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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 97

桃伽奈




=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨



花沢開side

「見つけた……」

 俺の呟きに、部室にいた全員……。大河と裕二郎と楓がパソコンの周りに集まってくる。
 ついに久我家と広田家を繋ぐものをハッキングし見つけた。

「ってか……これって何だ?」
 大河の呟きに、マウスをスクロールしてどんどん読んでいく。


『イクイップメント広田・谷本薬品 新薬共同開発』

※摂取2週間
 テスト映像を視聴後
 被験者A 残酷さに耐えられず発狂。
 被験者B 耳を塞ぎ、目を閉じて震える。

※摂取4週間
 テスト映像を視聴後
 被験者A 脈拍心拍数以上なし。落ち着きを見せる
 被験者B 脈拍心拍数以上なし。表情一つ変えず静かに視聴


 テスト内容は他にもいろいろあり、被験者もスクロールするたびにC、Dと増えていく。
「4週間で変化を見せるって……。いったい何を摂取したんだ?」
 大河の言葉に、それは俺も知りたいと探した。
 だが今開いたこのページには、結果だけで薬の名称は書かれていなかった。
「書いていないな。だけど表情があるって事は、マウス実験じゃないんだろ」
「……治験って事?」
 楓の言葉に裕二郎が付け足す。
「ああ。俺も詳しくは知らないけど、治験は病院で行われるもののはずだ。製薬会社などが新薬を開発した場合、研究室で出来る実験をすべて行った後、厚生労働省の承認を得て病院で実際に健常者、もしくは薬を必要としている患者に投与して、人へ使った場合のデータを取る」
「さすが、医大志望」
 大河が感心するように呟くと、裕二郎は「まだ何も習ってないっつーの」と言って続けた。
「確か開発側からのデータ改ざんなどが行われないために、治験はすべて病院へ委託って形になっているはずだ。その治験をクリアすると、市販薬として販売ルートに乗る」

 なるほど……。
 薬が売り出される流れは理解した。
 だが、これは何の病気の研究だ?
 残酷さに耐えられず発狂とあるが……病気の治療薬にこんな実験が必要なのか?

「……」
「……」
「……」
 俺だけでなく、他の3人も黙って考え込んだ。
 そして最初に口を開いたのは、才女である楓だ。
「まずはこの薬の名前を調べましょう。これが治験だと仮定して、すでに厚生労働省に届け出があるはずよね。それは裕二郎さんに任せるわ」
「俺!?」
 名指しされ、驚いたように声を出した。
「西門なら政治家関係との繋がりも多いでしょ」
 ビシっと言い放つ楓に、春に跡取り問題が解決し軽々しく家の名を使いたくないと思っている裕二郎は一瞬嫌そうな顔をしたが、
「……ああ。……わかったよ」
 と返事をして、すぐ調べるために部室を出て行った。


 残った俺達3人は、引き続きこの治験結果を調べていく。
 もしここで薬の名前や用途が分かれば、裕二郎が西門の名を使って動かなくても済む。
「……なぁ、開」
「なんだ?」
「谷本薬品って久我グループの1つだろ?」
「ああ。……社長は久我武文。理事長の弟で里佳子の叔父だな」
 大河の質問に、俺はパソコンを操作して谷本薬品の検索をかけた。
「だったらその叔父が、里佳子のお見合いの紹介者?」
 会社同士の関係で見合いをするなら、繋がりがあるのは父親の理事長じゃなく叔父の方だ。
 適齢期である、広田家の子供と久我家の子供の結婚。
「その可能性はあるが……それは理事長が関わっていない場合に限る」
「どういう意味だ?」
 大河は重ねて聞いてくるが、楓は気づいたのか「英徳大学病院ね」と言った。

「ああ……。裕二郎が言っていた、病院で行われる治験。これが英徳大学病院で行われているなら、理事長も知っている事だと思う」
「大学病院なら、新薬が委託される可能性は高いわね」
 医療器具を作る会社のイクイップメント広田と、薬を作る会社の谷本薬品が共同で開発した新薬を英徳大学病院で治験する。
 こう考えると、3つの企業が繋がる。
 俺の説明に大河は「成程」と頷き、楓は疑問に思っている事を口にした。
「でもどこにも英徳大学病院の名前が載っていないことが気になりますわ」
「そうだな。どこに依頼したかが書いていない。だからこの2社の繋がりに理事長が関わっていないとなると、見合い話は叔父から理事長に話がいき、それを里佳子が聞いたんだと思う。理事長も娘の結婚相手として広田は不足なしって思ったんだろうな」
 俺が言うと、2人は「ああ」と納得した表情を見せた。
「あいつ生徒会長やってるもんな。成績もいいし」
「書類の上では優等生なだけですわ」
 人間性は好きになれないと楓はダメ押しするが、生徒を書類でしか知らない理事長にこの真相は伝わらない。


