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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

プチリレー『雷と雨』総ver.4 -nainai-

桃伽奈

nainai.png



ここは…。

うっすらと目を開けると、見知らぬ天井の模様が焦点を結ぶ。

「…あ、気がついた?」

すぐ傍から牧野の声がする。
状況から察するに、俺は彼女のうちで横になっているらしい。

「びっくりしたよ…。急に座り込んじゃうんだもん。熱があるときに外に出たらダメだよ」
「…俺、どうやってここに?」
「支えたら、自分で歩いてくれたよ」

彼女の声は存外に明るい。
昨日、自分達の間にあったことなど、忘れてしまったかのように。

「何か欲しいものは?」
「…水」
「体、起こせる?」

首の後ろに腕を差し入れられ、優しく抱き起こされる。体の芯にはまだ熱がこもっていて、上体を起こすと軽いめまいを覚えた。手渡されたペットボトルの水を、半分まで一気に飲み干す。

熱出すなんて、何年ぶりだよ。

「…今日はどうしたの?」
「………」
「上着取りに来たんなら、クリーニングしておいたから、持って帰ってね」

いや、俺はそんな理由で、ここに来たんじゃねぇし…。

「何か食べられそうな物、持ってく、る…」

そう言って立ち上がろうとするつくしの手首を、総二郎は咄嗟に掴んで引き留めた。

「…お前が」
「え…?」
「お前が、心配だったんだよ。…風邪ひいてねぇか」

―泣いていないか。

つくしはにっこりと微笑むと、総二郎の指をやんわり解こうとする。
仕草こそ優しいけれど、つくしは一度も総二郎とは目を合わせない。

「…ありがとう。でも、あたしは、この通り丈夫だから」

―牧野。

「心配には及ばないよ」

すっと逸らされる視線。
その視界に入れてほしくて、思わず心の声が洩れる。

―牧野。
―俺を見ろ。

「…お前が好きだ」
「…えっ?」
「違った……言い直す」
「はぁ!?」
「お前だけが、好きだ」

やっと二人の目線がかち合う。
昨日、頬を伝う雫に唇を寄せたときのように、つくしの表情が驚きに満ちていく。
ほどなく、彼女の首から上が真っ赤に染まりきった。

「…熱のせい?」
「そうじゃねぇし」
「………ッ」
「…返事、くれねぇの?」

つくしの目線がうろうろと泳ぐ。

戸惑ってる? 迷ってる? …まぁ、そうだろうな。

「西門さんの気持ちは嬉しい。…あの、…でもさ」

続く逆接の接続詞に軽い落胆を覚える。
だが、次の瞬間――。

「…あの、家族がね、…その、…聞いてるから、…返事は、後日にしてもいいかな」
「…は? …家族?」

こくこくと頷きながら俯いたつくしの後ろを見れば、襖戸が10センチほど開いたままになっている。
そこから息を潜めてこちらを窺っている、3対の瞳…。
パチッと目が合うと、彼らの瞳は嬉しそうにニンマリと和み、引き戸はスーッと閉じられた。

そうか。こいつ、一人暮らしじゃねぇし…。

不覚にも彼女にキスをし、不覚にも高熱で倒れ、不覚にも家族の前で公開告白か…。
…ったく、なんなんだよ。昨日から…。
らしくない出来事ばかりに、もう笑いしか出てこない。

「………」
「………」
「…ははっ」
「もう、なんなのよ。…ふふっ」

ひとしきり笑い合って、ふと笑い止み、互いに見つめ合う。
頬を染め、ふんわりと目元を綻ばせる彼女を見れば、その答えは自ずと知れた。

「…風邪が治ったら、もう一回聞かせて?」

ね?と念押しするつくしに、総二郎は不敵に笑う。

「あぁ、言ってやる。だけど、そんときゃ、いろいろ覚悟しろよ?」
「……うん。…わ、分かった……」

ホントにその意味、分かってんだろうな?



