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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

波の音に乗せた想い(theme[ocean])

桃伽奈


今、目の前を歩く牧野の背中を見ながら考えていた。
波打ち際を頼りなげに歩きながら、時々足下に目を向けては無邪気に貝殻を探している。捲り上げたジーンズが濡れるのもお構いなしに波を蹴り上げ、その波の音に紛れて聞こえてくる鼻歌。


俺はこの光景を昔も見たことがある。
まだ、俺達が大事なものを見つける途中の幼かった頃…同じように牧野の背中を見つめていた俺がいた。




もう何年前になるだろう。

「海に行きたいなぁ…」

牧野のこの一言ですぐに動いたのは司だった。
道明寺所有の島にクルーザーで向かい、夏の数日間をそこで過ごした。

毎日がお祭り騒ぎ。
真っ青な海で泳ぐのはもちろん、マリンスポーツにバーベキュー。夜は司の命令でクルーザーから花火まで打ち上げられて、笑いまくった夏の記憶の1ページ。だけど、この時の牧野の心には1人の男しかいなかった。

それを司が言葉に出さなかったからこうやって5人で来ただけのこと……それを俺達3人は言葉の上では理解していたと思う。

牧野の白い肌を太陽が照りつけて水着の跡を残していく。
その肌に触れる親友の指をむず痒い想いで見ている俺。

花火を振り回してはあいつを怒らせ、わざと追いかけさせて巫山戯合う。
暗闇に消えてしまう2人の姿を目の端で探してしまうみっともない俺。

バーベキューのトングを得意気に使っては俺達の皿に肉を入れていく。その時の牧野は弾けそうな笑顔を見せていた。


「楽しそうだよね、牧野」…お前は見ているだけでいいのか?類。
「連れてきて良かったな」…このままずっと妹のままで耐えられるのか?あきら。

目を細めて牧野の事を見ている2人のようにはなれなかった。
奪い取ろうとは思わない。だけど、告げてしまいたいと言う衝動に駆られる……それは俺だけだったんだろうか。


もうそれが最後だっていう日の夕方、5人で海辺を散歩していた。
司が先頭を歩いて、あきらが続き、類が牧野のすぐ前を守るように歩いてる。
俺は1番後ろから、牧野の背中を見ながら歩いていた。

ほんの少し風があって波が荒かった。
ザザーン…と大きな音を立てて俺達の右側から押し寄せる。夕日でオレンジに染まった海が何故か俺を急かしているような気がした。

日が沈む前に声に出せと…。


司は振り向きもせずに前を行く。あきらは髪を押さえながら後に続く…立ち止まって牧野を見ている類。
そして俺の少し前には真っ白なワンピースを翻しながら踊るように波と遊ぶ牧野がいた。

その裾が濡れるのもお構いなしに、スカートなのに足を上げて波を蹴っては笑った。
「西門さん、遅れちゃうよ?急がなきゃ!」…急に振り向いて牧野はそう言った。お前まで急げって言うなよ、と心の奥が呟いた。

突然来た大きな波!それに乗っかるようにして俺は叫んだ。

「牧野…!俺、お前のこと好きだ」…それをザザーーン!と波が打ち消した。


キョトンとした顔の牧野が俺の方を見てる。みんなに背中を向けて俺の方を見てる。
俺の髪も、牧野の髪も同じ方向に揺れて、その顔を隠した。

「なんて言ったの?西門さん、波で聞こえなかった!もう1回言って?」
「何でもねぇよ!早く行け……置いてかれるぞ!」


牧野がくるりと俺に背中を向けたとき、類の顔が見えた。呆れたように薄笑いを浮かべて、あいつの瞳が細くなってた。




それから牧野は司との恋を燃え上がらせ、それが自然と終わり……大学を全員が卒業していった。
司も類もあきらも日本にはいない。残されたのは俺と牧野。

たまに電話して、たまに飯食って、たまに暇つぶして…そうやっていくつもの季節が過ぎた。


「海に行きたいなぁ…」

牧野がぼやいたのは一昨日だ。久しぶりに酒飲んで近況報告していた時、飲み屋のカウンター席で頬杖ついたままボソッと呟いた。

「なんだよ……連れてってくれるヤツは未だにいないのか?」
「いるわけないじゃん。そんな人…もう若くないもん」

「ははっ!違いねぇな。じゃ、俺と行くか?」
「連れてってくれる?西門さん、忙しいんじゃないの?」

「牧野の頼みは断ったことねぇだろ?今度の日曜、仕事がないからその日にな……」
「ふふっ!やっぱり言ってみるもんだねぇ!」

「もう少し色っぽく頼めねぇのかよ!」
「あはは!無理無理!なによ、知ってるくせに!」

この店を出る時にも腕も組まないし、送りもしない。タクシーだけ拾ったら、そこで「じゃあ、日曜な!」って言うと赤い顔して頷いてた。

1度だってこの後の時間を過ごしたことはなかった。
あの時に届かなかったとは言え口に出してしまったから……同じ言葉を出せなくなってた。



牧野の希望で乗せたのはバイク。
くそ暑い日なのにライダースジャケットを羽織ってジーンズを履いて朝早くに海まで飛ばした。

そのライダースジャケットから伝わる体温が何年経っても俺をザワつかせるけど、フルフェイスのヘルメットがそれを隠した。
振り落とされねぇようにと俺の身体を掴んでるこいつの手が、心臓を鷲掴みするような感覚…このまま海に着かなきゃいいのに、なんて思う自分に笑いが出る。


