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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

花火(theme [fireworks])

桃伽奈


「ありがとうございました」


綺麗な所作で最後の挨拶をする牧野をそっと見つめたら、今日の日までの事が走馬灯の様に浮かぶのを感じた。

衝撃的な出会いから数年、俺達は立派とは言い難いが其なりの大人になっている。
司との幼い恋を終わらせた牧野は、実らないと云われる初恋を実らせて、いや、類の押し勝ちかな?

─牧野は、もうすぐ花沢になる

側でこいつ等の一部始終を見ていた俺達は、
恋も愛も甘いだけでは無いのだと、思い知った。
簡単に口に出来る言葉では、無いのだと。


「で、いつ発つんだ」

「あと、二週間かな?」

「じゃあ、大丈夫だな」

「……ん?」

「ほら、毎年毎年お前が行きたいって言ってた花火大会だよ」

「…ぇ…」
「だって…人混みなんて、って…」

「最後だ、付き合ってやるよ。桟敷席準備してやっから心配すんな」


「……本当にっ?ホントにホント?」
「やったぁーー♪ドタキャンとか止めてよねっ!」

「失礼なヤツだな、嘘なんて付かねぇよ」


返事をするまでの微かな間とほんの少し瞳を潤ませたのは『最後』の言葉に反応したからか、それでも、嬉しそうに笑う顔があの頃と微塵も変わって無いのを見て、嬉しくなった。

「お家元と夫人にも、挨拶して来るね」
そう言って立ち上がった牧野と母屋までの長い廊下を連れ立って歩く、こんな図柄も最後かもしれない。


「では、おばさま長い間お世話になりました。出来の悪い弟子ですみませんでした」

「もう、何を言ってるのっ!自慢の弟子だったわよ」
「こっちに帰って来た時は寄ってね、待ってるわ」

「ありがとうございます。…必ず…」
「………失礼致します」


牧野はいつの間にか持ち前の明るさと真っ直ぐさで西門に馴染み、お袋とはスイーツ仲間らしい。着付けやら華道やらの手ほどきも受けていて、ここにも、師匠と弟子の関係が出来上がっている。
恭しく頭を下げて帰って行く凛とした後ろ姿を、お袋と二人で見送った。

─マジで大した奴だよな


「類くんのお嫁さんになっちゃうのね…」
「三回ルールだったかしら?聞いて呆れるわね」

「……何処の何方の話ですか?…」

「あら、そう?」


お袋は、カラカラと笑いながら奥へ戻って行った。その時、ポンと叩かれただけの背中が酷く痛い気がした。

─今更、遅いんだよ。あいつには類がいい


***


あの二人の間には、秘密なんて言葉は存在しないのだろう。嬉しそうに花火大会の事を話す牧野の様子が容易に想像出来る。
自身の不在は、連絡しておくとでも言ったのだろうか、
二日後、類から連絡があった。


『総二郎?……俺…』

「おぉ、何だ珍しいじゃん」

『花火、観に行くんだって?牧野が喜んでた』

「………あぁ、渡仏土産だ」

『………総二……「俺と牧野は、師匠と弟子だ」』

「余計な心配すんじゃねぇよっ、アホ」



『…ん……宜しくね、引き継ぎでバタバタしててさ、無休なんだ。一緒に行けなくて、ごめん』

「任せとけ、ちゃんと送り届けっから」

『………ん…』

「じゃあな」


そう、俺と牧野は師匠と弟子だ。それ以外のナニモノでも、無い。
同行を選ばなかった類の思い遣りが、判り易くて胸だか腹だかが少し苦しい。

じゃあな、と切ったスマホをいつの間にか握り締めていた。


***


前日の夜、この時期にしては珍しくシトシトと降る雨が涙に見えるとか…、
俺らしくもない。
未だ嘗て翌日の晴れを願った事など無いくせに、降る雨を睨み付けた。

─最後なんだ、晴れやがれ


翌朝。
俺の睨みが効いたのか、晴れた空と眩しい太陽に、笑っている自分が居た。

─良かった


桟敷席は貸切状態でも、そこに行くまでは人混みを掻き分けなければならない。
おまけに、寄り道したがる連れが居る。

たこ焼きが食べたいだの、わたあめが可愛いだの、ラスト一発は抹茶ミルクのかき氷と来たもんだ。
さすがに、それは全力阻止した。
お陰で、桟敷席にたどり着いたのはオープニングのスターマイン連発が始まった後だった。


