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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 99

桃伽奈



=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨       




花沢開side

 夏休みが終わり通常授業が開始されると、クラスメイトの浮かれた空気も次第と落ち着きを取り戻し始めた。
 俺達情報処理部3年はそんな様子を横目に見つつ、HRをサボって放課後早めに部室へ集合する。
 1、2年が部室へ来る前に、話せることだけ先に話してしまおうと思ったからだ。

 長机に置かれたパソコンを起動し、椅子だけ移動して一か所に固まった。
 理事長に報告してから俺達は証拠探しを始めた。
 治験場所の特定はまだ出来ていなかったが、薬の成分みたいな物が書かれたデータ用紙を参考に現物が作れないか試してみる事にした。
 自分達で作るには知識が余りにもなさ過ぎたので、イクイップメント広田と谷本薬品が関わっていない研究機関に依頼してみる。
だが専門家の話では、それは体内に摂取するものではないとの返答だった。
「体内には入れられないのか? ドラックみたいに危険性があるから入れるなっていう忠告じゃなく?」
「ああ」
 大河に相槌をして、俺は研究機関から送られてきた報告書をみんなに見せた。
「私もドラックとかの類だとばかり思ってましたわ。注射で体内に入れたりするような……」
「だよな。普通、精神に異常を来すなんて、中毒性があるそういうもんだと想像するって」
 楓の考えと同じだと裕二郎が言ったところで、部室の入り口に人影が見える。
 俺は急いで机の上に出していた報告書をしまうと、ドアが開き1年と2年の部員が続々と部室に集まってきた。
 この話は後でな……と目配せをし「先輩、こんにちは」と挨拶する後輩達に挨拶を返した。


 部員全員参加の部活動。
 文化部にしてはなかなか優秀な感じがするが、ポケコンロボット大会が終わった9月は特にやる事もなく、各々自分の好きな事をやり始めた。
 大河は相変わらず夢子と椅子を並べて、パソコンを触っている。
 千恵子も本を見ながら自分のポケコンに何かを打ち込んでいた。



「あ、そういえば3年生はいつ引退するんですか?」
 1年の男子、藤田亨がふと疑問に思ったのか質問してきた。
「ん? なんだ? 亨ちゃんは俺らが部室にいるのが嫌なのか?」
 裕二郎は揶揄う相手が出来たというように目を輝かせ、亨の近くへ行き肩に腕を回した。
「……ち、違いますよっ。今日クラスの奴らと話してて。運動部とかは夏で引退しているから、情報処理部はいつなのかなって疑問に思っただけで……」
 焦りながら必死に言い訳のように話す亨に、裕二郎は増々楽しそうな顔をした。
「うちはうち、よそはよそだろ!」
「そ、そうですよねっ」
「卒業までいるぞ。何なら大学に行っても遊びに来てやる」
「え?」
 亨はそれにはどう答えていいものか悩んだ顔をした。
 そこで助け船を出したのは楓だ。
「それくらいになさいな。私達情報処理部は特に引退時期は決まっていなくて、去年の3年生もそれぞれだったわ。夏で辞める人もいれば、冬休みまで来ていた人もいたけれど……そうね。そろそろ部長の引継ぎはしてしまってもいいわね」
「だな。2年の誰がやる?」
 裕二郎の興味が後輩イジりから後継者選びに変わり、亨がホッと息をついた。

「里佳子でいいんじゃない?」
 2年の高岡流星が里佳子を時期部長にと推薦するのに、1年は「うんうん」と頷いている。
「私? 流星君がやれば?」
「俺性格的に人を引っ張っていくタイプじゃないし。1人で黙々とする方が性に合ってる」
「美鈴ちゃんは?」
「私はそんな気分じゃないから……」
「……? 具合が悪いの?」
 俯いたまま邪魔くさそうに話す美鈴の態度に、里佳子が心配そうに声をかけた。
「べつに……。他の部の人も、部長は里佳子がするって思っているんじゃない? 部長会議とかに私達が出ても、里佳子はどうした? って言われるだけよ」
「おい、その言い方……」
 棘のある言い方に、裕二郎が美鈴を叱責しようとするが、里佳子がそれを止めた。

