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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 108

桃伽奈



つくしside

 横井さんと喫茶店で会った次の日、あたしと花沢類は預かったブローチを持ってヤスとヒロの家を訪ねた。

「お前はっ! 何であんな勝手な事をするんだ!?」
 うわ……っ。
 家に上がった途端、あたしにはヤスからの怒鳴り声が待っていた。
 どうやらあたしが勝手に、自分のGPS付きのピアスを横井さんに渡した事を怒っているみたいだ。
「だって、すごく不安そうな顔してたんだもん」
「だからってなぁ。あれがないとお前に何かあった時、助けてやれないだろうがっ」
 みたいじゃなく、怒っている……だ。
「それよりもヤスってば威圧感出し過ぎ。横井さん怖がってたじゃんっ!」
「俺は普通にしてたさ。殺気立ってたのは尾行してた奴らだ。気配が駄々洩れだろうがっ」
 それも気になったけど、もっと優しく接してあげてもいいと思う。
 間違いなく横井さんはヤスに怯えていた。

 そんなあたしとヤスのやり取りをリビングのソファに座り花沢類は黙って聞いていて、そこにお茶を持ったヒロがやって来る。
「はい。もう、そこまで」
 持っていたお盆をテーブルの上に置き、いつもみたいに手をパンパンって叩くんだと思ったら、音はヒロからではなく隣に座る花沢類から聞こえた。
「「「……っ!」」」
 花沢類……?
 3人の視線が花沢類に注目したが、当の本人は何食わぬ顔で
「一回やってみたかったし」
 なんて口走った。
 それに対しヤスは花沢類をギロって睨むが、特に気にした様子は見せない。
「頼もしいね。また頼むよ」
 と言ってヒロは笑った。


「牧野のピアスはさ、俺が新しいの用意するからそれつけて」
「いいの?」
 花沢類の提案にあたしは目を輝かせて聞き返した。
 新しいものが用意されるなら、ヤスだってもう小言は言わないはず。
「ん。例え保護者でも、牧野が他の男から貰ったピアスを付けているのは面白くない」

「「「……っ!」」」
「おい、つくし。本当にこの男でいいのか? この手のタイプはすげぇ嫉妬深いぞ」
 ヤスは花沢類を指差した。
 い、いいのかってどういう意味よ……。
 あたしが顔を赤くしていると、ヒロが「次の仕事までにはピアスの準備をよろしく」って頼んでいた。


「さて、本題に移ろうか」
 用意したお茶を飲みヒロが話を切り替えると、気温が-3℃下がったように世間話をしていた空気が張り詰めた。
「はい。言われた通り預かって来たよ」
 あたしはポシェットに入れていた、ブローチをテーブルの上に置いた。
 縦長で上半分がピンク、下半分が緑で色が違うバイカラーのトルマリン宝石。
 何度見てもキレイだなって思う。

「まず……つくし達は、これを広田が欲しがっている理由は知ってる?」
「うん。横井さんの話だと、亡くなった広田昭之助……お父さんに貰ったものだって話だよね。それを息子の広田裕介も、お父さんとの思い出があるから返して欲しいって……」
 あたしは喫茶店で横井さんが話していた、これまでのブローチに関する内容を思い出しながら話した。
「牧野、本気であの広田裕介がそんな殊勝な理由で欲しがっていると思ってる?」
「え? 違うの?」
 花沢類の方を見ると、あたしと目を合わせた後、花沢類はヒロの方を向いた。
 ヒロはその視線を受け止め軽く頷いた後、ブローチについて話し出した。
「調べてみて分かったのは、このブローチは「鍵」だって事」
「「鍵?」」
「トルマリン宝石っていうのは、温めると自ら電極を放つ変わった石なんだ。広田社長はその石の特徴を生かして鍵にした。入り口に宝石をはめ込むと、電力が流れてドアのロックが外れる仕組みになっている」
「どこの鍵?」

「イクイップメント広田本社、情報システム部の奥にある、社長専用のサーバールーム」

「「……っ!!」」
 先日、美作さんがあそこの中にすべてのデータが入っているんじゃないかと言っていた部屋……。

「何故そこの鍵を、亡くなった社長が本当の娘だとはいっても会社に関係ない人物に渡すの?」
 遺産分与の時、会社関係はすべて息子の広田裕介が継いだはず……と花沢類は聞き返す。
「理由は分からないけど広田昭之助は、亡くなる少し前にバイカラーのトルマリン宝石を1つ購入している。それを横井さんに渡したと推測される」
「購入したって事は、元々所持していたものじゃなかった?」
「うん、そう。娘に渡すためにわざわざ用意した物だよ。広田裕介は横井さんの宝石がなくても、元々あるものを使って出入りは出来る」
 ヒロの説明に、花沢類は「なるほど」と頷いた。
「えっと……つまり広田裕介は、横井さんが鍵を持っているっていうのが気に食わないから、宝石を取り返したいと思ってるって事?」
 2人の話を黙って聞いていたあたしは、解釈が間違ってないか確認した。
「ん。社長専用のサーバーなんて、会社の機密事項だらけだろうし……。広田裕介みたいに後ろめたいことだらけの人物なら、他人がそこの鍵を持ってるのは落ち着かないんじゃない?」
 花沢類は「間違ってないよ」とあたしの解釈を肯定してくれた。

 ヤスがテーブルの上のブローチを手にし、クイっと操作するとブローチの台座から宝石が外れる。
「ちょっとヤス、壊したの? 借りてるだけなのにっ!!」
「違うっつーの。簡単に外れる仕組みになってんだよ」
 「ほら」っと言って台座を見せてくれると、小さい突起が付いていて押すとはめ込んでいる宝石が外れるようになっていた。
「へぇ……」
 あたしが感心した声を上げるとヤスは、
「あの横井って姉ちゃんも、この仕掛けにはつくしみたいに気付いてなさそうだな」
「宝石が外れるって話はしていなかったからね。そして彼女の依頼内容は、広田裕介から宝石を狙われないようにして欲しいって事。これが鍵だって事も知らないようだし、ただの形見だとしか思っていない」
 ヒロも頷きながら話した。
「問題は、依頼内容の「どうやって狙われないようにするか」……だ」

 そうだよね。
 それが一番の問題だ。
 あんなに不安がっていたし、早く普通の生活が出来るようにさせてあげたい。
 あたしが考え込んでいると、3人の視線はあたしに向かった。
「……え? 何?」
 また無意識に考えている事が口に出していた?

「類君の考えは?」
「ん……。鍵じゃなくなればいいって思うけど……。でも俺個人の意見は、牧野にあまり危険な事をさせたくない」
「……そう。……鍵の効果を消すっていうのは、僕と考えが同じだね」
「お前な。嫉妬や心配もいいが、信用もしてやれよ」
「……」
 ヒロとヤスがそれぞれ花沢類に話した。
「鍵じゃなくなれば……ってどういう意味?」
 あたしが何か危険な任務をする計画なのかな。
 意味が分からず首を傾げると、ヤスはニヤッと笑い身を乗り出した。
「いいか、つくし。鍵っていうのは掛かっているから解除が必要になる」
「……?」
「ドアに鍵が掛かってなければ、この宝石は必要ないだろ」


「部室棟でパソコンやフロッピーを盗まれた時の仕返しだよ」
 花沢類は楽しそうに教えてくれた。

 その後、帰宅した進も交ざり、細かい計画を立てていった。







※ トルマリン宝石が温めれば電極を持つのは本当らしいですが、こんな使われ方をするのはただの妄想です^^;


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