何回か乗せたことがあるから俺達の間には決まり事がある。
言葉が交わせないからヘルメットで背中を3回、それがあると俺はバイクを路肩に停めた。

「どうした?疲れたか?」
「うん、眠くなった。気持ちよすぎて」

「アホか!落ちたら死ぬぞ?そこまでチンタラ走ってねぇんだから。少し休むか?」
「そうだね、景色もいいしさ」

息苦しくなるから何度もこうやってヘルメットを取りたがる。「なんで車にしないんだ?」って聞くと必ず笑って誤魔化すんだ。
少し遠くに見える青い海……そこを指さしながら「もうすぐだね!」と白い歯を見せる。
ここでもやっぱり思ってしまう。あの海の方が何処かに消えればいいのにな…。


東京を出てから2時間弱で、想いとは裏腹にあっさりと目的地に着いてしまった。


「うわあっ!久しぶりの海だぁ……気持ちいいねぇ!」
「…そうか?相変わらずガキだな、お前」

「あはは!何歳になっても海はいいもんだよ?」
「俺は日焼けできねぇの。お前とは違ぇよ!」

「可哀想だねぇ!」なんて笑いながら重たいライダースジャケットを俺に向かって投げて、1人でさっさと波打ち際に行ってしまう。

今日は白いTシャツとジーンズ。太陽に透けて身体のラインが少し見える…全然変わってない子供みたいな身体だ。
変わらないのはもう1つ…昔と同じように黒髪が潮風に靡いてた。

履いてたスニーカーを脱ぎ捨てて裾をまくり、ザバザバと波の間に入っていく…そんな牧野をバイクに跨がったまま見ていた。


白い波があいつを海の中に誘っている。
熱い風がそれを止めろと俺に告げてくる。
青い海が正直になれと囁きかける…牧野はまるで飛魚のようにそこで跳ねている。


昔の俺が後ろから呟いた…早く手を伸ばせ、と。



今、目の前を歩く牧野の背中を見ながらタイミングを計っている。
波打ち際を頼りなげに歩きながら、時々足下に目を向けては無邪気に貝殻を探している。捲り上げたジーンズが濡れるのもお構いなしに波を蹴り上げ、その波の音に紛れて聞こえてくる鼻歌。

右側からオレンジに染まった波が規則正しく、牧野の鼻歌に合わせてるのかたまに狂ったリズムでやってくる。
風が少し強くなって牧野は片手で髪を押さえていた。

「夕日が綺麗だね、西門さん!ほら、あの空の色…」

空を指さしながら牧野が振り向いたと同時に来た大きな波、それに乗っかるようにして俺は叫んだ。

「牧野…!俺、やっぱりお前のことが好きだ」…それをまたザザーーン!と波が打ち消した。


キョトンとした顔の牧野が俺の方を見てる。片手を高く上げたまま、1人で立って俺を見ている。
もう1度来た波が牧野の身体を海に持って帰ろうとしたから慌てて走り寄って抱き締めた。


「……波が邪魔だな」

「そう?あの時も聞こえてたよ…波の音と一緒に。もう1回ってちゃんと頼んだのに、なんでもないって言うんだもん」


ザザーーン……と波の音がする。
足下の砂が俺達をそこに埋めていく……そして俺達の影は1つになった。






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Posted by桃伽奈

Comments - 2

There are no comments yet.
さとぴょん  

Plumeria様
総ちゃんに二度告白させるお話
ありがとうございました♡
波打ち際を歩く5人。
甘酸っぱい青春って感じでいいですね。
またこの順番もなかなかミソですよね♡
この時はまだ、みんな友情の域にいて
誰もまだ恋には発展してない状態なかったんですね。
総ちゃんは、気持ちを言葉にしたものの波に消されてしまいました。
もう一回言えなかったのは、つくしの答えを聞くのが怖くなったから?
その頃の親友の気持ちを思いに気付いていたから?
自分の思いを通そうとする勇気と覚悟がこの頃はなかったのかもしれませんね。
それでも、純情でピュアな総ちゃんの夏の1ページ♡なかなかよかったです。
数年後、自然とふたりは一番近くに・・・。
車じゃなくて、バイクで行きたいと言うつくし。
気持ちわかりますよね♡
私も総ちゃんの後ろに乗ってメットで背中を3回叩きたい♡
5人で来たときと違って今度はふたりだけの海。
時間もあの時と同じ夕暮れ。
波で遊ぶつくしの姿もあの頃と同じ。
変わらない景色と同様、総ちゃんの気持ちもずっと変わらなかったんですね♡
さあ総ちゃんに訪れた再度の「アタックチャンス!」← 谷原章〇風で
波に乗せ想いをしっかり伝える総二郎。
声だけでなく今度はちゃんと気持ちもしっかり届けられたみたいですね♡
重なるふたりの影素敵なラストでよかったです。
それでもやっぱり
「つくし一回目の告白の時、聞こえとったんかい!」
と突っ込まずにはいられないお話♡
ありがとうございました♡

2018/07/17 (Tue) 22:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
さとぴょん様

ご訪問&コメントありがとうございました。
超ド真面目な感じでしょ?
そうそう、初めの時はまだ確認する勇気がなかった可愛い総ちゃんです♥
メットで3回(笑)
さとぴょん様、勢いありすぎて総ちゃんバイクから落ちるかもよ?
落ちたら危ないから自転車にしといて?
でっ!(笑)こんなに真面目に書いたのになんで「アタックチャーンス!!」なのっ!
そうじゃない・・そうじゃなくてドキドキの「告白ターイム」なのっ!
抑えきれなかった総ちゃんの想いがドバッ!と出てくる場面なのに~💦
変な音楽と音が聞こえてきそうじゃないですかっ!も~!!
よーく耳を澄ませて・・・?聞こえてくるのは波の音よ・・・(笑)
「つくし一回目の告白の時、聞こえとったんかい!」・・・ご尤も。

2018/07/18 (Wed) 00:27 | EDIT | REPLY |   

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