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桃伽奈

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Posted by桃伽奈

祭り(theme [festival]) 前編

桃伽奈


赤、青、白、黄、紫…

狭い空間に様々な色と光が溢れるその光景を、類は懐かしく眺めていた。

それに加えて響き渡る、沢山の賑やかな音達───。


「へぇ… 相変わらず、どこも凄い活気…」

類は控えめな独り言を口にして、それでもやはり…この中に居ることで、どこか心が浮き立つのを感じながら…。



「コラッ、だ、ダメだってば! ちょっと、そんなに引っ張らないでっ」

少し前を行くつくしと、その1歩前を歩く小さな兵児帯がふわりと揺れる。


「類っ、ご、ごめんね? あのっ…」

振り返ったつくしが、遠慮がちに訊ねれば

「ん。いいよ? 待ちきれないんでしょ? …先に行っておいで…」

言い終わる前に類から優しく微笑みで促し、それを受けてつくしも満面の笑みを返す。

「いいの?…ありがと!じゃ、後から来てね!」

それでもやはり嬉しそうに…まるでつくしまでも待ちきれないというように、奥へと小走りで駆けて行く2つの華やかな浴衣姿を、類は静かに微笑ましく見送る。


─ありがとう、ごめんね、か…

昔は聞くたび複雑だった彼女の口癖も、今ではすっかり心地いいものに変わっている事に、類はどこか、くすぐったさも覚えつつ…

ふと感慨に更ける。


─この景色… ホント、懐かしい…


あの頃から…

なんら変わりない真夏の夜の喧騒に、かつてここを歩いた日を、類は独り、のんびりと歩きながら、懐かしく思い出していた。



***


祭りなんて初めてだった。

しかもこんな、邸から少し行っただけのところにある、小さな社の中で…

毎年ささやかな夏祭りが行われていただなんて、これまではずっと、知りもしなかったのだから…


「類…」

待ち人の声を耳にし、くるりと振り向けば…


「あ…」


わざわざ”デート気分で待ち合わせにしたい”と言ったつくしの意向を、類はこの時 初めて知った。


「…な、何//?」

「浴衣… よく、似合ってる」

「///!…そ、そうかなぁ//」

ありがとう、と、小さな声で俯いたつくしの首筋が照れて紅く染まり…
類もつい、目のやり場に困りつつ明後日の方向を眺める。

夜の闇に、しっとりとした朝顔の白い浴衣姿がとても美しく映えていて…

ふと、つくしが他の男に見られないかと、それが気になった。


「…はぐれるから」
「えっ」

照れ隠しにそっと手をとれば、二人、暫し無言になって…

そのまま手を繋ぎ、喧騒の中に一歩踏み出したあの日…。


─へぇ… これが、お祭り……

歩きながら、つい周囲を物珍しげに眺めてしまう類の視線に気付き、つくしはすぐに説明を始めた。


「類、お祭り、初めてだったよね?」
「…あい」

「えっとね!あれは、定番の綿飴でしょ? それから、焼きそばに焼き鳥に、…あ!あそこに焼きとうもろこしもっ」

さも楽しそうに、次第に饒舌になるつくしにつられて、類もにこやかにつくしを眺める。


「つくしの… 好きなのは、何?」
「へっ! あ、あたし//?」

「あい」
「う~ん///…そりゃいろいろ、あるんだけど///…」

「ん。なら、全部教えて?」

ね?と小首を傾ければ、たちまちつくしと共に、目撃していた周囲の女性達の頬まで一様に紅く染まる。

だが、類にとってはこの先もずっと…
この微笑みは、全て彼女の為だけのモノで。

新しい事への興味も、好奇心も。
彼女といればいろいろと湧いてくるのを、その時ですら、類は多分に感じていたのだ。
自分の中の、”確たる変化”───
どれも昔の自分には全く考えられない事だが、その実、今の自分が決して嫌いではない。そしてその全ての変化が、つくしの影響を受けて…今の好ましい自分があるのだと… 類は立ち並ぶ祭りの露店を見ながら、それらがとても幸せな事だと、強く感じて歩いていたのだ。

同時にこの何気ない日々を、この先もずっと、自分の手で守りたいと思う。

それはつくしのお腹にいる、この子の為にも…


「…なに? 類」
「いや… お腹、キツくない? 辛くなったら、いつでも言いなよ」

「フフッ//…うん、ありがと///…」

もう幾分膨らみが目立ち始めた筈のお腹も、浴衣姿ではすっかりと隠れてしまう。まさか、このあどけない少女のようなつくしが妊婦だとは、今は余計に、誰も気付かないかもしれない。

