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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 100

桃伽奈


=1996年=

 情報処理部

 3年 部長   猿渡楓
    副部長  美作大河
         西門裕二郎
         花沢開

 2年      久我里佳子
         九重美鈴
         高岡流星
       
 1年      西条夢子
         鍋島千恵子
         藤田亨 


花沢開side

「「「芳香療法!?」」」

「植物から取り出した芳香を使う方法だ。昔から精油にして病気や外傷の治療に使われているし、香りは緊張を緩め精神的平衡を保てる効果がある。美鈴は香を焚くのが好きなんだろ?」
 裕二郎が里佳子に確認するように聞くと、訳が分からずとも頷いた。
「待ってちょうだい。お香って匂いだけよね? いくら嗅いだからといって、ここまで人体に影響を及ぼすものなの? 芳香療法ってアロマテラピーの事でしょ?」
 楓が自分の考えを口にするのに、裕二郎は冷静に答えた。
「匂いだけで効果が出るものを開発したとしたら?」
「「「……っ!」」」

「……その可能性はあるわね……」
 楓が顎に手をあて納得の表情を見せた。
 美鈴を大河と2人で支えていた裕二郎が、「俺、今からコイツん家に行ってくる。現物があるかも知れないだろ?」と言って大河に預けた。
 部室を出て行こうとする裕二郎を楓が呼び止める。
「待ちなさい。私も一緒に行くわ」
「え? 何で?」
「男性が1人で訪ねて、家の人が彼女の部屋に上がらせてくれると思っているの?」
「……あ」
 女を口説くのが得意な裕二郎なら可能かも知れないが、相手は娘を英徳に通わす親だ。一筋縄ではいかないだろう。
 結局2人揃って部室から出て行った。


「俺達はどうする?」
 大河が今後の指示を俺に訪ねた。
「美鈴が目を覚ましてまた里佳子に襲い掛かったら困るし、どこか別の場所に移動させないと……。とにかく理事長にこの事を報告だ」
 この際、理事長がクロだシロだとは言ってられない。
 この状況を目で見てもらい、美鈴をどうにかしないと……。
 それに彼女が、理事長が言う証拠の被験者だ。

「里佳子、今日は理事長学園に来ているのか?」
「え? さぁ……。あ、でも初等部の方に顔を出すような事は話していたかも」
「学園のどっかにいるって事ですよね? じゃあ、放送で呼びかけましょう」
 ずっと黙っていた1年の千恵子は、名案が浮かんだって顔をしたが、
「何て言って呼びかけるんだよ。生徒が倒れたから来てくれって言ったって、理事長自ら足を運ぶはずないだろ」
 2年男子の流星がそう上手くいくかって口を挟んだ。
 確かにそうだ。
 養護教諭と担任は来てくれるだろうが、校舎内に残っている野次馬生徒も詰めかける可能性が高い。
「……」
 ……それにあまり大きな騒ぎにはしたくない。
「私の名を使います。事情は分かりませんが、一刻を争うのでしょう? 父を呼んできますからお待ちください」
「頼む。あとで事情はちゃんと説明するから」
 俺の言葉を聞いて、里佳子は頷いて部室を出て行った。
「お前らもあとで理由は話すから、他言はするな」
 一応、口止めをすると全員が頷いた。




 暫くして里佳子は理事長と秘書の男性を1人連れて、部室に戻ってきた。
 倒れる前の様子を理事長に説明すると、
「……まさか、そんな事が……」
 と、理事長は青い顔をして呟いた。
「正直に言うと、俺達は理事長の事も疑っています」
「……私を?」
「あのデータにある治験が行われている場所。その場所が英徳大学病院ではないかと……」
「……成程な……」
 理事長は眉根を寄せた。
「……お父様、とにかく美鈴ちゃんを……」
「ああ。長谷川、すぐ入院の手配をしろ」
「はい」
 理事長は秘書の人に命じると、自ら美鈴を抱き上げ部室を出て行こうとする。
「理事長、俺がっ!」
 大河は自分が運ぶと名乗り上げるが、理事長はそれを断った。
「君達が疑っているのは分かるが、これは私があずかり知らぬところで弟達がやった事だ。……心配ならついてきなさい」
 弟達がやった……?
 理事長はあの治験に関与していないって事か?
 この場を逃れるための嘘ではなく……?

