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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 110

桃伽奈




横井沙織side

 エレベーターを降り、フカフカな絨毯が貼られている廊下を少し歩くと、高級そうなドアが見えた。
 秘書の人はドアの横にある操作盤で社員証をかざした後、暗証番号を入力する。
 操作盤がピっと音を出し、緑のランプが点滅するのを確認してドアを開けた。
 入り口が厳重そうな雰囲気にここが社長室かなって思ったけど、中は思っていたよりも質素な感じだった。
 女性2人がパソコンに向かって作業していたが、私達が入って来たのを見ると立ち上がりその場で一礼する。
「……?」
「ここは秘書室です。社長室はこの奥にあります」
 ……そうなんだ。
 綺麗な女性2人を見て、まるでドラマとかに出ている女優みたいだなって思った。
 顔も採用基準の一つなんじゃないって疑いたくなる。
 秘書室の机は全部で3台あり、あの誰も座っていない机は今案内してくれている男性の席なのかな。
 その席がこれから案内してくれる社長室の扉に一番近かった。
 社長室には秘書室に入るような鍵はかかっておらず、普通にノックをしてから秘書の人はドアを開けた。


 私達に気付き、中で仕事をしていた社長の広田裕介は高級そうな椅子から立ち上がった。
 促され中に入ると、秘書の人は「横井様とご友人の牧野様です」と社長の広田裕介に報告した後、部屋から出て行った。
静かにドアが閉められ、中には広田裕介と私と一緒に来てくれた牧野さんだけだ。
 ソファーに向かい合う形で私達は座り、最初に口を開いたのは年長者の広田裕介だった。
「久しぶりだね。元気かい?」
 余裕を見せるように、にこやかに話しかけてくる。
「元気」ってどういう意味?
 私の体調を気遣うような間柄ではないと思っていたのに。
 家に何度も侵入して家探してきて……。
 ……。
 まさか、それで私が精神的に参っていないかとかの「元気」なわけ?
 どれだけ嫌味なのっ。
「おかげさまで」
 そう考えると腹が立ち、相手のにこやかな笑顔には仕事で身につけた、にこやかな笑顔で返した。
 瞬間、部屋の気温が下がった気がするが、広田裕介は特に気にした様子は見せず話を続けた。
「隣の君は……牧野さんだっけ? 沙織とはどういう関係何だい?」
 来た。この質問。

「母が生きていた時に家族ぐるみで付き合いがあった近所の友達です。年下だけど私よりしっかりしているし、ついて来てもらいました」
 会社に入る前の事前打ち合わせで、『広田はあたし達の間柄を聞いてくるから、その時はこう答えて』と牧野さんに言われた通りに答えた。
 もちろんそんなのは嘘だし……。
 家族ぐるみで仲の良かった近所の子なんていない。
 でも私の過去をそこまで知らない広田裕介は納得してくれたみたいで「そうか。沙織がお世話になったね」なんて言っている。
 さっきからその「沙織」って呼ぶのがすごく気になるんですけど……。
「あの……名前」
「ああ、今更だが義妹だろ。苗字じゃよそよそしいんじゃないかと思ってね」
「……」
「母の説得も上手くいったから安心して欲しい」
 ……?
 母の説得って……。
 遺言開示の席で、私に罵声を浴びさせたあの奥さんが私を認めたって意味なの?
 にわかには信じられない……。

「ありがとう……ございます」
 ここは一応お礼を言って、「でも家に遊びに行くとかは勘弁してほしいですけど」と付け加えた。
 お母さんの遺言通り、もうこの人達には関わりたくないって気持ちが強い。
 広田裕介には早くブローチから興味をなくしてもらい、平穏に戻りたい。

 そんな風に思っていると、さっきの秘書の男性がコーヒーを持って部屋へ入って来た。
 私と牧野さんが会釈をすると、一礼してまた部屋から去っていく。
「冷めないうちにどうぞ」
 進められ手を伸ばそうとしたら、隣に座る牧野さんに掴まれた。
「……?」
「……」
 牧野さんはジッと広田裕介だけを見ている。
「はははっ。確かにしっかりしているお嬢さんだな。何も怪しいものは入れてないよ」
 苦笑いをした広田裕介は自分のカップと、私のカップを交換した。
 そしてそのまま砂糖もミルクも入れずに一口飲んで見せる。
「我が社自慢のコーヒーだ。ぜひ飲んでくれ」
「……失礼しました」
 牧野さんは謝罪をして私を掴んでいた手を放した。
 何か入っている……って? 牧野さんはよくドラマで見るような睡眠薬とかそんなのを疑っていたのかな。
 そんな不安になるような事を知ると飲むのを躊躇ってしまうが、これは広田裕介に出された方の分だし問題ないよね……。
 そう結論付け自由になった手でミルクと砂糖を入れ一口飲むと、奥行きが広く自慢する通りとても美味しいコーヒーだったが、牧野さんは手を付けなかった。

  広田裕介的には今日の私の訪問が、ブローチの譲渡か家を荒らすのを止めてくれって抗議か……そのどちらかだろうと考えていると思うが、私は本題のブローチの話はせず、会社に入った時の感想など、世間話をしながら社長室で過ごした。


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