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種と蕾の先へ 103

桃伽奈



=現在2020年=

類side

 英徳学園の時計塔の中で、俺と牧野はあきらが持ってきてくれた朝食を食べながら過去に起きた事件について話を聞いた。
 父さんが言っていた、母さんの友達だという美鈴……。
 俺は立ち上がりパソコンの前に座ると、英徳学園のデータベースにアクセスを開始する。
 1996年の生徒名簿を開き九重美鈴を調べると、9月で自主退学になっていた。

「父さん達の在学中にそんな事件があっただなんて知らなかった」
 こうして学園データの中を探しても、そんな事件なんてどこにも書いていない。
 記録に残さなくても、人の記憶には残るんじゃないのか。
 こんな不祥事ともとれる事件。
 それこそ学園の七不思議のように、代々語り継がれてもおかしくないだろう。
「理事長が表沙汰にはならないようにしたらしいぜ。だから九重美鈴の事は、当時の情報処理部と広田生徒会長しか知らないらしい」
 あきらは先生達もどこまで知っているか……と呟いた。

 ……。
 ……。
 ……一度に色々な事を聞いて、頭の整理がまだ追いつかない。
 まだ他にも考えなきゃいけないことが沢山あるような気がする。
「牧野……」
 心配になってパソコン画面から彼女の方を見ると、混乱しているのが見て取れる。
 俺は牧野の隣に移動して座り直し、肩を抱いた。
「大丈夫?」
「あ、うん……。大丈夫」
 まるで過呼吸になるのを抑えるため、無意識に口に手をあて落ち着くような仕草をしている。
 肩に置いた手を腰に回すと、牧野は軽く体重を預けてきた。
 俺は安心させるためにそれをしっかり受け止め、頭の中を整理していく。

 元々は美作商事に送られた、なのはな施設の映像から始まった事だ。
 あの中に映っていた人物。
 なのはな施設の副所長と谷本薬品の水島常務。
 この水島常務が、1996年に薬を開発した人物だろう。
 そして映っていた名簿は、施設にいる子供達だ。

「あきら。俺達の親が殺された直後まで、美作商事はなのはな施設を調べていたんだろ?」
 11年前、美作の諜報員であった牧野の父親と、ヤスとヒロが調べていた事……。
「ああ。……親父は学校を卒業してからもずっと、治験場所となったところを探していたって話してた」
 ……やっぱりそうか。
 あきらの言葉を聞いて、口に手をあて俯いていた牧野が顔を上げた。
「そこが治験場所? だからパパ達はなのはな施設を調べていたの?」
「ん。そして恐らく、牧野の父親は証拠になるようなものを発見したんだろう。そこから美鈴って人が英徳大学に入院している事に繋がったんだ」
 俺が答えると、牧野は何かに気づき、顔色が悪くなった。
「……」
「……」
「……ヤスとヒロは……」
 少し震えるような声で話す牧野の考えも、俺と同じ答えを出したらしい。
「知ってたんだと思うよ。九重美鈴が使った『ブルー・N・H』の事とか」
「……っ!!」
「今思うと、ヤスが谷本薬品に潜り込んだのだって、知ってたからだよ。あの会社で薬に関する何かを見つけようとしたんだ。それが見つからないから、最後は内部告発をして警察を介入させた」

 相手は母さんを殺した時に警察に圧力をかけ、捜査させないようにした人物……広田裕介だ。
 証拠はないが、確信した。
 広田裕介は、牧野の父親になのはな施設の秘密がバレてしまい焦った。
 そのままにしておくと、あきらの父親にも情報が上がってしまう。
 それで牧野の父親と、その時一緒にいた俺の母さんを口封じのため殺した。

 谷本薬品の会社は富山県にあるから、あの時とは管轄が違うだろう。
 ヤスはそれに賭けて警察を動かした。
 最後の悪あがきとも取れるけど……。
 でも結果は何もなし。
 母さんの時と同じように警察に手を回されたか……。もしくは、『ブルー・N・H』関係の資料を全て隠す事に成功したか……。

「……また、ヤス達に嘘つかれたんだ。あたしには全部話すって言ったくせに……」
「俺の父さんと同じだよ」
「同じ?」
 俺を見つめる牧野の黒曜石みたいな瞳が、涙で潤んでいる。
 そんな悲しそうな顔しないで……って、気持ちで抱いていた腰を自分の方に引き寄せた。
「一昨日、父さんの部屋で一緒に話を聞いたじゃん。でも父さんは全部話さなかった……っていうより、きっと話せなかったんだと思う」
 あの時、まだ話していないことがあるんだと分かっていても、話す事を躊躇うような素振りをし、辛そうな顔をする父さんにそれ以上追及して聞けなかった。
「父さんもヤス達も、全てを話して俺達を巻き込ませていいのか悩んだんだよ」
「……」
 本当にそうなのだろうか……と、牧野から疑惑を残すような視線を受けると、あきらも「そうだと思うぜ」と肯定した。
「俺だって、親父からこの話を聞き出すのにすげぇ食い下がったもんな。何度もお願いしてやっと重い口を開いたって感じだったんだぜ」
 牧野は俺達の顔を交互に見て、「……うん」と頷いた。


「ま、ここまで知ってしまったら、もう引き下がれないけどな」
「だな」
 あきらと俺が決心すると、牧野も慌てて「あたしだって……」と混ざった。
「パパを殺した犯人を捕まえたい。……って、警察はあてに出来ないんだっけ」
「まぁ、そこはまた考えよ。俺だって真相を明らかにして、母さんの汚名を拭いたい。……でも他にも確認しなきゃいけないことがあるから、まずはそっちからだ」
 俺が言うとあきらも頷き、
「それで、今牧野が言ったヤスって誰だ?」
 と、質問してきた。
 そういえば知らなかったっけ……と思い牧野を見ると、父親が死んでからの自分の話をあきらに聞かせた。


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Posted by桃伽奈

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