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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

蝉(theme [cicada])

桃伽奈


ミーン……。ミーン……。ミーン……。

大学一年生になれた初めての夏。
 麦わら帽子をかぶり、真夏の暑い中を散歩するあたしと類。
 自然公園内にある散歩コースは、舗装された歩道の両端に木が並んでいる。
同じように散歩をする人と何度かすれ違うが、みんな帽子やネッククーラーを巻くなどして暑さ対策をしていた。
 あたしも朝家を出る前に、類が体に日焼け止めを塗ってくれた。



『ちょ、類っ! そこはいいから』
『なんで? ちゃんと塗らないと日焼けするよ』
 と言いながら着ていた服を脱がそうとする類の手をペチンと叩いた。
『そこは服で隠れているんだから、必要ないっつーのっ』
『えー……』
 何をそんな不服そうな顔をしてんのよっ!



 今はまだ午前中だから暑さはマシなのかもしれない。
 朝の予報では、本日も猛暑日だという。
 お昼をまわり午後になると、夏の暑い日特有の熱で空気が歪む現象……陽炎が今日も見えるだろう。
 あたし達は歩くのを止め、木の影に入った。
「牧野、飲む?」
「うん。ありがとう」
 家から持ってきていた水筒の麦茶をラッパ飲みすると、口から食道へと冷たい液体が流れていく。
 最後に胃まで到着したら、冷たい麦茶をじんわりと感じた。
「美味しい……」
「ん」
 類が「俺にもちょうだい」って手を出すので、水筒を返すと同じようにラッパ飲みをした。
 少しだけ顔を上げ、類の喉がコクっと動く。
 あたしが感じたのと同じように、今類の体の中をあの冷たい感触が走っている。

「何?」
 飲み終えた類が、水筒の蓋をカチっとロックしながら聞いてきた。
「え?」
「見惚れた?」
 なっ……!
 何を言い出すんだっ。
 確かに見惚れたけどさ!!
「……う、うるさいっ」
 あたしが真っ赤になって言い返すと「あはは、牧野可愛い」って笑われた。

 まったくもう。
 何を言い出すんだか……。

「でも確かにちょっとうるさいな」
「……え?」
「蝉の声」

 ミーン……。ミーン……。ミーン……。

 高い木の枝の間を木霊するように、公園中に響き渡っている鳴き声。
「うん。凄い数の蝉だよね」
 類の言う、うるさいって単語は合っていると思う。
 この鳴き声の数は、風流なんてもんじゃない。
 一種の騒音だ。
 ふと見上げた木の幹には、蝉が3匹もとまっていた。

 枝や葉に隠れて見えない上の方にもまだいるかもしれないし、1本の木に3匹いたんならここに100本の木があるとすれば、300匹蝉がいる事になる。
 極端な言い方だが、本当にそれくらいいるんじゃないかと思うくらいの蝉の鳴き声だ。
「じつはあたし……。さっきからこの鳴き声が頭に響いて痛いんだよね……」
 休みなく鳴り響く蝉の鳴き声に、いつもよりも大きい声で会話をしていた。
 類も意識して、いつもより大きな声を出している。
「俺も……」
 眉間に皺を寄せた類は、その顔を見られたくないのか、汗ばんでいるあたしの体を後ろから抱きしめた。
 類の体温と外の空気が同じ暑さに思う。

「……でも蝉も必死に生きてるんだよね。ひと夏しか生きられないんだもん」
 あたしが幹にいる蝉を見ながら言うと、後ろで類も顔を上げた気配を感じた。
「幼虫は土の中に沢山いるんだろうけど」
「ああ、そうか。じゃあ虫にしては意外と長生き?」
 土の中で5、6年とかだっけ?
「かも……。最初は卵で1年とかじゃない?」
「卵なの? 幼虫じゃなくて?」
「卵→幼虫→成虫。その中で幼虫が一番長い」
「なるほど……。って事は、この土の下には来年用の蝉が眠ってるんだ」
「それも5年分と考えると、結構な数だよな」

 えっと……。
3匹×100本で300匹の蝉がいて、300匹×5年で……1500匹っ!!
この計算だって、100本の木に対してだ。
実際はこの自然公園には100本以上の木が存在している。
「うわ……っ。ってこの土の下には、うじゃうじゃいるじゃん」
 踏んづけているかもって思い、無意識に片足をあげるとバランスを崩して類にもたれる結果となる。
「……っ!」
「くくっ……。別に土の上からじゃ潰したりしないよ」
「そ、そっか……」
 踏まれても元気で寝てるんだ。
 ……。
 ……。
 5年も……。
 ……。
 ……。

「牧野。……今、俺みたいって思わなかった?」
「お、思ってない。思ってない!」
 類みたいとはっ……。
 ただぐっすり寝てるんだな~って思っただけで……。
「昔は「夜は寝るためにあるのか」って、あきらに言われた事あるけど、今は頑張ってんじゃん」
「……頑張るって何? 夜更かしを?」
「そうじゃなくて、昨夜の事」
 昨夜っ……?
 あたしは類の家にお泊まりして……それで……。

 そこまで思考が辿り着くと、顔が真っ赤になってこれ以上記憶を戻すのを拒否した。
「……っ!」
「なんか思い出すとまたしたくなるな」
「な、なっ。……今はまだ午前中だからっ!」
「別にやっちゃいけない時間なんてないじゃん」
 ……そりゃ、確かにないけど……。
 まだお日様だって元気にお空の上にいるのに。