「わかりました……。それでは僭越ながらみんなの推薦を頂けたんで、1年間部長を務めさせていただきます。未熟者でありますし、楓先輩のようにしっかりまとめられるか不安ではありますが、その時はみんなの力をお借りしたいと思います。みんなで先輩方に負けない良い部を作っていきましょう」
 里佳子の挨拶に部員一同が拍手を送った。
 挨拶を終え、ホッと息をついた様子の里佳子だが、どこか晴れない顔をしている。
 みんなが各々の作業に戻った時、俺は1人になった里佳子の隣に座りノートに『何か気になる事があるのか?』と書いて見せた。
 里佳子なら楓に負けない良い部長になれると思っているが、本人はそんな自覚がなく不安だらけなのかも知れない。
 だが里佳子の不安はその事ではなかった。
 『結納の日が決まりました』
「……っ!」
 驚いて里佳子の顔を見ると、笑顔を見せようとして失敗したように顔を歪めた。
 ……時間がない。
 早く証拠を見つけて破談にしないと……。


「……佳子……里佳子、……里佳子、里佳子……」

「「「……?」」」」

 俺の思考が急がねば……と里佳子の婚約の事で占められた時、近くでブツブツと里佳子の名を何度も呟く声が聞こえた。
「美鈴?」
 その呟きは段々声が大きくなり、部員全員が「何?」と不思議そうに美鈴の方を見る。
「……美鈴ちゃん?」
 里佳子が近くに寄り手を差し伸べようとすると、
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
 と唸り声のような大声を出して、立ち上がり手にしていたカッターナイフを振り上げた。
 刃が出ている先は、部室の蛍光灯でキラっと光る。
「……っ」
「里佳子っ!」
 俺は咄嗟に里佳子を抱き寄せ、美鈴から距離を取る。
 間一髪で美鈴が振り下ろしたカッターナイフは、里佳子を切らず空気を切っただけになった。
「やめろっ!」
「おちつけ!」
 裕二郎と大河が美鈴を羽交い締めし、カッターナイフを取り上げる。
 美鈴は「うわぁぁぁあああ!」と正気を失ったように叫び続け、素手でも里佳子に襲いかからん勢いで、2人の腕の中で暴れた。
「美鈴、どうした?」
「落ち着けっつーの!」
 美鈴の目は、親の仇でもあるかのように里佳子に向けられ、訳が分からず腕の中で震える里佳子に安心させるため力を込めて抱きしめた。
 他の部員達も顔色を無くし、成り行きを見守っている。

「「……あっ!」」
 その時、ある事に気付いた俺と楓は同時に声を出した。
 すると美鈴は突然ブラックアウトし、意識を飛ばす。
 大河達が支えていたから倒れて頭は打たずにすんだが、「養護教諭を呼ぶか?」って視線を裕二郎が俺に送ったと同時に楓が動いた。
 美鈴の両腕から注射の後がないか確認する。
「おい、楓?」
「なんだ?」
 美鈴の暴走を止めるために必死だった大河と裕二郎は気づいていなかったが、里佳子を睨みつけた美鈴の瞳は黒というよりも、グレーのような色に見えた。
 あの治験データにあった、精神に異常を見せた被験者。
 特徴は、瞳の色素が薄くなる。
 まさにそれに一致していた。

「ないわ……」
「何がないって言うんだ?」
 裕二郎が聞くと、楓は「注射の後よ」と答えた。
 それだけで瞳の色を見ていない2人も、何の事かピンときた。
「それじゃ、鼻から吸引するタイプなのか?」
「分からないわ……。でも美鈴の今の行動はまさにデータにあった通りだもの」

「……美鈴がその被験者……」

 俺達3年が言葉を失いその場に固まっていると、状況が把握しきれていない「1年と2年が何の話ですか?」と聞いてきた。
「説明は後でしてやる。……にしても、すごい線香の香りだな」
 大河が美鈴を見て言ったのを聞いて、裕二郎が訂正する。
「線香じゃなく、白檀って言えよ。……にしても、この前よりもキツくないか? それに白檀に混じって薄っすら香る甘い匂い……」
 そこまで言うと裕二郎が「あっ」と何かに気付いた顔をし、「芳香療法だ」と言った。



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