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種と蕾の先へ 111

桃伽奈



ヤスside

『ヤス、横井さんは会社に入ったよ』
「ああ」
 つくしが渡した、横井が付けているピアスのGPSで位置を確認したヒロが、通信を入れてくる。
 同時に通信機から、会社の受付嬢に社長に会いたいと名前を名乗っている横井達の会話が聞こえてきた。


 調べた結果、イクイップメント広田本社のサーバーがある情報システム部は15階にあり、情報システム部の人数は全部で7人。
 この7人が全国の支社のサーバーも同時に管理し、本社の情報システム部の部屋の奥にある社長専用サーバールームの鍵の門番というわけだ。
 まず1人が今日、名古屋にある支社へサーバーの定期メンテナンスに行く。
 これは以前から決まっていた事で、俺達はもう少し門番を減らすため、昨日の深夜に福岡と大阪の支社にヒロと類がそれぞれサーバー攻撃を仕掛けた。
 どんなウイルスを作って送り付けたのかは知らないが、残った6人のうちデーター復旧のため朝一番で福岡に2人と大阪に2人飛んだという情報が入った。
 今日、本社に残っているのは2人のみ。

 横井にはアポ時間がお昼になるようにお願いした。
 昼食をとるため、社内の人間が一斉にそれぞれの部署から動き出す時間だ。
 ビジネススーツを着て会社の近くで張っていると、外で昼食をとる社員がビルから続々と出てくる。
 顔認証眼鏡をかけ、出てくる社員の中から情報システム部の人間を探した。
 暫くして、認証ファイルが目的の人物を探し出す。
「お、1人発見」
 人込みに紛れて昼食をとりに行く、情報システム部の男性を見つけた。
『慎重にね』
 耳からヒロの声を聞きながら俺はビジネスマンのフリをして歩き、情報システム部の男性の前に立つ。
「すみません。柳田さんですよね。少しお話したい事があるんですが」
 顔認証ファイルで名前を確認した俺は、名指しで彼に話があると呼びかける。
「はい……どなたですか?」
「ここでは通行の妨げになるので、あちらへ」
 そう言って先を歩いて行くと、警戒しながら後を付けてくる気配を感じた。
 人目が避けられるような路地に入り歩みを止めると、柳田も1メートル程離れて足を止めた。

「あの……何の用件でしょうか?」
「あなたの同僚の人に預かったものがありまして……」
 そう言いながら右手で背広のポケットに手を入れると、柳田の意識は俺のポケットに移動する。
 その隙をついて一歩踏み出し、左手で柳田の襟首を持ってこっちに引き寄せた。
 と同時にポケットに入れていた右手を出し、不意を突かれ未防備になった彼の鳩尾に拳を入れる。
「……うっ」
 柳田は呻き声をあげて意識を失い、体を俺に預けてくる。
「悪いな。用が済んだら返しに来るから、大人しく寝てろよ」
 聞こえていない相手に話しかけながら、俺は首から下げている情報システム部の社員証を盗み取った。

 社員証には顔写真も印刷されているが、機械が読み取るのは中の情報だけなので関係ない。
 俺は外出から戻ってきた社員のふりをして、イクイップメント広田の会社の入り口を通ると、まずトイレに入った。
 持っていたビジネス鞄から、手のひらサイズのカードリーダーを取り出す。
 それを使い社員証の磁気を読み取ると、中に入っていたデーターが全て家のパソコンの前にいるヒロへと届く。
『OK。番号わかったよ』

 ヒロのgoサインを聞いてから、エレベーターに乗って目的の情報システム部がある15階へと向かった。
 情報システム部のドアの前で、社員証をかざしヒロから聞いた暗証番号を入力すると、ピッと緑のランプが光り施錠が外れた。
 中に入ると、「何? 忘れ物?」と残っていた男性社員の1人がパソコンに向かったまま声をかけてくる。
 昼食を食べに行った柳田が戻って来たんだと思い込んでいる様子の彼のすぐそばまで素早く移動し「あっ」と俺の存在に気付いたと同時に手刀を浴びせ気絶させた。
「作業を開始する」
『了解』
 部屋の奥にあるドアの前へ行き、ドアの横にある操作盤の蓋を開いた。
 中には預かっていたトルマリン宝石を入れる窪みがあり、そこにはめ込むと操作盤の電源が入った。

「…………おい……」
『何?』
 俺が声をかけると、ヒロが返事をした。
「宝石を入れたら電源が入っただけで、鍵が開かなねぇぞ」
『え? もしかして暗証番号とか必要?』
「かもな。真っ暗なスマホサイズの画面だったのが、電源が入った事でメールを送る時のようなキーボードが表示されたわ」
 そんな情報は入っていないとヒロは呟くが、社長個人のものなら情報不足なのも頷ける。
 この部屋で仕事をする情報システム部の社員ですら、このドアを開ける事は出来ない。
「どうする? 柳田もここに残ってた奴もすぐ目を覚ますぞ」

 このままだと預かった鍵を使ってドアを開け、中の情報を奪い広田裕介に鍵の意味を無くさせるという作戦が実行出来なくなる。


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Posted by桃伽奈

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