「んじゃ、今日は牧野ん家に泊まる」
「あたしん家?」
「そ。今夜はパパさん達、町内旅行に出かけるからいないんでしょ?」
 そうだ。パパ達は長野へ行っちゃったし、進は友達の家に泊るって言ってた。
「いいけど、うちエアコンないよ」
「いいよ。扇風機だけ回して……。どうせ汗だくになるんだし」
 汗だくって……。
 類の一言一言が昨夜の事を連想させてしまう……。
 けど類があたしと過ごす時間を好ましく思ってくれているんだと思うと嬉しい。
「煎餅布団で?」
「ん、牧野の匂いがする布団」
 こうやってひっついているだけでお互いの汗ばんだ肌がよく分かる。
 でも不思議と嫌な感じはしない。
 これが「愛」ってやつなのかな……。
 だって普通は汗が付いている人の腕が当たるだけで、ネチャっとした感触が気持ち悪いって思うもん。

「だらけているよね……今のあたし達」
「ん……。でも俺は好き」
「……あたしも」
ご飯食べて抱き合って、気が向けばこうやって散歩をする。
そしてまたご飯を食べるの繰り返し。
 来週からはまたバイトが始まるから、こんな生活も今だけなんだけど……。
 まだまだバイトは始まって欲しくないなと思ってしまう。

 大学一年の夏休み。
 あたしは類と一緒に過ごす。




Fin




※これは去年、蝉の声に「うるさいなぁ」って言いながらママ友と会話していた時のお話です^^;
本当に頭痛がしましたww
掘り返してみる? って話もしていたんですが、ゴロゴロ出てくるのを想像すると怖くてやめました。






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Posted by桃伽奈

Comments - 4

There are no comments yet.
スリーシスターズ  

桃伽奈さん、こんにちは。
蝉の声を聞くと夏が来た~!!と実感しまくると同時にうるさいな~と思ってしましますね。
蝉も必死に生きているんですけどね。
1本の木に蝉が3匹で・・・の辺りから土の中に居る幼虫の数まの計算をしている所はリアルに近くの大きな公園を思い浮かべて、あそこの公園もそのくらいの数はざらにいるのか~と思うとある意味怖かったです(^_^;)
ずっと眠ってる・・・想像したのはまぁ~普通にいつも眠っている類くんなんですけど、その後の会話辺りからどんどん想像する方向が怪しくなっていって・・・
つくしちゃんだけじゃなく私も想像すると顔がニヤけて来てしまいました(≧◇≦)
私の中ではF4の中でその手のことに一番淡白に見えているのが類くんで、つくしちゃんと2人きりの類くんは私にとってはとてもエロすぎる類くんで、想像も他の3人よりはちょっといつもの類くんとギャップがありすぎるというか・・・
実際に書かれるよりも、想像する方がなんだかエロっぽくなってしまうのは何故でしょうね!?(笑)
類くんとつくしちゃんの、のんびり穏やかな夏休み。
ゆっくりできる時に2人でのんびりまったり過ごすのもいいですよね!!

2018/07/09 (Mon) 16:18 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
スリーシスターズ様

おはようございますw
コメントありがとうございます^^
私の住んでいる町では、一昨日から蝉の声がチラホラ……。
ああ、今年もこの季節がやって来たなぁって思いました^^;
でも去年は特に蝉が多かったような気がします。
(もう少し控えめに鳴いてもいいのよ……)ボソボソ……。
いつも妄想の中では色々やってしまいます(笑
類にあんなことや、つくしちゃんにあんなこと。それは口には出せないような(汗
も、文字になんてとんでもない(滝汗
……なんて事も♪
ぜひぜひ想像して下さい♬
(って、スリー様になんてことを……。ごめんなさいm(__)m)
イベントはまだ前半戦です。この後もどうぞお楽しみください^^
ありがとうございましたw

2018/07/10 (Tue) 09:02 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

桃伽奈様
お話ありがとうございました♡
暑い公園を散歩するのも、
暑い中背中から抱きしめられるのも
扇風機しかない煎餅布団で汗かきまくるのも
愛があるからこそできることですよね~♡
個人的には類くんの喉がコクッと動くとこが美味しかったです。
・・・喉を通る水になりたい。
間接ラッパ飲みキスを、自然にするふたりに、ん?と思ったら
なるほどそういうことだったんですね。
石の上に三年って言葉があるけど
土の中に5年って、蝉もなかなかどうして凄いですよね。
朝からテンションマックスで全力で鳴く蝉。
改めて数を計算すると確かにぞっとしますね。
限られた命だと思うから、あのうるささも耐えられるんでしょうね。
お話の蝉も、ふたりのアツアツぶりに
「チッ見てらんねーなー。暑い中イチャイチャしやがって
俺もイカシタセミ子見つけて思いっきりラブラブしてやるから見てろよー!」
とか触発されて、より気合い入れて鳴いてるかもしれないですね.
来年の土の中にはさらに卵が増えるかも?(;^ω^)こえー。
蝉も嫉妬してしまうほど(予想)
まったりらぶっち♡なふたりの夏のお話
ありがとうございました♡

2018/07/11 (Wed) 15:39 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
さとぴょん様

こんばんはw
コメントありがとうございます^^
ですです。愛があれば……です♪
学校から帰ってきた汗だくの子供が、ベッタリくっついてきても嫌じゃないのは愛があるからw
同じ事を旦那がしようとすると、さり気なくスルっと避けてしまうのは…………あれ?^^;
……。
……まぁ、その事は横に置いておいて。
なるほどw
蝉の気持ちまで考えておらず、コメントに笑っちゃいましたww
確かに2人の仲にあてられてしまっていることでしょう^^;
私が蝉なら、間違いなく気合いが入ります♪
果たして類級のオスは見つけられるのか……゚д゚lll
今年も暑い夏が始まりつつあります。暑さに負けないよう、イベントで英気を養って下さい^^
ありがとうございましたw

2018/07/12 (Thu) 00:48 | EDIT | REPLY |   

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