Welcome to my blog

スポンサーサイト

桃伽奈

-
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

にほんブログ村 ランキング参加中♪
Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 95

桃伽奈



=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨



久我里佳子side

 カフェテリアでお昼を頂いた後、気分が優れない私は息抜きにお気に入りの場所へ行こうと廊下を歩いていると、情報処理部の後輩、鍋島千恵子……千恵ちゃんに声をかけられた。
「あっ、里佳子先輩!」
「こんにちは。これからお昼?」
「はい。今日はクラス当番なんで忙しくて、遅くなっちゃいました」
 お財布が入ったポーチを片手に、千恵ちゃんは「あはは」って元気よく笑う。
「そう。ご苦労様」
「……? 先輩、元気ないですね」
「え?……そうかしら」
 いけない。顔に出ていたかしらと気づき、私は慌てて何でもないのよって感じの笑顔を作る。
 体調が悪い訳ではない。
 ただ気分が乗らないだけ。
 それを見た千恵ちゃんは、首を傾げ小声で聞いてきた。
「もしかして見合いの事ですか?」
「……知ってるの!?」
「昨日、ホテルで先輩達とご両親達がお茶をしているのを目撃した生徒がいたらしく、朝から2人が見合いをしたって噂が広まってますよ」
 ……知らなかった。
 言われてみれば、今日はいつもよりみんなの視線を浴びているような気がする。

 見合いの席での食事は個室で行われたが、その後ホテルの中庭を散歩してロビーのオープンカフェでお茶を飲んだ。
 それを誰かに見られていたのね……。

「相手の方って、生徒会長ですよね?」
「ええ、そうよ。父の仕事関係で、親しくしているみたいなの」
「私、会長の事はよく知らないんですけど……先輩、嫌なんですよね」
 あまりにもストレートな聞き方に、作り笑顔が崩れ「ふふ」と顔の筋肉が緩んだ。
 力が抜けたせいか、私は千恵ちゃんに本音を話す。
「誰にも内緒よ……。私がそんな事思っているだなんて、相手の方に失礼ですものね」
 口の前で人差し指を立て内緒のポーズをとると、千恵ちゃんは辛そうな表情を見せた。
「……嫌なら……断る事は出来ないんですか?」
 それが出来るなら、見合いの席へ出向く前に実行している。
 彼女もそんな事くらい本当は分かっているのに、それでも聞いてしまったという感じだった。

「……」
「……」
「……」
 私が黙ったままでいると、何かを思い出した千恵ちゃんは「あっ!」と声を出し、持っていたポーチからチケットのようなものを取り出した。
「これあげます! 浮かない気分の時は、まずお腹いっぱいご飯を食べてエネルギーをつけないとっ!!」
 千恵ちゃんが手にしていたのは、先日裕二郎先輩にもらい、開先輩と一緒に行ったレストランの招待券だった。
「……これ」
「パパの会社の新しいお店です。まだオープンしたてだから予約客で埋まっちゃうんですが、それを持っているなら大丈夫ですよ。予約なしで入れます」
 そういえば千恵ちゃんの家は、外食産業を中心とした会社だった。
「ここってクラゲの水槽があるところよね」
 私が確認するように聴くと、千恵ちゃんは黒曜石みたいな黒い瞳を輝かせた。
「知ってるんですか? そうなんですよ。私がクラゲ好きだから、パパが水族館で食事をしているようなお店を作ってくれたんです!!」
「先日行ったのよ。すごく綺麗だったわ」
「ですよね。嬉しいっ! パパが年取ってからの子供だからか、私にすごく甘くて……。レストランの名前も『blessings.1000』で、私の名前から取ったんですよ」
「あ、本当だわ」
 気付かなかった。「千の恵み」とも読み取る事ができる単語。
「気に入ってくれたなら、気分転換にぜひもう一度行って下さい。先日は裕二郎先輩にもあげたので、今日は里佳子先輩の番です!」

 あのチケットは千恵ちゃんから回ってきたものだったんだ。
 開先輩と行った、思い出のレストラン。
 私はあの日のことを一生忘れないんだろうなって思う。
「ありがとう」
 お礼を言うと、「じゃ、お昼ご飯食べてきます!」と言って、元気よくカフェテリアの中へ入っていった。
 私も持ち歩いていたポーチに貰ったばかりのチケットをしまい、当初の予定通りお気に入りの場所まで足を運んだ。






花沢開side

 最近よく里佳子を見かける。
 今もそうだ。
 昼食を食べ終え部室棟へ向かう途中、里佳子が時計塔に入っていくのが目に入った。
 広い英徳学園の敷地で、1人の人ばかり目につくなんて……。
 ……あそこはよく行くのか?
 時計塔の中は壁に沿った螺旋階段があり、それを登っていくと展望台にたどり着く。
 校舎よりも高い場所にあるため眺めは良いが、沢山の階段に一度登ればもういいって気持ちにさせ、生徒はあまり寄りつかない。
 1人で入っていったが、誰かと待ち合わせか?
 そう思って暫く眺めていたが、誰も時計塔に入っていく姿は見えなかった。

