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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

種と蕾の先へ 145

桃伽奈



つくしside

 昨夜いろいろあり、寝たのは遅い時間だったにも拘わらず、朝の6時過ぎには目が覚めた。
 時間にすると4時間も寝れていないと思うのに、これもなのはな施設で毎朝早く起きていた習慣のおかげかなと思う。
 隣にいる類はまだぐっすりだ。

「類、起きて!」
「……」
 揺さぶりながら声をかけてもピクリとも反応しないが、規則正しい寝息にただ熟睡しているだけだろうと安心する。
 だけど寝る前に話していた、その理事長である杏子さんって人が来る前に、病室を移りたいんだけど。
 やっぱり会いたくないってのが、一晩寝て出した答えだ。
 会わなきゃ退学は逃れられるハズ。
 だから、病室へ訪ねてくる前に退散してしまえってことなのだが……。
 類が起きてくれなきゃ、あたしの本来の病室が分かんないじゃんっ!

「ねぇ。類起きてってば!!」
「……」
 さっきよりも大きく声を出すが、類に反応は見られない。
 ど、どうしよう……。
「あたし退学はヤダってば……。残りの高校生活、類と一緒に過ごしたいのに……」
 不安を口に出すと、涙が浮かんでくる。
 と、ドアを「コンコン」とノックする音がし、慌てて涙を拭いながら「はい」と返事を返した。

 看護師さんかなって思って返事をしたが、入って来た人物にあたしは固まった。
 黒のスーツスカートを綺麗に着こなし、髪のセットも化粧もバッチリの……以前、英徳学園の非常階段で類と一緒にいた女性が入ってくる。
 理事長の久我杏子さんだ。

 な、なんで?
 まだ早朝だよ……。
 病院の面会時間には早すぎない?
 せめて朝ご飯が終わってからとかじゃないの?

 目が合った理事長はニコっと笑顔を浮かべ、ヒールの靴音をコツコツと鳴らしながら、あたし達がいるベッドに理事長は近づいてきた。
「あら? 顔色が良くないわね。大丈夫?」
「……は、はぁ」
「もしかして起こしちゃった?」
「いえ……」
 起きていたって答えると、理事長はベッドに腰を下ろして、あたしのオデコに手を置いた。
「熱はないわね。……先にあなた達2人と話したいから、暫く病院の人には人払いをさせてるの。だから診察はちょっと待ってね」
 と言って、今度はあたしの左手を両手で握った。
 細くて長い指に、ほんのり暖かくて柔らかい。

「つくしちゃんよね。初めましてって、以前非常階段で会っているんだけど、覚えているかな?」
「は、はい」
「類の叔母で久我杏子です。よろしくね」
「……よ、よろしくお願いします」
 これから退学を言い渡されるのに、よろしくも何もあったもんじゃないよね。
 って、死刑勧告がこんなに早く来るなんて……。
 逃げれば勝ちって思ってたのに、逃げ損ねた。

「え? なんで泣いているの? どこか痛い?」
 もう一度目に涙が溜まってしまい、それに気づいた理事長は狼狽する。
 すると、寝ているとばかり思っていた横にいる類が「あはははは」と声を上げて笑い出した。

「「類!?」」

 な、なんで笑うのよ……。ってか、起きてたなら、早くあたしを連れ出してくれればよかったのに!
「わ、笑うなっ!」
 あたしが手を握っていない右手で、類の体を掛け布団越しにバシバシ叩く。
「だって……2人の会話が噛み合ってないし……くくくっ……」
「……?」
「噛み合ってないってどういう意味?」
 理事長もあたしと同じで、類の言っている事が理解出来ず聞き返した。
 類はまだ笑いが少し残った顔をしながら起き上がり、あたしの顔を見る。
「誰もつくしを退学にするなんて考えてないよ」
「……え?」
「つくしが「退学はヤダ」なんて言うから、意味が分からなくて目が覚めた。それですごく考えた」
「……」
「学園に提出した医者の診断書でそう思った? 書類を偽装したから杏子さんに退学を言い渡されるって」
 ズバリ当てられ、あたしは頷いた。
「大丈夫。杏子さんが今日来たのは、他の話だよ」
 類はそう言って、目線を杏子さんに移す。
「……そうね。今「偽装」とかあまり耳にしたくない単語を聞いた気がするけど……。そこら辺はあなた達で上手くやりなさい。私がここに来たのは記者会見についてよ」

 記者会見?
 って、あの記者会見だよね。
 テレビとか新聞とかが集まってやるあれ……。
「何の記者会見ですか?」
 オウム返しに聞くと、「『ブルー・N・H』について」と類が教えてくれる。
「昨日、父さんと一緒に美鈴って人のお見舞いに行った話はしたろ?」
「うん」
「ヤス達は全ての真実が明るみになるなら、その過程は俺に任せるっていうし、証拠が出揃った後どうやって広田の悪事を露見させればいいか、父さんに相談したんだ」
「……」
「それで出した答えは「大人に任せる」だった」

「……?」
 大人に任せるって……具体的にはどういう意味なんだろう。
 あたしが話の続きを待っていると、類の後を理事長が引き継ぎ、さらに詳しく説明してくれる。
「私が過去に英徳学園の生徒が『ブルー・N・H』を使ったと発表するの」
「それって、美鈴さんのこと?」
「ええ。美鈴さんのご両親にも許可を取ってるわ。もちろん彼女の本名は伏せるけど、過去に学園であった事件『ブルー・N・H』のお香について調べていたら、現在も使われている場所があるという事が分かったと暴露する予定よ」

 理事長の話を聴いていると、もう一度部屋をノックする音がする。
 今度は類が「どうぞ」と返事をし、類のお父さんが入ってきた。
 理事長はお父さんに向かって会釈をし、お父さんも部屋の中へ入ってきて目で答える。
 ベッドの横に立つと、「つくしさん、大丈夫かい?」とあたしに聞いてきた。
「……はい」
 どこも悪いところなんてない。
 けど昨日からみんなに何度も声を掛けられ、それだけ心配させていたんだなぁと気付き、今更ながらに心が痛んだ。
「お義兄さま、今つくしさんにこの後の記者会見について説明していたところです」
「ああ」

「……父さん、これ」
 類は言いながら、ベッドの上に昨日持ってきた鞄を乗せた。
 鞄の中を開け、『ブルー・N・H』が入った缶のペンケースを取り出す。
 受け取って中を確認するお父さんに、
「つくしと昨夜取ってきた。未使用の『ブルー・N・H』の原物」
 と、類が説明し、
「「取ってきた」って表現は問題だから、内部にいた子供が異変に気づき「持ち出した」って事にしましょう」
 と、理事長が訂正する。
 何か違うのか……?
 まぁ、内部にいた生徒……つまりあたしの事には間違いないんだけど……。

「あと司がおばさんから預かってきたマイクロSDカード。パソコンに繋いで中を見たけど、ここ10年の広田の動きが丁寧にまとめられた資料だった。時系列で『ブルー・N・H』を調べるのにきっと役に立つ」
「ああ。電話で楓から聞いている」
「フロッピーも回収してきた……。あと……」
 最後に、類はパパの腕時計を鞄から取り出す。

「「……?」」
 この話は聞いていなかったのか、お父さんと理事長は「何それ?」って顔をした。

 類は腕時計の録音を再生して、お父さん達にパパ達が死んだあの日の会話を聴かせた。


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