「やっぱり、人多いねぇ」
「ごめんね、こんな人混みの中に連れて来ちゃって」

「…誰かさんが寄り道ばっかりだったからな」

「………ぅ……」

「ばぁーか、これもまた一興だ」
「気にすんな」

「……うん」

「ほら、また上がるぞ」


「……綺麗ね」

「あぁ、綺麗だな」

「……また、来れるといいね」

「何時でも、来れんだろ」

「……うん」
「ねえ、西門さん」

「ん?」

「西門さんのお茶 恋しくなったりするのかな?」

「………何だ何だ?マリッジブルーか?」
「何時でも来いよ、最高のやつ点ててやっから」

「うん」

「格安でな」

「えぇー、お金取るの?」

「なにお前、俺のお茶をタダで飲む気か?」


俺達は、打ち上げ花火の音をBGMにたわいもないやり取りを続けた。



─牧野、幸せになれ



俺は、初めて会ったあの時より何倍も綺麗になった牧野の横顔越しに、次々と打ち上げられる大輪の花火を、記憶に焼き付けた。




…………………………by 空色






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Posted by桃伽奈

Comments - 4

There are no comments yet.
スリーシスターズ  

空さん、おはようございます。
類くんが幸せになる。そして総二郎くんの叶わぬ恋の切ない気持ち・・・
読んでいてちょっと複雑になっちゃいました。
類くん幸せになってね!って言いたいけど、総二郎くんの切なさが胸にジ~ンときてしまって、総二郎くんにはなんて声をかけたらいいんだろう?と思ってしまいました。
2人で見る最後の花火。
類くんが心配するようなことは何もないけど、総二郎くんの想いを知っているだけに類くんちょっと複雑かな?
総二郎くんはここで自分の想いを昇華させるのかな~なんて思うとやっぱり切なくなっちゃいました。
でもでも、類くん幸せになってね!
総二郎くんもずっとずっと2人の幸せ見守っててくれますよね!
そして、類くんとつくしちゃんが日本に戻ってきた時には、今度は3人で花火を見に行けたらいいですね。

2018/07/18 (Wed) 07:53 | EDIT | REPLY |   
空色  
ありがとうございます(*^.^*)

スリーシスターズさま
ありがとうございます(*^.^*)
ちょっと切ない、でも とっても綺麗な総ちゃんと複雑 類……
ごめんなさいね…複雑にさせちゃいましたかぁ~m(__)m
うんうん、いつか三人で花火を観に行けたら良いですね(*´∀`)♪
「総ちゃん書くぞぉーー!」と勢い良く書き始めたら……いつの間にか類つくになってしまい、何とも切ない総ちゃんsideのお話になってしまった( ´△`)
と言う経緯があります、ごめんなさい💦
─総ちゃん ムズい……
スリーさん、いつもありがとう(*´∀`)♪
ありがとうございました🍀

2018/07/18 (Wed) 12:40 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

空色様
総ちゃんのせつなさが光るお話
ありがとうございましたm(__)m
家元夫人が肩をポンポンとたたく痛みを
今さらながら感じるところがキタわ…
類くんの言葉にかぶせる総ちゃん
牧野、しあわせになれ!
花火とともに上がり
気持ちを昇華させるように
心の中で叫ぶこの一言
すっごくよかったです。m(__)m
胸に残る短編ありがとうございました♥

2018/07/20 (Fri) 17:43 | EDIT | REPLY |   
空色  
ありがとうございます(*^.^*)

さとぴょんさま
ありがとうございます(*´∀`)♪
少しは…切なくても綺麗な総ちゃんに書けてましたでしょうか?
未だに……不安、超!不安だ…( ´△`)
はいっ!総ちゃん書きますっ!!!
って言ったのに…
あれ?オカシイぞっ…めちゃ切ないっぽい総ちゃんになってるっ💦💦
がーーーーん!Σ( ̄□ ̄;)
─ごめんよぉ~総ちゃん…
─総ちゃんは…ムズい…(T_T)
さとぴょんさん、いつもありがとう(*´∀`)♪
ありがとうございました🍀

2018/07/20 (Fri) 19:24 | EDIT | REPLY |   

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