 その日から何度も時計塔に1人で入っていく里佳子を見かける。
 というより、カフェテリアで昼食をとった後、いつも行っているんだと分かった。








久我里佳子side

 お気に入りの場所。
 この学園で唯一1人になれる場所。
 誰の目も気にならない、息抜きの場所。
 理事長の娘の仮面が外せる場所。

 いつものように展望台まで上がり、外の風に当たりながら腰を下ろす。
 ここは開先輩に言われて見つけた場所。
 本人には言った事ないけど……。




 私がまだ中等部2年の時、3年生の卒業式で在校生代表に選ばれ送辞を読んだ。
 式が滞りなく終わり講堂から出ると、みんなが別れを惜しむ。
 でも私の中の冷めた部分が、同じ学園の高等部に行くだけじゃない……とその様子を見てまう。
 幼稚舎の頃からそうだった。
 気がついたら「理事長の娘」として見られる事に、いつも冷静な自分を作らなければいけなかった。
 みんなが一喜一憂して学園生活を楽しんでいる中、表面上はそのように装っていても心の中ではいつも冷めたままその情景を眺めている。

 私は誰にも本心が悟られないよう、人がいない方へ歩いて行くとやがて裏庭に出た。
 中等部の外塀に沿って、ピンク色に色を染めたソメイヨシノが並んでおり、キレイ……と見惚れてしまう。
 今年はタイミングよく、卒業式が満開となった。
 その瞬間、春一番といわれる強風が音を響かせながら吹くから、私は髪の毛とスカートを抑えた。
 気持ちイイ。
 風が冬を吹き飛ばし、春を運んでくる。
 コートを脱ぎ捨てた季節は、陽だまりのように暖かい。
 風が止み、砂が入るのを防止するために瞑った瞳を開けると、胸に花をつけた男子生徒が少し先に立っていた。

 ……卒業生?
 向こうも私に気付き、お互い話ができる距離くらいまで近づくと、「理事長の娘」に戻り挨拶をした。
『本日は卒業おめでとうございます』
『……息抜きか? ……まぁ、そういう場所も必要だろうな』
『……え?』
 わたしの祝辞を無視して、言った言葉に胸がドキンと鳴った。
『1人でいる時と、今では顔が別人だな』
 別人……。
 そんなにも違っていたのだろうか……。
『あの……』
 自分でも気づいていなかった違いをもっと聞きたくて声をかけたが、彼はもう興味が失せたのか用件を口にする。
『さっき、向こうでお前の事を先生が探してたぞ』
『……あ、ありがとうございます』
 お礼を言い、私は講堂に戻った。

「息抜きか?」と聞いてきたって事は、私が「息苦しい」と思っている事に気付いたって事だ。
 誰にも気づかれた事がない、私の冷めた心。
 その瞬間私の心が熱を持った。
 胸が高鳴り、彼の事ばかり考えてしまうようになった。

 それが私と花沢開先輩の出会い。
 話をしたのはそれだけ。
 本人もきっともう覚えていない。
 彼を追いかけて高等部で情報処理部に入った時、私とは初めて話をするような顔をしていた。



 あの時から私はこうして、自分が息抜きをできる場所を学園で見つけ、通うようになった。

 
 展望台で力を抜いている時に、下から誰かが上がってくる足音が聞こえる。
 ……?
 誰だろう……。
 滅多に人は来ない場所なのに……。
 私は「理事長の娘」の顔に戻すと、1人の男子生徒がやって来た。

 あ……。
「広田先輩……」


関連記事

にほんブログ村 ランキング参加中♪
Posted by桃伽奈

Comments - 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/04/24 (Tue) 15:14 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  

凹様
 訪問&コメントありがとうございます。

 はじめまして。こんばんはw
 この度はご連絡ありがとうございます♪

 ド素人な私なのに、過分なお言葉ありがとうございます><;
 単純なので、褒められると調子に乗っちゃいそうになります^^;
 が、自分はまだまだこの世界では末端……。
 多くの大先輩の中に自分の名前が同じように入っているのが、大変心苦しく恐縮している次第であります;;
 本来ならとても有難い事なのですが、可能でしたら私の紹介は外して頂けますでしょうか?><;
 嬉しいと思う反面、やっぱり恥ずかしい気持ちの方が大きくて……;;
 (↑小心者です;;)

 私の旦那も実は転勤族です。あと何年この街にいるかな~なんて、2人でよく話しております。
 どんな街も「住めば都」w
 これからも期間限定の自分の街を楽しみたいと思います♪

 ブログの方は今後ものんびりまったり、マイペースで進めて行きたいと思っておりますw
 お話を読んで下さりありがとうございました。
 桃伽奈

2018/04/24 (Tue) 23:57 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/04/25 (Wed) 10:22 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  

凹様
 訪問&コメントありがとうございます。

 連絡ありがとうございますw
 凹様のサイトへ伺うと、本当に花男2次が好きでいらっしゃるんだなって伝わってきて、同志がいる事に嬉しく感じております♪
 この度は、私のようなド素人のブログに声をかけて下さり、本当にありがとうございました><;
 これからも妄想が続く限り、類君を幸せにしていく所存であります^^
 同じ花男好きw
 これからもブログを盛り上げて行けたらいいなって思います♪
 お忙しい中、ご報告ありがとうございました。
 桃伽奈

2018/04/26 (Thu) 00:07 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。