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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 96

桃伽奈





=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨


久我里佳子 side

「広田先輩……」
「なんだ? 1人か?」
 広田先輩は話しながら近づいてくるので、私はその場に立ち上がった。
「お前がこの中に入っていく姿を見たから、てっきり花沢でも中にいるんだと思ったがな」
「……風が気持ちいいので、あたりに来たのです」
 何故ここで開先輩の名が出るのか疑問に思ったが、指し障りのない答えを言うと、広田先輩は横に立って景色を眺め始めた。
 このまますぐここを立ち去りたい気持ちで一杯だが、良い口実が見つからない。
 仕方なく、私も同じように外に視線を移した。


 広田先輩との見合いは、話が弾まなかったが滞りなく終わった。
 同じ学園に通い、お互い見知った間柄の私達の姿を見て、両親は話が弾まないのは改まった席では緊張しているからだろうと決めつけていた。
 見合いが終わってからも先輩から断りの話は聞いておらず、両家が乗り気という事は、このままなし崩し的に婚約者になるんだろうか……と考える。
 そしていずれは結婚……。
 顔に出さないよう努めながら景色を眺めていると、横に立つ広田先輩が話しかけてきた。
「板挟みは辛いか?」
「それは先輩もでしょう? ……美鈴ちゃんはずっと部活を休んでいます」
「そういう意味ではないんだがな」
 先輩はフッと笑った。
「……?」
 ではどういう意味なのかしら……。
「美鈴とは別れる方向で話はついている。余計な心配はするな」
「わ、別れるんですか?」
「見合いをして結婚の意思を示しているのに、他の女と付き合うわけにいかないだろ」
 そ、それはそうだけど……。
「でも……それでは広田先輩や美鈴ちゃんの気持ちは……?」
 個人の感情を無視して本当にいいんだろうか。
 だけど私の言葉を聞いた広田先輩は感情を見せない冷めた瞳をした。
 ……。
 ……怖い。
 ああ、私は先輩のこの瞳が一番苦手なんだ……と思った。

「里佳子、お前まで愚かな事を言うな。……所詮、自分以外はすべて道具だ。お互いそう考える家に生まれたんだから諦めろ」
「……っ!!」
 広田先輩の言う事はよく分かる。
 私だってもう諦めているもの……。
 でも、頭で理解は出来ても感情がついていかない。
 それが愚かな事だっていうの?
 お前までって事は、恐らく美鈴ちゃんも私と同じ事を先輩に話したんだ。
 別れ話をされて……。
 髪の毛に匂いが付くほど、お香を焚いて心を落ち着かせようとしたに違いない。


「なんだ。やっぱり花沢は来たじゃないか」
「え?」
 広田先輩が入口の方を見て言うので、私もつられて見ると開先輩が立っていた。
 ……。
 ……なんで……?
 そう思いながら開先輩を見ていると、隣に立つ広田先輩の掌が私の頬に触れた。
 その瞬間、ぞわっと鳥肌が立つ。
 ……どうしよう。気持ち悪い。
 私の青ざめた表情を見た広田先輩は、耳元で囁いた。
「今はまだいい。結納を交わすまでは、花沢との逢瀬でも好きに楽しんでいろ」

 ……え!?
 先輩は私の気持ちに気付いている?

 心臓が大きくなり、私が言葉を発する前に触れていた掌が離れ、広田先輩は開先輩の横を通って階段を下りていった。
 呆然と後ろ姿を見送っていると、開先輩が私に近づいてくる。
「……」
「……」
 触れる少し手前で止まった開先輩は、心配そうに私を見下ろした。
「大丈夫か?」
「え?」
「お前、泣きそうな顔してる」
 ……あっ。
 まさか触られたのが嫌だったからなんて、そんな事正直に言えない。
 でもどうしよう……。
 少し触れるだけでもあんなに拒絶反応が出てしまう。
 結婚と言ったらそれ以上のことまでしなきゃいけないのに……。
 この先にある不安が、自分の意思とは無関係に涙をこぼしてしまう。