だから、繋いだ手はしっかりと、離さない。

と…

「ねぇ、浴衣…//」
「…ん?」

「類も、着れば良かったのに…//」

すれ違う浴衣姿のカップルを見て、つくしが羨ましそうに呟く。


「ん。それは、また今度、ね…」
「今度か… わかった//! 絶対だよ//?」

「あい」

本当は、妊婦のつくしにもしも何かあれば、直ぐに動けないから… と、必然的に普段着を選択したのだけれど…

これはこれで、また小さな”約束”が出来たな、と…未来の幸せを思い、類はふわりと微笑んだ。


「あ! アレ… あんず飴だっ//」
「…欲しい?」

「欲しいっ!」

提灯の明かりが魅力的な漆黒の瞳に映り込み、いつにも増してキラキラと輝いている。


…本当に、はしゃいでるんだな…

実のところ、類はそれほどつくしに多くを望む訳ではなかったが、普段は花沢の妻として、類も驚く程に彼女はよく動いてくれている。それが、たった今あんず飴を受け取ったつくしは、まるで童心に返ったように…早速嬉しそうにパクリと口をつけた。


「あぁ~//… この味っ、懐かしい…」

満足げに頬を綻ばせる妻に、類は訊ねる。


「…そんなに、美味しいの?」

「美味しいよ!…ていうか、この雰囲気の中で食べるのも…フフッ、やっぱり最高なんだよねぇ//♪」

この前は確か、花沢のシェフ自慢の冷製パスタにも同じ様な反応をしていたな、と苦笑しながら… それでも、つくしの言うことも、きっと一理あるのだと、今の類にはわかっていた。

小さな子供の頃、親に手を引かれて…
或いは、友達同士で待ち合わせしたりして…

妻のつくしは、こういう夏祭りの楽しい記憶を、過去にたくさん持ち合わせているのだという。だから、たとえ200円のあんず飴だろうが、きっとどんな贅沢なメニューにも勝るキラキラとした思い出と共に…

