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種と蕾の先へ 144

桃伽奈



つくしside

 時計塔でフロッピーを手に入れ、桜子さん達の車で英徳大学病院へ連れて行ってもらった。
 桜子さんはまだ仕事があるからと病院には付き添わなかったが、夜中だというのに入院の手続きはスムーズに進んだ。
 類は当直の先生と話があるとかで、あたしは先に1人だけ病室に案内される。
 そして案内された病室には着替えのパジャマが用意してあるのだが……それよりもその部屋だ。
 あたしは大部屋だとばかり思っていたのに、ここは個室。
 しかも、……なんか豪華じゃない?
 広さだって、あたしのワンルームマンションより広いし。
 このベッドのサイズもダブルじゃないよね。クイーンかキングってやつだよね……。
 見た事ないからよく分かんないけど……。
 案内してくれた看護師さんも部屋から出て行き、1人取り残されたあたしは入り口で固まってしまった。

 どれくらいそうしていたのか分からないが、暫くして先生と話し終えた類が病室に入ってくる。
「あれ? どうしたの? もう着替えてベッドで寛いでいるかと思ってたのに」
「えっと……。この部屋いくら?」
「……?」
 あたしは思わず類に訪ねてしまう。

 だって部屋にソファーがあるんだよ。
 いくら個室だっていっても、荷物を入れる棚だってロッカーというよりこれはもう家具だよね。
 事務用品じゃない。金持ちの家にあるような家具だ。
「あ、あのね。検査がどれくらいの日数かかるか知らないけど、この部屋一泊がすごく高そう」
「ああ、ここVIPルームだし」
 VIP……。
 病院にもVIPとかあるの?
 名前を聞いただけで、値段を尋ねるのに勇気がいる感じだ……。
「もっと普通の病室は空いてないの?」
「もう深夜だし」
 ……!?
「あ、そうか……」
 部屋に圧倒されて時刻の事をすっかり忘れていた。
 言われてみればそうかもしれない。
 ここには具合が悪くて入院している人達ばかりだ。
 夜中にゴソゴソとしたら、うるさくて眠れないよね。
「うん、わかった。大部屋じゃ、同室の人に迷惑だよね。今夜はここでお世話になるしかないか……」
「明日、朝一で検査だっていうから、もう今夜は寝よ」
 類は言うなり、欠伸をしつつベッドに入って行く。

 ……?
 ……え?
「類も一緒に寝るの?」
「ここ俺の部屋」
「そうなの?」
 あ、そっか……。
 類も頭の検査があるから一緒に入院するんだった。
 ならこの部屋なのも納得かも。
 だってあのF4の1人だし……。
「つくしも早くパジャマに着替えな」
 類は言いながらベッドの上に用意されていたパジャマを渡してくれる。
 何故か二着あり、もう一着を類が着ていた。
「え? あたしも一緒の部屋でいいの?」
「さっき自分で言ってたじゃん。この時間だと他の患者を起こすって」
 うん、言った。
 なら、今日はここでお世話になって一緒に寝ていいのか。

 あたしが着替え終わると、類はここにおいでって感じで招いてくれるので、素直に潜り込むとリモコンで部屋の電気を消してくれる。
 真っ暗になった室内で、類があたしを抱きしめてくれた。
「……ああ、やっとつくしが帰ってきたって実感」
 息を吐くように話す類の背中に、あたしも腕を回すとギュっと力がこもる。
「あはは。……ごめんね。遅くなって……」

 ……あれ?
 ……。
 そういえば、なのはな施設で会った時に『帰ったら、覚悟してね』って言われていたような……。
 それってそういう意味での覚悟なの?
「あ、あの……類?」
「ん?」
「ここでするの?」
 ここじゃマズいでしょ……。いくらなんでもっ!
 病室だよ!
「ん……」
 ……ん?
 「ん」ってなんだ?
 するって意味なのか?
 いや……迫られたら多分断れないんだろうけど……。
 でも……。
 だって……。

「くくくっ」
 あたしが1人焦っていると、肩を揺らして類が笑い出した。
「る、類!?」
「期待してるとこ悪いけど、今夜はしない……ってか、我慢する」
「……?」
「今はゴム持ってないしね。それにいくら鍵が掛かるって言っても、医者とか看護師とか、この部屋は誰でもスペアキーで開けられちゃうし」
「……」
「あと病室をラブホ代わりにしたら、杏子さんに追い出されそうだし」
「……え?」
 追い出されるっていうか……、杏子さん……?
「明日、杏子さんも見舞いに来るって言ってたから」
「……杏子さんって、……確か類のお母さんの妹で、現英徳学園の理事長?」
「そ。久我杏子。つくしに会いたいって言ってた」
「あたしに?」
 な、何の用事で理事長が!?
 まさか、学園に身体が弱いって診断書を提出している偽装についてだろうか……。
 類からじつは健康優良児だって聞いてしまったとかで……?
 まさか「退学」なんて事はないよね?

「つくし?」
「な、何かドキドキしてきた……」
「別に気負わなくていいって。いつも通りのつくしで」
「う、うん……」
 そのいつも通りって、どっちがいいんだろう……。
 健康優良児なあたし?
 それとも学園の姿である、病弱なあたし?
 いろいろ考えを巡らせてしまうが、類は眠いのか重くなった声で話した・
「もう寝よ。おやすみ」
「……お、おやすみなさい」

 不安が尽きることはなかったが、暫くして類の規則正しい寝息を聞くと瞼が重くなってくる。
 今日は疲れたなぁって思い出すと、いつの間にか眠っていた。



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Posted by桃伽奈

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