 でも自ら美鈴を抱いて廊下を歩いて行く理事長の姿は、本当に生徒を心配している教育者……親のように映った。



 理事長は美鈴を英徳大学病院のVIP患者が使う特別病室に入院させた。
 心電図や採血など、寝ている間にいくつかの検査を済ませたが、現時点ではどこにも異常は見当たらなかった。
 あとは目覚めた後の意識を確認し、更に詳しい検査をしていく予定になっている。
 俺達は隣に用意された、付添人の控室に集まった。
 理事長と秘書は美鈴の検査結果を聞くと、『用があるので席を外す』とだけ言って部屋から出て行った。
 ちょうど美鈴の家に行っていた楓と裕二郎も合流し、まだ詳しく話していなかった1年と2年の部員に、これまでに見つけたデータの事を説明した。


「それで楓達の方はどうだったんだ? 現物を見つけたのか?」
 俺が質問すると、裕二郎は首を振った。
「美鈴の家に行ったら、部屋の中は白檀の香りで充満していたが……。あれは心を落ち着けさせるってもんじゃねえわ。萎えさせるっつーの」
 口に手をあて、その時の匂いを思い出したのか気持ち悪そうに答えた。
「現物を探してみたけれど全て焚いてしまったのか、香の受け皿に灰しか残ってなかったわ」
「使用人の話だと、最近は家で発狂するみたいに声を荒げる事が多かったんだと。それでも香を焚くと落ち着くらしく、毎日のように部屋を閉め切って過ごしていたらしい」
 楓と裕二郎の話を聞き、俺は疑問に思ったことを聴いてみる。
「……美鈴はなんでそんなに香を焚いたんだ? やっぱり中毒性があるのか?」
 一度やったら止められない、クスリのようなものが……。
「そうだっ。裕二郎達も部屋に入って匂いを嗅いだんだよな? 大丈夫なのか?」
 大河が心配して2人を見るが、ケロリとした顔をしている。
「大丈夫ですわ」
「少なくとも、もう一度嗅ぎたいとは思わねぇわ。マジ臭かったし」
 なら中毒性はないって事なのか?
 それとも一度嗅いだくらいじゃ問題ない?
 俺達部員が「うーん」って悩んでいると、裕二郎と里佳子だけは複雑そうな表情を見せた。
「……」
「……」
「……なんだ? 2人には別の考えがあるのか?」
 裕二郎は「話してもいいか?」という目配せをした後、里佳子が頷いたのを確認し口を開いた。
「さっきも言ったが、ああいう匂い系には心をリラックスさせる効果があるんだよ。美鈴は広田と里佳子の見合いの話が出たあたりから、香を焚く回数が増えたと思う」
「なんで見合いと関係があるんだ?」
「……それは……広田と美鈴が付き合っているからだろ。恋人が他の女と見合いだなんて知ったら、心穏やかには過ごせないだろ」

「「「ええええぇぇぇ!!」」」

 広田と美鈴が付き合ってる?
 本当にか?
 俺と大河と楓は盛大に声を上げて驚いた。
 2年の男子、流星も目を見開いて驚いているが、1年だけは広田と親しい訳ではないしピンと来ない顔をしていた。

「美鈴、男の趣味悪いぞ。広田とって……」
「捨てる神あれば拾う神ありですわ」
 大河と楓の言い方も十分酷いと思うが、俺は否定しないでいた。
「……広田先輩は、美鈴ちゃんとは夏休み前に別れたと言っていました」
 里佳子は申し訳なさそうに話す。
 別れたと言っても、一方的に広田から別れを告げられたって事なんだろう。
 美鈴の中では、まだ消化できていない感情なんだ。
「だから今日、部室で里佳子に襲い掛かったって事か?」
「多分な。自分を抑えきれなくてって事だろう。本人がその事を覚えているかどうか、怪しいもんだが」
 ……。
 ……。
 裕二郎の言う通りだ。

 里佳子にまた危害を加えないか……。
 俺は今後の美鈴の事が気にかかった。


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