のメリットが見えない」
「医療器具を格安で手に入れられるとかか、最新設備を優先的に導入して貰える?」
 ……。
 ビジネスに俺達の結婚が関係あるのは分かるんだが、そんな理由で見合いをさせるのか……と考える。
 何よりまだお互い高校生だ。焦る必要はどこにもない。
 どうも決定打が弱い気がする。

「じゃあ、最近仲良くなった?」
 大河が言った言葉で、俺達は広田と久我の繋がりを中心に探す事に変更した。


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