 花沢開side

 もう日課になってしまったかのような行動。
 カフェテリアで昼食をとり、里佳子の見合いを壊すための取っ掛かりを探すために部室棟へ向かう。
 その途中で、廊下の窓から里佳子が時計塔に入っていく姿を眺める。
 いつもは時計塔の中に入ったのを確認すると俺もそのまま部室棟に行くんだが今日は違った。
 広田の姿を見たからだ。
 ……まさかって思いながら窓から様子を眺めていると、広田も里佳子の後を追い時計塔に入っていった。

 何の用事だ?
 2人で待ち合わせか?
 先日見合いを終わらせた2人なのだが、俺が知らない所でこうして2人が会うっていうのが何故か癪に障る。
 里佳子は嫌がっていたが、もしかしたら心変わりでもしたのだろうか。
 それとも俺が気づかなかっただけで、毎日こうして時計塔で会っていたのだろうか。
 俺には分からない2人の繋がりみたいなのがあると思うだけで、居ても立っても居られず部室棟に行くのを中止し、時計塔へ足を運んだ。


 長い螺旋階段を登っていくと、出口の明かりが見えてくる。
 展望台にたどり着くと2人は並んで景色を眺めていた。
 先に俺の存在に気付いたのは広田だ。続いて里佳子は驚いたように俺の顔を見た。
 そして里佳子の頬を広田の掌が触る。
 瞬間、里佳子がビクっと怯えたようになったのを俺は見逃さなかった。
 ……嫌がっている。
 里佳子は喜んで広田と一緒にいるわけじゃない……。
 そう読み取ると、さっきまでの不安やイラつきは収まり、逆に広田への怒りだけが感情を占める。
 ……里佳子から離れろ。
 視線にそう込めて睨みつければ、広田は里佳子に何か囁いた後、展望台から降りていった。


 2人っきりになった俺は里佳子の近くまで歩いて行き、近くで里佳子の顔を確認すると青ざめていた。
「大丈夫か?」
「え?」
「お前、泣きそうな顔してる」
 そう言えば、里佳子は瞳に溜まっていた涙を一粒流した。


 最近は里佳子の姿がよく視界に入る……ではなく、無意識に姿を探していた。
 どこで何をしているのか気になり、毎日時計塔の中へ入っていく様子を眺める。

 ……。
 それってつまり……そういう事だろう。

 広田に里佳子を渡したくない。
 それだけではなく、里佳子を自分のものにしたい。
 自分の中でハッキリとした答えが導き出された。

 俺が里佳子の頬に、広田と同じように掌で触ると里佳子は赤い顔をした。
 嫌がっているわけではない。
広田との反応の違いに心から安堵し、今気づいたばかりの自分の気持ちを吐露する。
「里佳子を広田に渡したくない」
「開先輩……」
 里佳子は頬を染めたまま、また瞳に涙を浮かべた。
「俺が何とかするから、待ってろ」
「……はい」
 自分にプレッシャーをかける意味も込め宣言すると、里佳子は静かに頷いた。
 素直な返事を聴き、俄然やる気が漲る。
 顔を近づけ触れるだけのキスをすると、里佳子は震えながら俺の制服を掴んで受け止めた。


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Posted by桃伽奈

Comments - 2

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2018/04/24 (Tue) 20:31 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  

な様
 訪問&コメントありがとうございます。

 こんばんは。いつもありがとうございますw
 類君もつくしちゃんも登場しない……思っていたよりも長すぎる過去編に恐縮しております><;
 もっとサクっと簡単にまとめたかったのですが……自分の力不足に落ち込みつつ……。
 最近では「早く類君が書きたい」という禁断症状が出始めております^^;
 
 「枯れ木に花を咲かせましょう~」のように、むやみやたらとバラまいた伏線も過去編で粗方回収しているんじゃないかなって思います。回収し忘れなどは……あったらごめんなさい^^;
 (↑物忘れが激しい私ですが、略奪愛の事は覚えておりましたww)

 今後もマイペースですが、最後まで頑張りたいと思います♪
 お話を読んで下さりありがとうございました。
 桃伽奈

2018/04/25 (Wed) 00:24 | EDIT | REPLY |   

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