 調べを進めると治験結果はどんどん出てきた。
 俺らはそれをすべてフロッピーディスクへ落とし込み、ついには薬の配合のようなものまで見つけた。
 そして裕二郎よりも先に、薬の名前を発見する。
 
 『ブルー・N・H』
 
 だがどの病気に使うのか……そういった事は書かれていない。
「書かれていないけれど、治験結果を見れば大体予想は出来るわね」
「ああ、精神安定系の薬だな」
 個人差はあるものの、薬を摂取するとおおよそ1ヵ月で落ち着きを取り戻す被験者がほとんどだ。
 少々の事では動じない心を手に入れる。
 ただこれには注意が必要なようで、多用摂取すると逆に精神のバランスが保てなくなる可能性があり、瞳の色素が薄くなるのが特徴である……と書かれている。
「可能性……?」
 精神のバランスが保てないっていうところに、俺は背筋が凍る思いをしたが「可能性」ならデータ上での予想だ。
 だが先を読み進めると、そういった結果を出した被験者が実際にいると報告が上がっている。

「これって……ヤバくないか?」
 大河が顔色を悪くしながら呟いた。
「ああ。……保てなくなるっていうのはどれくらいだ? 一時的なものですぐ治るのか?」
 声が震えそうになるのを抑え、俺も自分が疑問に思っている事を口に出す。
「治ったという記述は書かれていないわ。軽いものなら一時的だと考えられるけれど、崩壊の可能性もゼロではないのよね……」
 楓が一番落ち着いた口調で声を出すが、眉間には皺がよっていつもよりキツイ顔つきになっていた。
「そんなニュースは流れていないぞ」
「被験者のプライバシー保護のために、報道されていないかもしれないわ」
「だがこれを発表しないって事は、隠ぺいと取られても文句言えねぇだろ」
 そこまで分かった数日後、裕二郎が厚生労働省に届け出が出されているデータを持ってきた。


 俺達4人は机の周りに集まり、A4用紙にビッシリ書かれた薬の名前を探していく。
「……ないな」
「ああ」
 持ってきてくれたデータの中に『ブルー・N・H』の名前が載っていない。
「つまりは無許可で行っている?」
「それじゃ、違法じゃないの」
「だから治験結果が報道されないのかもしれないな」
「違法でも何でもいい。これが相手のウィークポイントだよな、開」
 裕二郎が俺に確認するので、頷いて答えた。
「ああ。これでいつものように「BAIRI」として警告が出来る」

 ……お前達の秘密は見破った。婚約を破談しろ。

 ……。
 ……。
 ……いや、これはおかしいだろ。
 「BAIRI」に秘密を握られるのは企業的には痛いだろうが、だからってそれと引き換えに婚約を破談に出来るものなのか?
 別問題な気がする。
 それに婚約破棄を立てにすると、里佳子の繋がりから「BAIRI」が俺達だと公表するようなものだ。
 そう結論付けたのは俺だけではなかった。

「よく考えると、これで破談は難しいわね」
「だな」
 楓がため息を吐くのに、裕二郎も頷いた。
 その様子を見た大河は「うーん……」と唸り、頭を触りながら発案する。
「じゃ、取り敢えず理事長に言いに行くか? 今回の両家の婚約は、この秘密事に対する結束のためって事だろ? けど無許可の治験は違法行為だ」
「理事長がこの件に関わっているかどうかも分かるわね」
「クロなら、俺らに秘密を握られたとして焦るだろうし、シロなら娘をそんな利用のされ方をしたと知って、黙ってねぇと思うぞ」
 もしかしたら騙されたと怒り、弟を戒めてくれるかも知れない。
「そうだな。目下の目的は、婚約の破断だ」
「そうね。理事長は今日学園にいるかしら?」
「駐車場には明らかな高級車が停まってたぜ」
「ならいるかもな」
 みんなで賛同し、フロッピーを手に理事長室へ足を運んだ。


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