彼女はいつも、美味しそうにそれをほうばるのだ。そんな彼女のありのままの姿は、類にはとても眩しく見える。

あいにく類自身は、彼女のような宝石のようにまばゆい思い出を、ひとつとして、持ち合わせてはいないけれど…


「それ。…俺も一口、頂戴?」
「えっ… い、良いけど///…」

真っ赤になってしまった妻が差し出した、こちらも真っ赤でキラキラと輝く”あんず飴”とやらを、類も一口、試しにかじってみた。


カプリ…


「…甘っ…」
「フフッ//…でしょ?」

独特の水飴の甘さの後、遅れてきたあんずの酸味に、類が驚いて顔をしかめると、つくしはさも楽しそうに笑った。


「どう? 初めての経験は?」
「…まぁ、…悪くない?…かも…」

その微妙な反応に、再びつくしの笑いが弾ける。

だがこれもまた…
類にとって、ひとつ新しい思い出が増えたのかもしれないと、どこかで嬉しくも思いながら…

しっかりと互いの手を繋ぎ、また祭りの中を歩き出す。再び興奮するつくしの話を聞きながら、あれやこれやと見物しながら進んで行った先で、類はふと、それを見つけた。


「つくし… あそこ、何?」
「えっ?…あぁ! あれね?”型抜き”って言うのよ」

「…カタヌキ?」

類としては、ただ机と椅子を見つけて、つくしが休めるのかと聞いてみただけなのに…
それがどうして、また思わぬところで、彼女の触手が動いたらしい。


「ねっ!やってみよっか?」
「いいけど… 俺、わかんないよ?」

まぁまぁ!と、何やら嬉しそうに張り切るつくしに手を引かれて、二人して”型抜き”の店へと向かう。


「おじさん、座れる椅子、ある?」
「はいよっ!おう!…なんだ?あんたら若いのに、もうくたびれたのかっ?」

「違う。うちの奥さん、赤ちゃんいるから…」

「ちょっ///!類っ//」

店主の目が、みるみる丸くなる。

「はぁ~!? おいあんちゃん、奥さんってことは、…あんたら、まさか夫婦なのかいっ!?」

「…そう」
「へぇ~~っ!こりゃあ参った!」

店主の驚きに周囲も振り返り、赤くなるつくしを横目に、類だけが唯一平然としている中で、やがて状況を理解した店主は


「いや~! こりゃまた!あんちゃん、こんな可愛らしいお嬢ちゃんを…やるなぁ~//」

類の肩を叩きかけて、


「って//! なんだよぉ!こっちもかなりの男前じゃねぇか!! 嬢ちゃんもやるねぇ~!?」

何が可笑しいのかケラケラと大声で…
しかし、傍目にも気持ちがいい程豪快に一笑いした後、店主は慌てて大人用の机と椅子を快く用意してくれた。



「よう!また子どもが生まれたら、ここにな、これやりに、遊びに来てくんな!」

「あ、はいっ///、ありがとう、ございます///」



…子どもが、生まれたら…

そうか…//

類は、店主の笑顔と、妻の笑顔とを交互に見ながら、今更ながらに感じていた。

こうして少しずつ…
自分にも、つくしと共に
こうして小さな思い出が、これからも、増え続けてゆくのか、と────

じわりと沸き上がる想いを抱えて、類はやがて、目の前に出された小さな型抜きに向き合った。


「なんだ?初めてかい、ヨシヨシ、…って、おっ!嬢ちゃんはやったことあんのか!んじゃ、旦那に教えてやんな?」

耳に残る“旦那”という新鮮な響きの中、
砂糖菓子で出来ているという色とりどりの小さな型抜きの中から、好きな模様を選ぶ。


へぇ…なんか、可愛い…

…でしょ? 類、意外と好きかと思ったの…//


そこからコツコツと細かく針うつ作業は、見た目は簡単なようでいて、案外なかなか難しいものだった。


「うわっ//! あ~、あとちょっとだったのに~っ…おじさん!もう1枚頂戴っ!」

言ってしまってから、

「あっ!類… いい//?」

おずおずと聞いてくるつくしに苦笑しながら、なんと類は3枚目で────


「あ… 出来た」
「うっそ//!!!」

めでたくピンクのチューリップの型抜きに成功すると、気づけばいつの間にか小さなギャラリーに囲まれて…


「うわっ!この兄ちゃんすげぇ//!」
「ホントだぁ~!超イケメンの兄ちゃん、すっごく上手だぁ//!」
「オレもチューリップ//! おじさんっ、チューリップちょうだいっ//!」

いつの間にかつくしと二人、遠巻きに見守る大人達の拍手と共に、たくさんの子ども達にも囲まれていたことに、類はかなり遅れてから気がついた。

そのあと暫く子ども達に囲まれ、つくしと共に笑いながら型抜きをしたのは、今ではすっかり良い思い出だけれど…。




*


あの店… また今年も、あるのかな…


数年前の出来事を懐かしく思い出しながら、歩き出す類の浴衣の袖が、ふと後ろから引っ張られる。


…ん?



「…ねぇっ」

「…?」


振り返れば、小さな女の子が、何故か類の浴衣の袖をしっかりと握り締めている。



…迷子、かな…

つぶらな瞳が、類を必死に見つめている。一体何事かと、類もそのまま子どもと同じ目線にしゃがみこむと


「…おとう、しゃん…」
「は…?」

「おとうしゃん//! …みつけたっ!おーじさまのっ、おとうしゃんだぁ//!!」


知らない小さな女の子の叫び声が、突然、夜店の並ぶ通りに小さく響き渡った。






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Posted by桃伽奈

Comments - 2

There are no comments yet.
さとぴょん  

凪子様お話ありがとうございました。
類くんの世界へするすると吸い込まれる気持ちで読ませていただきました。
杏飴って、私食べたことないんですよ。
リンゴ飴はありましたけど。
ふたりがしあわせそうに食べてる姿が微笑ましかったです。
かたぬき・・・これも懐かしいですね。
結構難しいんですよねこれ。
チューリップ・・・茎のところめっちゃ難しそうですけどね(笑)
類くんは手先が器用だからできちゃいそうですよね♪
かたぬき屋のおっちゃんがまたいいね。
「うちの奥さん、赤ちゃんいるから。」って台詞がよかったです~♡( *´艸`)
類もいい男でびっくりするおっちゃん。リアクションがよかったです♪
そしてそして、
「おーじさまのおとうしゃんだ!」と言う女の子は誰?(*^^*)

2018/07/24 (Tue) 14:27 | EDIT | REPLY |   
凪子♪  
さとぴょん様🎵

杏飴ね!!
そうなの!…凪子は子供の頃憧れてたのですが(何故か親に遠慮してねだらない子でした 笑)、書いたら関西&東北方面の作家様方は、皆ご存知ないとかΣ(゜Д゜)
おぉ💦と驚きつつ、類とつくしも関東だから、まぁ大丈夫か…
と、敢えてそのまま見逃しました(笑)
うふ。カタヌキもね♪
これもまた子供の頃はチラリと目にするだけだったのですが… 類、夢中になりそうでしょ?(笑)
茎の細さもなんのその(笑)
そこはほら…F4のマジックパワー炸裂で…って、何の話だw
はい。もう流石のおじちゃんもメロメロです♪
何気に気に入ってた、カタヌキ屋のおじちゃん♪(/ω\*)お誉めいただき、嬉しいですっ❤(笑)
さとぴょん様のご馳走コメント❤
どうもありがとうございました(*´ω`*)

2018/07/24 (Tue) 16:11 | EDIT | REPLY |   

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