******



遠雷が、聴こえる。
夜半過ぎ、窓を打つ大きな雨音に、俺は目を覚ました。
夕刻から降り出した雨は激しさを増している。

雷雨、か。

隣で眠るつくしの黒髪を一房、指で絡めとって弄びながら、遠い夏の日の思い出に浸る。
不器用で滑稽で笑えてしまう、つくしとの馴れ初めの一部始終――。

「…ん、…総?」

小さく身じろいだつくしが薄く目を開け、俺を見上げてくる。
その額にそっと口づけて、彼女を抱き寄せる。
直に感じる素肌の柔らかさに、鎮まったはずのほむらが仄かに胸に灯って、思わず腕の力を強めてしまう。

「雷、ひどくなりそうだ」
「…ん。…でも、大丈夫」

首筋につくしの吐息を感じる。
俺の背に彼女の腕が回って、ぎゅっとしがみつかれる。

「…雷はまだ苦手だけど、…こうして傍にいてもらえるし、…それに…」
「それに?」
「…総に、…好きだって、…言ってもらえたから」


彼女の唇を奪う。
でも、もうそれが拒まれることはない。
舌先で誘えば、彼女もそれに応えてキスは深められていく。

夜目にも白いつくしの肌に舌を這わせれば、洩れる吐息が甘く切なく変わっていく。
やがて彼女とひとつにとけて、この上ない幸せと喜びとともに、彼女を抱きしめた。


――愛してる。
ただ、お前ひとりを――。



-FIN-
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Posted by桃伽奈

Comments - 2

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スリーシスターズ  

こんばんは。
nainaiさん、初めまして🎵
なのですが、以前のイベントの時にお名前をたくさん見かけたので、何となく初めましての感じがしないのは私だけでしょうか?(笑)
星香さん、空さん、+αと書いてあったので、お話書かれた皆さまもお疲れさまでした~。
「雷と雨」総二郎Ver.、ハテナマーク貼り付けてで読んでいました。
総二郎くんは中々展開が読めず・・・
つくしちゃんも総二郎くんが好き、総二郎くんもつくしちゃんが好き、でも微妙にすれ違っていてジレジレとしていました。
総二郎くん女性にはすごくスマートなイメージだったのですが、本気で好きな人にはすごく不器用になってしまうのかな~と。
百戦錬磨の総二郎くんがグイグイいけない姿は、ちょっと新鮮でしたね。
不覚にも家族の前でキスをし、熱で倒れ、公開告白をしてしまいましたが、つくしちゃんを手に入れられたから全て良しとしましょう!(^^)!
このお話遠い夏の日のつくしちゃんとの馴れ初めを思い出していたお話だったんですね~。
「雷と雨」の夜に思い出した夏の日のこと、つくしちゃんも思い出していたのかな~。
もう2人幸せ一杯だから、雷も雨の日も怖くないですよね🎵
「雷と雨」のどこかのお話の時に拍手をポチっとしたらたまたま川柳で「ムズイのよ総二郎くんはムズイのよ」って感じの川柳が出てきて、その時私も展開が中々読めず!だったので、思わず吹き出してしまいました(笑)
ムズイのよの総二郎くんでしたが、素敵なお話をありがとうございましたm(__)m

2018/07/14 (Sat) 18:50 | EDIT | REPLY |   
nainai  
スリーシスターズ様

こんばんは。コメントありがとうございます。
5/1にサイトオープンしたばかりの新米なのですが、恐れ多くもイベント主催側に名を連ねさせていただいております…💦
これまでは読み手onlyでして、イベントのオープンコメには『ないない』の名で書き込みをしていました。今後ともよろしくお願いいたします<(_ _)>
総つくは書いたことがなく、リレーも初挑戦でして、かなりかなり悩みました…。
(川柳は私の作品ではありませんが、同じ気持ちです…笑)
総ちゃんであろうと、つくし相手にスムーズに事は運ぶまい、ということで、ジレジレ展開になりました。でも、ちょっと糖度も足したいなぁ、ということで過去を回想しつつの幸せな今、という終わりにしてみました!
楽しんでいただけましたら幸いです(*´ω`*)
追記:
空色様へお祝いで送った『好きもいろいろ』では方言をいろいろ調べました。
スリーシスターズ様も雑学好きなんですね。
私にとって馴染み深い方言ももちろん盛り込んでおります~。

2018/07/14 (Sat) 21:06 | EDIT | REPLY |   

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